KS-55Hyperはどんなスピーカー?
第一印象は「重たい!」だ。幅109×奥行き203.4×高さ159.5mmという机上サイズだが、ずしりと重たいのである。回路が集中する右スピーカーが約2kg、左が約1.9kgもある。オーディオでは重さこそ善である。音の大敵の振動に強いからだ。KS-55Hyperは、「この小ささにしてこの重さ」という意外性にこそ価値がある。
筐体(エンクロージャー)は、なんとアルミの押し出し成形だ。アルミは剛性の高さ、振動の少なさからエンクロージャーに採用するハイエンドメーカーも多い。加えて滑らかな楕円形も音質的なポイントだ。この形は内部での定在波と、外部での回折効果を抑える二重の効果を持つ。定在波は内部で反射を繰り返すことで、音を汚す。回折はユニットから前に放射された音がエンクロージャーの後ろに回り込む現象。ユニットから出る直接音と回折によって遅れる音が空間で混ざり、音が濁る。楕円形はこのどちらにも強い。
クリプトンにて、スピーカーと並ぶ主力のアクセサリー製品と同等のインシュレーターを搭載したことにも注目。クリプトンと三菱瓦斯化学が共同開発した、振動エネルギーを吸収して熱エネルギーに変える「ネオフェード」素材で形成した専用インシュレーターを下部に直接装着したのである。
デンマークの伝統あるスピーカーユニット専門メーカー、Tymphany(ブランドはPeerless)製の30mmリングダイアフラム・ツイーターと、63.5mm径ウーファー2ウエイのチョイスも賢い。チューニングも含めて、スピーカー専門メーカーならではの矜持だ。
内蔵アンプも贅沢だ。ツィーターとウーファーをそれぞれ個別のアンプでドライブする“バイアンプ駆動”なのだ。ウーファーのコーンが振動すると、ボイスコイルにて電力が発生する。これがケーブルを逆走してツィーターに入ると、音を歪ませる(逆起電力)。それに対し、ユニットを個別に駆動すれば、ウーファーとツィーターを分離できるため、とても効果的な逆起電力対策になる。クリプトンは逆起電力退治には特に力を入れ、専用に対策したバイアンプケーブルも開発、発売している。
さきほど、クリプトンのハイレゾ対応小型アクティブスピーカーの歴史を述べたが、1世代前のKS-55比での進歩は、アンプとハイレゾフォーマットだ。デジタルアンプの出力は各25Wを左右それぞれバイアンプ駆動させるため25W×4=総合100Wだったが、KS-55Hyperは35W×4=総合140Wに向上している。ハイレゾフォーマットも、KS-55のリニアPCM のみから、DSD 5.6MHzまでの再生が可能になった。