2021年12月、プライベートブランド商品として、大型量販店から「チューナー無しテレビ」が発売され、YouTuberをはじめ各方面で話題になりました。
テレビ番組への出演も仕事だった筆者としては、こうした地上波などが映らないテレビの台頭を、微妙かつ複雑な気持ちで眺めていました。とはいえ、これもひとつの時代の変化。興味深く見守っているところです。
あらためてプライベートブランドとは?
そもそも、プライベートブランド商品は、大手製造メーカーではなく、小売店が主導して作られる商品群のこと。セブン&アイグループの「セブンプレミアム」に代表される、コンビニやスーパーに並ぶオリジナル商品を想像すれば、わかりやすいかもしれません。
日本での歴史を紐解くと、1959年に百貨店の大丸のオリジナルスーツ「トロージャン」、食品ではスーパーのダイエーが1960年に発売した缶詰「ダイエーみかん」が、国内のプライベートブランドのルーツだそう。
日本だと、店舗にもよりますが、プライベートブランドは全体の商品の1割ほどの印象です。しかし、海外の小売店に行くと、米国では2割ほど、英国やスペインなどの欧州圏では4〜5割がプライベートブランド商品が並んでいる……そんな印象を持つかもしれません。
電化製品プライベートブランドの入門編「電源タップ」
消費者としては、筆者はどちらかというと保守的なタイプです。100円ショップなどで販売されている商品は別にしても、数万円以上の電化製品やIT関連機器は、できるだけ大手メーカーを選んでいました。
しかし、先日、大手量販店で見つけた「電源タップ」に一目惚れ。プライベートブランドの電源タップを探してみると、なかなか熱く、ユニークな商品群をいろいろと見つけました。
スタイリッシュさなら一押し
「Kumimoku 4個口スチールACタップ」
カインズの「Kumimoku 4個口スチールACタップ」(1980円)は、海外のインダストリアルな製品を思わせる、レトロなデザインの電源タップ。タップ部分は大きめですが、スチール製で堅牢。3P(3口)コンセントでも変換プラグを使わずに差し込めるのが特徴です。
タップ部分の背面には壁付できるようにフック用の穴もあり、壁や床で使えば片手で抜き差しできるのも便利。部屋の雰囲気に合うならおすすめの、重厚感あふれるデザインです。筆者の選んだ「マットシルバー色」は人気らしく、店頭で予約して購入しました。
安全面に付加価値をつけた「雷&熱に強い 安心安全の電源タップ」
ビックカメラ「雷&熱に強い 安心安全の電源タップ」(1380円)は、耐熱性の高いPBT樹脂を使い、通電部をモジュール化してはんだレスにした製品。
すこしマニアックな説明をすると、10年ほど前から電化製品の内部には環境に配慮し、鉛(Pb)を使わない、「Pbレスはんだ(鉛フリーはんだ)」が主流になってきました。Pbレスはんだは、環境に優しい反面、固く、もろいのが弱点。通電による発熱で膨張し、基板とはんだの間にクラック(ひび)が入り、発熱や接触不良などを引き起こすことがあります。
そうした弱点を克服した電源タップ。ゲームや映像編集などでコードが熱くなりやすいPCなどと繋ぐのにピッタリかもしれません。
ちなみに、このタップは、老舗電機メーカー、オームのOEM製品のようです。自社「OHM」ブランドの製品と競合しないか、心配になってしまうほどの出来ばえです。
USB Type-C、USB PD対応「コンセント電源+USB」
ドンキホーテの情熱価格+PLUSブランドから発売された「コンセント電源+USB」(1628円)は、USB PD(Power Delivery)に対応した電源タップ。USB-Aポートだけでなく、USB Type-Cポートがあるのが特徴です。USB PDに対応したUSB Type-Cの最大出力は、5V/3A、9V/2A、12V/1.5A、18Wまで対応しています。
コンセント(AC100V)の差込口が90度の角度で2つあるのもうれしい工夫です。省スペースで、外出時のカフェやホテルの客室などで便利なコンパクト設計。筆者のマイカーにはアームレスト内にAC100Vコンセントが搭載されているので、iPhoneやiPad、ワイヤレスイヤフォンの急速充電用に短い1メートルコードタイプを選択しました。
プライベートブランド商品の魅力
すっかり便利になり、自分の好みのスペックや安価な商品が見つけやすくなったネットショッピング。その反面、届く前に製品のサイズ感、質感がわかりにくいのが難点です。
一方、プライベートブランド商品は、店頭で手に取ることができ、サイズ感、重さ、質感などがわかること、パッケージには販売者だけでなく、製造者(製造メーカー)が明記されていることなどによる、安心感があります。
大手メーカー製のナショナルブランド商品と違い、小売店にとって利幅が大きいとされるプライベート商品。それを選ぶことで、小売店の利益が安定し、これからも店頭で手に取って商品を納得しながら選択できる、そんなメリットもプライベートブランドにはあると思っています。
電化製品のプライベートブランドの草分けは、やっぱりテレビだった
記事の冒頭で、プライベートブランドのテレビを話題にしました。それでは、電化製品のプライベートブランドの草分けは何なのでしょうか?
その一つに、1970年にダイエーからプライベートブランドとして発売されたテレビ「BUBU(ブブ)」が挙げられるかもしれません。当時は大変な話題になり、販売時には抽選になった店舗も出たほど。当時のテレビの価格のほぼ半額だったこともあり、大手電機メーカーと販売店の火花が散るようなストーリーもあったそう。
その後、BUBUは洗濯機や電卓なども発売していくことになります。ご興味のある方は「ダイエー BUBU」でネット検索してみてください。
それから50年以上が経った今、プライベートブランド市場がより熱くなる時代がやってきた……そう筆者はワクワクしています。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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