正しいプロセスを身につけて効率良く英語を学ぶフェーズ8の学習方法
英語学習最終フェーズ到達法 複雑な英語を話し、 書けるようになるには?
2022年01月28日 08時00分更新
社会人になってから「英語をマスターしたい」と、一念発起して勉強を始めたものの、思うように身に付かず、中途半端なまま学習を止めてしまったり、せっかく通っていた英会話教室に行かなくなってしまったりする人は多いのではないだろうか。そこで本連載では、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」や、英語学習コーチングサービス「STRAIL」などを運営する株式会社スタディーハッカーに取材し、目標達成まで挫折せず効率的に進められる英語の学習方法を紹介する。
今回は、最終ステップとなるフェーズ8「複雑に話し、書くことができる」ようになるための学習方法を解説する。過去2回の連載では、フェーズ5までにインプットした学習をアウトプットする、フェーズ6と7について紹介した。これまでにも説明した通り、フェーズ6から8は順番に学習するのではなくバランス良く学ぶのがベストなので、過去の連載も併せて参考にしてほしい。
フェーズ0:基本文法・基本語彙(基礎知識)
フェーズ1:ゆっくり読めば理解できる(リーディング)
フェーズ2:すばやく読める(リーディング)
フェーズ3:音声知覚ができている(リスニング)
フェーズ4:理解の処理がすばやくできる(リスニング)
フェーズ5:記憶にとどめておける(リスニング)
フェーズ6:正確に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ7:流暢に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
【今回の記事】フェーズ8:複雑に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
シーンに応じた言葉遣いを身につける
過去にも紹介した通り、英語を「話す」「書く」といったアウトプットスキルを磨くフェーズ6から8の目標は次の通りだ。
・フェーズ6 正確に話し、書くことができる
・フェーズ7 流暢に話し、書くことができる
・フェーズ8 複雑に話し、書くことができる
フェーズ8の目標である複雑な英語を話し、書けるようになることは、アウトプットスキルの一つのゴールになる。特に仕事で英語を使うという目的がある場合、英文の複雑さは重要だ。商談で話したり提案資料を書いたりするときに、まともなビジネスの相手だという印象を与えるためには、ある程度複雑な構文を使いこなせるようにしておく必要がある。「関係代名詞や接続詞、分詞構文を使った表現など、場面に応じた適切な言葉遣いも求められます」と、同社常務取締役 兼コンテンツ戦略企画部部長の田畑翔子氏は話す。その意味では、フェーズ8に向けて表現のバリエーションを増やしていく過程ともいえる。
複雑に話し、書くための4つのトレーニング方法
高いレベルでコミュニケーションを取るためには、アウトプットと並行してインプットの質と量も確保しなければいけない。どんな人でも、いきなり独力で複雑な文を話したり書いたりすることはできないからだ。フェーズが上がれば上がるほど課題は細分化され、目的によって最適なアプローチは変わってくるが、ここでは4つの学習法を紹介する。
1.パラグラフライティングの手法を学ぶ
スピーキングとライティングのプロセスは、最後が違うだけで基本的には変わらない。次の3つのプロセスを経て、はじめて話したり書いたりすることができる。
スピーキング「概念化→言語化→調音」
ライティング「概念化→言語化→文字化」
概念化(なにを伝えるか)
言語化(どのような語彙や文法を使って言葉にするか)
調音・文字化(どのような発音・文字で表すか)
日本人学習者は、言語化や調音・文字化といった「英語そのものの学習」に注力しすぎて、概念化を鍛えていない人が多いという。なんとなく自分の考えがあったとしても、思いついた順にパラパラ述べていくだけでは、説得力に欠けた伝え方になってしまう。
そこで、「パラグラフライティング」を学び、英語のロジック(論理構成)を体得することが重要になる。英語特有の論理の組み立て方が身につきさえすれば、そこに自分の考えを当てはめるだけで、思考を整理してまとめやすくなる。説得力のある英文を書けるようになるだけでなく、ロジカルに話すこともできるようになるだろう。
