北海道産の植物を使った感動的な香りのよさ!
紅櫻蒸溜所は、札幌市南区の「紅櫻公園」内に所在する。この日の北海道の日中の気温は2℃で、市街地では雪が降っていなかったが、紅櫻公園内には前日までに降った溶け残りの雪が積もっており、屋根には、都内では見る機会の少ない“つらら”も見られた。いつもと異なる取材環境で、試飲への期待は増すばかりである。
まずは「メビウス・オプション・パープル」とマリアージュする黒いラベルの「#0513 Purple Moon」から試飲した。#0513 Purple Moonは、#0101のレシピをベースに、「真実のシナモン」との異名を持つセイロンニッケイ種のシナモンの香りを添加している。まずは、ストレートにその味わいを知るため、オンザロックで頂くことに。
その味わいはまさに感動的。口に含む前から、豊かなボタニカルの香りが漂っている。シナモンと聞いて想像する香りよりもやや穏やかで植物らしさも強い瑞々しい香りが、ジンの中に溶け込んでおり、口に含むと、花が開くようにグラデーションを帯びて主張してくる。
辛口で、ひと口含むとジンの香りのメインとなるジュニパーベリーの強い香りと、複雑な旨味が口いっぱいに広がるが、くどく後に残ることはなく、爽やかに消えていくのも印象的。天然のボタニカル100%にこだわっていることだけでなく、水質の良さや、蒸溜の手法の良さも、味わいから読み取れる。
ここにメビウス・オプション・パープルのベリーフレーバーの香りが加わると、強い香り同士が食い合うのではなく、まとまって、ひとつの独特な香りのように感じられるから不思議だ。
一方、「メビウス・オプション・イエロー」とマリアージュする、白いラベルの「#0216 Yellow Breeze」は、アールグレイ茶葉の香りを添加しており、#0513 Purple Moonとはまた異なった味わいを持っている。鼻から抜けていくアールグレイの香りは鮮烈で、リフレッシュ感と安らぎを与えてくれる。ここに「メビウス・オプション・イエロー」のシトラスの風味が加わると、アールグレイとシトラスの風味が混ざって、より清涼感のある味わいに変化した。
いずれにしても、都内のスーパーマーケットやリカーショップで手に入る定番銘柄のジンと比べると、香りの強さは5倍にも10倍にも強く感じられた。
マリアージュとはそもそも仏語で結婚を意味する言葉だが、グルメの文脈では、味と味、香りと香りが組み合わさって、互いを引き立て合ったり、調和していたりする状態を指す。メビウス・オプションのカプセルをつぶすと出てくるフレッシュな香りと、今回のクラフトジンの香りの組み合わせは、まさにマリアージュとしか言いようがない。香りと香りが調和し、引き立て合い、独創的な新しい香りが生まれている。日々、香りにこだわった商品開発を続けている企業同士のコラボレーションだからこそ、成り立つことだ。