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IPv6 IPoE 10周年記念ミーティングでBBIX福智道一氏が講演

10年で30倍に増えるトラフィック 「分散化」実現にIPoEの価値

文●大谷イビサ 編集●ASCII

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コンテンツ、CDN、キャリア 東京のIXにつなぎにくる海外事業者とは?

 続いて披露したのは、「東京のIX事業者に接続している海外事業者(米国をのぞく)」というリストだ。まず中国は圧倒的にコンテンツ・CDN事業者の接続が増えている。韓国はコンテンツ事業とキャリアが多く、ヨーロッパもコンテンツ事業者の割合が高い。

IXに接続しに来ている事業者(北米をのぞく)

 興味深いのはロシアはISP・キャリアが東京につなぎに来ているという点。日本のコンテンツを取りに来ているのか、日本に対してコンテンツを置きにきているかはわからないが、海外とのピアリングも増加傾向。「いずれにせよIXの地方展開は海外のトラフィックという観点でも重要」と福智氏は語る。

 トラフィックの地域分散の未来を実現しようとすると、必然的に地方データセンターへの投資が必要になる。これに対して、福智氏は「トラフィック増を考えると、これは夢物語ではなく、むしろやらなければならない」と持論を語る。

 そしてこのネットワーク分散をリードしているのが実はIPoEだという。NTT東日本・西日本がIPoE接続のために作った各地域のPOI(相互接続点)を拡大しているからだ。しかし、今後のトラフィック増を考えると、今のPOIの数ではまだまだ足りないという。

相互接続点の現状

「MEC=低遅延アプリ」はもう止めませんか?

 続いて披露したのが、BBIXのIPoEの接続推移。2012年6月から接続を開始し、2014年には東京単独のPOI接続を進め、集約POIは100Gbps化した。「すごい勢いでトラフィックが伸び、もう分散しかないなという話ということで、NTTさんにおねがいしたが、分散化はネットワークの構造自体を変えることになるので、とても手間がかかる。そのうち100Gbpsが使いやすい価格になってきたので、まずは100Gbps接続から始めた」(福智氏)。

 その後、2016年に東京単独POI、2018年に千葉、神奈川、埼玉の3県のPOI、西日本エリアと単県POIをそれぞれ100Gbps化。2019年には西日本の集約POI、2020年には東日本の集約POIをそれぞれ廃止し、エリアもしくは単県のPOIにすべて移行した。もちろん、その後もトラフィックはうなぎのぼりだ。前述した通り、10年後にトラフィックは30倍になる。「これまでもすごかったけど、これからもすごいということが言えると思う」(福智氏)。

BBIXのPOIの増設の先、20周年後はどうなるのか?

 次に福智氏は、CDNとの関係性が強いMEC(Multi-access Edge Computing)についても言及した。MECはユーザーのエッジの近くにコンピューターを分散配置するという概念で、ネットワークの転送コストや遅延という面で弱点を抱えるクラウドコンピューティングと対比して使われる。

 一般的にはレスポンスが必要な低遅延アプリに向いていると言われるが、福智氏は「『MEC=低遅延アプリ』はもう止めませんか? だって、そんな低遅延アプリなんてないんだもん」と指摘する。福智氏から見ると、MECは分散化の手段に過ぎない。「分散しなけければネットワークがもたない。MECはそのためのキーワードにしてほしいと思います」と福智氏は語る。

MEC=低遅延アプリはナンセンス

 最後、次の10年のネットワークへの期待を表明した福智氏は、講演の内容について会場の人にコメントを求めるという「ムチャブリ」を実施。トラフィック増に対応する分散化をキーに、海外との接続、データセンター敷設、MECの概念などについて会場の識者が有意義なコメントが聞かれた。

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