2.MOOCでインプットとアウトプットの場を設ける
MOOC(Massive Open Online Courses)は、世界中の名門大学の講義をインターネットで受講できるサービス。好きな分野のコースを受講してインプットを得たり、エッセイなどの課題がある講座を選んでアウトプットの場を設けたりすることができる。同じ講座を受けている他の受講生や講師との交流も、英語を使う良い機会になるだろう。
3.ニュース・プレスリリース・論文を要約する
見聞きした英文の要約も、インプットからアウトプットに繋げるのに効果的な方法だ。例えば、 英語のニュースを聞いたあとに口頭で内容を要約すると、聞いたばかりの単語を使って話す良い練習になる。
自分のビジネスに関連する英語表現を学びながらアウトプットスキルを高めたいなら、英語のプレスリリースを読んで要約するトレーニングも有効。「Cision PR Newswire」のようなプレスリリースを集めたウェブサイトから業界別に探したり、「海外企業名+ Press Release」などとインターネットで検索してもよい。
アカデミックな英語を身につけたいなら、自分の専門分野の英語論文を読んで要約するのも効果的だという。分量が多ければスキミングしながらでも構わない。自分に関係あるジャンルの英文に多くふれることで、頻出語彙や表現の方が身につく。要約している途中で言葉に詰まったら再度インプットに戻ることで、英語表現を吸収できる。
4.海外ドラマや洋書にふれ、視聴メモ・読書日記をつける
相手との関係性を合わせた英語については、フェーズ0→1で紹介した「認知文法」をベースに、助動詞や遠回し表現に込められた意味合いを理解したうえで、海外ドラマや小説で実際の使われ方にふれるとよい。ビジネスを舞台にした作品では、上司や客とのやりとりなど、TPOに応じた表現が学べる。依頼や謝罪、それに対する対応など、人物の関係性に応じて変わる英語表現に注目できるとベストだ。
洋画や洋書は、文法の細かいニュアンスや生きた英語表現にふれられる学びの宝庫。学習効率を上げるためには、ただ漫然と見るのではなく、自分に足りない表現を探すつもりで、リスニングやリーディングを行う必要がある。映像であれば字幕をつけて暗記してしまうくらい、同じシーンを何度も繰り返し観るのがおすすめだという。今はインターネット上で簡単にドラマや映画のスクリプトが手に入るので、視聴後には目を通して自分でも使えそうなフレーズや音声だけでは気づかなかった言い回しや文法の使われ方をチェックして、理解を深めるのもいいだろう。最終的には、音だけで理解できるよう、音声と文字からのインプットを交互に繰り返すのが理想的。書籍であれば、オーディオブックと併せて楽しむのも手だ。
インプット後は、英語で視聴メモや読書日記を書くことで、アウトプットにつながる。内容の要約や作品の感想、印象的なフレーズとそれに対する自分のコメントなど、なんでもいいので書き出してみると、気づきが得られるはずだ。
アウトプットとインプットを繰り返す
多くの英語を話したり書いたりするためには、使える状態の英語表現が十分蓄えられている必要がある。さらにビジネスシーンであれば、英語の論理構成やていねいな表現などの知識も求められるだろう。そこで、フェーズ8においても「アプトップとの訓練を継続しつつ、不足している知識に気づいたら、その都度インプットを繰り返すことが大切です」と、同社コンテンツ戦略企画部の堀登起子氏は話す。言語習得は、インプットをしたときに起こる。英語を話し、書くためにも、インプットは継続し続けることが大切だ。
今回で、スタディーハッカーが提唱する英語学習マップの全フェーズを紹介した。次回からは、英語学習におけるありがちな誤解や、それに対する同社の取り組み。さらに、英語学習を効率的に行うために同社が提供している「第二言語習得研究」の手法や、忙しくても学習を継続するための行動科学マネジメントなどを紹介する。
■関連サイト
株式会社スタディーハッカー
Listening Hacker for iOS(App Store)
Listening Hacker for Android(Google Play)
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