最近、目にする機会が増えたPolk Audio
大画面テレビの普及やサブスクを通じた豊富なコンテンツの提供。ホームシアターを後押しする環境が整いつつある。テレビを買ったら次はどうする? やっぱり音でしょう! ということでサラウンドスピーカーに興味を持っている人もいるはず。映画にとって音が果たす役割は非常に重要なのだ。
しかしながら、いざ量販店に脚を運んでみると「おやっ!?」と思う人も多いはず。というのは5年、10年前の感覚で店頭を眺めると、並んでいる商品のカテゴリーもブランドも結構な様変わりをしているからだ。例えばサウンドバー。過去に人気のあったブランドの商品は選択肢が絞られていたり、長く新機種が出ていなかったりすることに気付く。一方で、従来はあまり目にしなかったが、「何となく元気がありそう」に見えるブランドも目立つようになってきた。そのひとつがPolk Audio(ポークオーディオ)だ。
Polk Audioは米国発祥のブランドで、1972年に創業者マシュー・ポークがジョンズ・ホプキンス大学で出会った人々とボルチモアのガレージで創業(なんと今年50年!)。以降、いい音をリーズナブルな価格で届けることをコンセプトに、北米など海外で非常に高い支持を得てきたブランドだ。
日本ではあまりなじみがないかもしれないが、私もたまに取材でアメリカに行った際、家電量販店で目にする機会の多いブランドだったし、CESのような展示会でクオリティの高い再生音に触れる機会もあった。日本にも一度進出したが、30年ほど前に撤退。その後、2020年にサウンドバーで再上陸し、昨年夏からはブックシェルフやトールボーイといったホームシアター向け、Hi-Fi向けのスピーカーの販売も始まっている。
3.1.2chに対応、音が部屋全体に広がるサウンドバー
ここで紹介する「Signa S4」は昨年12月に発売となったサウンドバーの主力機種。ドルビーアトモスに対応し、前方だけでなく上方にも音を放射して、立体的な音場を作れる3.1.2chタイプの製品となっている。ドルビーアトモスは最新の映画音響に用いられるフォーマット。Apple MusicやAmazon Musicの空間オーディオ(3Dオーディオ)のコンテンツにも採用されているので、耳にする機会が増えたという人が多いだろう。
ただし、ここで注意したいのは、サウンドバーやテレビなどでドルビーアトモス対応をうたっていても、ステレオ再生(2.1ch)もしくは、これにセンタースピーカーを加えたもの(3.1ch)にバーチャル再生技術を組み合わせた場合が多いという点だ。
ドルビーアトモスはもともと前方、左右、後方だけでなく上方(天井)にもスピーカーを配置して、部屋の中の好きな場所に音を配置できる点が特徴だ。スピーカーの数が減っても適切な聞こえ方になるよう配慮はされているが、前方だけではやはり音の広がりには制限がある。そこで一部のサウンドバーでは、左右や中央だけでなく、上方にもスピーカーを配置し、天井反射などを利用してより広がり感のある音を出そうとしている。この上向きスピーカーのことをイネーブルドスピーカーと言い、3.1.2chの最後の2はこれを2基装備していることを示す。
ただし、これは一部の高級機のみの話だった。有名ブランドでイネーブルドスピーカー付きの製品となると、10万円を超すものが中心となり、テレビと一緒に気軽に買う気分になれないものが多かったのも事実だ。しかし、Signa S4は3.1.2chタイプの製品でありながら、5万円台半ばと比較的リーズナブルに買える。実際に聴き比べてみると分かるが、イネーブルドスピーカーがある効果は明白だ。いまドルビーアトモス対応のサウンドバーを購入するなら一般的な2.1chや3.1chなのか、それとも3.1.2chなのかを確認してみるといいだろう。