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フットネスアプリ「FITRIS」 アスレチックeSportsイベントも開催

2022年06月08日 06時00分更新

文● 中田ボンベ@dcp 編集● ASCII STARTUP

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 フィットネスアプリ「FITRIS(フィットリス)」は、ベンチャー企業FunLife株式会社が展開するアプリで、運動とパズルゲームを融合させた新感覚のサービスだ。運動習慣の定着化に貢献するとして、複数の自治体から注目を集めており、2022年2月1日には京都府亀岡市で「FITRIS」を用いた国内初のアスレチックeSportsイベントも開催された。

運動×パズルゲームで新感覚フィットネス

 「FITRIS」は、体を動かしてブロックを操作するテトリスのようなパズルゲーム。人の体の動きを検出する「ポーズエスティメーション」という技術が用いられており、スマホのカメラ機能を使って体の動きを読み取る。例えば、右手でパンチをすればブロックが右に動く、スクワットをすれば回転、ジャンピングジャックという飛び上がる動作をすればブロックが落ちるといった具合だ。

  ブロックを消すことで得られるスコアのほか、カロリーや右パンチ、左パンチといった動作の回数も記録される。スコアを家族や友達同士、さらには他のユーザーと競うこともできる。

 FunLife株式会社の黄木桐吾代表取締役COOは、「ひとりで運動する機会が増えたが、ただ運動するだけではつまらないし飽きてしまう。そのため、楽しみながら運動ができないかということで『FITRIS』を開発した」と話す。

 実際、オンラインでのフィットネスは、単調な動きの繰り返しになることが多く、長続きしないと感じている人も多いだろう。ひとりで孤独に行う場合は、さらに拍車がかかる。しかし、誰かと競い合う、チームで協力するといったことができると長続きしやすくなる。ただ運動とゲームを融合させただけでなく、「誰かと一緒に運動している感」が得られるのも、「FITRIS」の特徴、魅力だろう。

自治体との実証実験では高い成果を示した

 黄木代表によると、「『FITRIS』のユーザー数は5000強とまだまだ少ない。より多くの人に知ってもらうことが課題」と話す。そのために注力しているのが、地方自治体や健康経営を意識する企業との協力、連携だ。

 企業の場合、健康経営のための食事や睡眠にアプローチしている会社は多いが、運動はウォーキングなどが中心で数が少ない状況。そのため、運動習慣の改善、コミュニケーション機会を生み出すという目的で、企業に「FITRIS」を活用してもらえるよう、取り組んでいるという。

 地方自治体との取り組みでは、2021年に千葉県市原市と連携した「運動習慣定着の実証実験」を行った。実験はオンラインとオフラインの2つのイベントで構成。オンラインイベントでは、市原市の住民に「FITRIS」を使って自宅で運動してもらうというも内容で、成績上位者には協賛企業から賞品が出るという内容だった。その後、ランキング上位8人による、オフラインイベントでのチャンピオン決定戦を開催した。

 この実証実験には、約800人が参加したが、運動習慣の定着において重要なのは継続率だ。一般的なフィットネスアプリの場合、継続率は6%ほどだが、市原市の実証実験では イベント後3週間の継続率が24.2%と非常に高かった。また、キャンペーンの満足度は100点満点中76.3点と高い評価を得ている。参加者からは「短い時間で楽しく運動できる」という声が多かったとのこと。

 黄木代表は「フィットネスをやめる理由に多いのが時間を作らないといけないということ。『FITRIS』は最短1分と、都合に合わせてフィットネスができる。自由に楽しめるのことが高評価につながったのでは」と分析している。

運動習慣定着化の定番ツールとなるか

  今回亀岡市での取り組みは、市原市での実証実験を踏まえて行う「初のアスレチックe-Sportsイベント」だ。実証実験と同様に、オンラインとオフラインの両方でイベントを行い、参加者の運動習慣定着化を目指している。

 現在、多くの自治体で医療費が拡大しており、地域住民にいかに運動習慣を定着させるかが課題になっている。しかし、何かイベントを開催しようにも、人を集めることはできない状況で、打つ手がないという自治体も多いという。

 その点、「FITRIS」はオンラインで楽しみながらフィットネスに親しんでもらえる「ちょうどいいツール」だ。また、自治体から費用が出ているわけではなく、イベント開催時の協賛企業からお金をいただく仕組みのため、「自治体自体に予算的負担はかからない」というのも評価されている点。黄木代表は「現在複数の自治体からお声がけいただいている」と話すが、今後多くの自治体で「FITRIS」を用いたイベントが行われる可能性があるだろう。

「運動をエンタメにする」ミッションを掲げる

 FunLife株式会社は「運動をエンタメにする」というミッションを掲げており、今後はアスレチックeSportsのイベントを増やすことを目指している。例えば、「体を動かしながらゲームをする」というコンセプトを軸に、「FITRIS」以外のゲームの開発だ。具体的には、スクワットやジャンプで障害物をよけながらレースをするなど、さらに楽しく体を動かすことができる内容を考えているとのこと。

 オンラインでフィットネスができるサービスは、コロナ禍ということもあり、ニーズも高く、非常に注目されている業界だ。今後もさまざまなサービスが登場すると見られている。「新型コロナによるパンデミックが収まった後も、オンラインでのフィットネスサービスは新しい生活様式、文化として定着すると考えている」と黄木代表が話すように、自宅でのオンラインフィットネスが当たり前の世界になる可能性も高い。

 果たしてゲームを楽しみながらフィットネスができるという特徴を生かし、FITRISはアスレチックeSportsのパイオニアになれるのか、今後の展開に期待したい。

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