慶應義塾大学の研究チームは、抗がん剤の評価に使用できるオルガノイド(ミニ臓器)を、がん患者の細胞から高い効率で培養することに成功した。従来のオルガノイドを用いた薬効評価では、患者のがん細胞のみを培養したオルガノイドを使っており、抗がん剤が正常細胞に与える影響を評価できなかった。今回の研究では、正常細胞を高い効率と速度で培養することに成功し、抗がん剤のがん細胞への影響だけでなく、正常細胞への影響も評価できるようになった。
慶應義塾大学の研究チームは、抗がん剤の評価に使用できるオルガノイド(ミニ臓器)を、がん患者の細胞から高い効率で培養することに成功した。従来のオルガノイドを用いた薬効評価では、患者のがん細胞のみを培養したオルガノイドを使っており、抗がん剤が正常細胞に与える影響を評価できなかった。今回の研究では、正常細胞を高い効率と速度で培養することに成功し、抗がん剤のがん細胞への影響だけでなく、正常細胞への影響も評価できるようになった。 研究チームは、培地に「IGF-1」と「FGF-2」という増殖因子を添加することで、少量の組織から正常なヒト大腸細胞と大腸がん細胞を1〜2カ月の間に1000万細胞まで安定的に増殖させることに成功。この仕組みを利用して正常ヒト大腸オルガノイドとヒト大腸がんオルガノイドを作成した。 数多くの治療薬候補の効果を網羅的に探索する「薬剤スクリーニング」は、がん創薬における基盤技術だが、従来は患者のがん組織から培養したがん細胞株を使って一次スクリーニングを実施し、動物モデルで安全性や副作用を確認していた。今回開発した技術では、患者由来の正常細胞もスクリーニングに利用できるため、副作用についてもより正確に評価できる。実際、今回の研究の一環で、正常ヒト大腸オルガノイド6株と、ヒト大腸がんオルガノイド20株に対して56種類の薬剤を使ってスクリーニングを実施し、高精度なデータを取得したという。今後、新規創薬や個別化医療での応用が期待される。 研究成果は3月10日、「ネイチャー・ケミカル・バイオロジー(Nature Chemical Biology)」誌にオンライン掲載された。(笹田)