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経費精算をなくすために必要なミッシングピースを埋める

コンカーが経費精算の不正検知を強化 IBM・デロイトトーマツの製品と連携

2021年12月08日 11時00分更新

文● 大河原克行 編集●大谷イビサ

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 2021年12月7日、コンカーはデジタル技術を活用して、経費精算における不正検知の精度を向上することで「承認レス」の環境を実現する「不正検知ソリューション」の提供を開始する。コンカーの「Concur Expense」と、日本IBMの「経費精算不正検知ソリューション」、デロイトトーマツリスクサービスの「Risk Analystics on Cloud」を連携することで、承認レスを実現する不正検知ソリューションとして提案する。

コンカー 三村真宗社長

経費精算の承認レスを推進 高い精度で不正を検知し、負荷を軽減

 今回の承認レスの前提として、経費精算クラウドシステムのConcur Expenseを導入し、法人カードや交通系ICカード、タクシー配車アプリなどによるキャッシュレス化が必要となる。Concur Expenseが持つ監査ルール機能、確認作業のアウトソーシングサービスであるConcur Auditに加えて、新たに日本IBMの経費精算不正検知ソリューションを活用して、個別の経費申請に対して自動判定を行ない、不正や違反が検出されなければ、管理職による承認をスキップすることができる。また、蓄積したデータをもとに、Concur Intelligenceによる分析や異常値を検知してメール配信するアラート機能、さらに、日本IBMの経費精算不正検知ソリューションと、デロイトトーマツのRisk Analystics on Cloudを利用することで、巧妙な不正も検知することができる。

承認レスを自転するためのソリューション

 日本IBMの経費精算不正検知ソリューションは、コンカーワークフロー内での自動チェックや、事後分析による不正検知を行なうもので、AI-OCRを活用した領収書の突き合わせ、領収書の使いまわしチェック、整合性の確認に加えて、分析による不正検知サービスを提供する。一方、デロイトトーマツのRisk Analystics on Cloudは、監査法人であるトーマツが開発した国内監査法人初のSaaS型リスク分析サービスで、企業内の連結財務データや、販売や購買などの各種取引データを読み込んで分析。グローバルの豊富な事例と経験に基づくさまざまなリスクシナリオと照らし合わせて、リスクのスコアリングを行なうことができる。

 コンカーの三村真宗社長は、「個別承認の自動化、累積データによる内部監査、誓約書などによる社員意識の引き締めによって、承認レスの環境を実現できる。キャッシュレスで改ざんを防止し、入力時点での不正を自動検知し、経費データからの不正を検出するといったデジタル技術での予防に加えて、誓約書を含めた仕組みによって不正を諦めさせるということも大切である。不正を行なう悪意がある社員の割合は1%未満。それによって、99%以上の善良な社員が、煩雑な経費精算の作業によって生産性を低下させている。従業員、管理職、経理担当のすべての社員に生産性の向上を図れる」とする。

経費承認の実情とあるべき姿

 また、「承認レスというのは経理担当者にとっては驚きの仕組みと感じるかもしれないが、形骸化していたチェックやザルと言われた管理者によるチェックに比べて、高い精度で不正を検知できるほか、管理者にとっても異常と判断された経費精算だけが承認に回ってくるため、より精緻なチェックができる」と述べた。

 コンカーでは、先行して承認レスの仕組みを社内導入。承認レスとなった明細書は96%に達しており、承認に関わる時間は370時間から22時間に削減できたという。

不正予防に悩んでいる企業は多い

 不正検知ソリューションでは、法人カードなどのキャッシュレス化により、紙の領収書の「2」という数字を手書きで「8」に改ざんするといった不正ができなくなったり、蓄積データをもとに分析すれば、同じ人が接待上限金額以下のところで何度も接待を繰り返していることがわかったり、複数の社員が領収書の画像を使いまわしている場合にも同日、同金額の経費の存在を自動検知したりといったことが可能になる。

 出張経費の申請に対しても、出張先の入退館記録がない場合には警告を発したり、電子帳簿保存法にあわせて懸念される画像の再利用や同じ領収書の再撮影といった不正の発見も可能になる。さらに、現金での支払いが多い社員に対しては、蓄積データをもとにして、現金での利用が不正の温床や経費精算作業の煩雑化につながるとして、軽微な違反として自動的に警告できる。

 日本IBM パートナーの松本直也氏は、「IBM自らが取り組んできた承認レスの経験値を生かすとともに、コンカーのデータと社内システムのデータを組み合わせること、日本市場向けの領収書に特化したAI-OCRを活用することで精度を高めている。また、顧客ごとに検知ロジックやシステム基盤を柔軟に組み合わせることで、かゆいところに手が届く本当の自動化が実現できる」とした。

日本IBM パートナーの松本直也氏

 また、デロイトトーマツグループ パートナーのカイル・ランネルズ氏は、「不正発覚に伴う追加費用や損害費用は大きく、不正予防に悩んでいる企業は多い。監査法人として蓄積した不正リスクシナリオのライブラリをもとにクラウドサービスとして提供しているのがRisk Analystics on Cloudである。子会社管理やオフサイトモニタリング、不正兆候検知、リスクマネジメント、内部監査などでの活用が行われている。リスクシナリオをベースにしているため、担当者のスキルに依存することなく、ガバナンス強化、不正対応が可能になる」と述べた。

デロイトトーマツグループ パートナー カイル・ランネルズ氏

コンカーの調査では内容チェックは不十分で負担も大きい

 コンカーでは、社会的使命を「経費精算のない世界をつくる」とし、キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、承認レスの実現に挑んでいる。

 三村社長は、「経費精算は、あらゆるビジネスパーソンにとってもっとも付加価値のない仕事である。技術の進歩とともに、人がやらなくてもいい仕事がなくなってきた経緯があるが、経費精算も例外ではない。経費精算は、経費の支払いと経費の払い戻しが重要であり、精算作業や承認作業は付加価値を生まない仕事であるため、自動化すべきである。すでに精算作業については、現金払い、手入力、紙の利用収書といった課題を、法人カード各社やPaypay、Suica、各種タクシーアプリとのデータ連携によってキャッシュレス、入力レスにより解決。電子帳簿保存法改正によりデジタル明細の解禁や運用要件の大幅緩和によるペーパーレス化が推移できている」と現状について説明する。

 その上で承認レスの実現においては、「不正検知サービスがミッシングピースであったが、今回、日本IBMとデロイトトーマツとの戦略的協業によって、これが埋まることになる。キャッシュレス、入力レス、ペーパーレス、承認レスの4つの『レス』によって、経費精算の仕事をなくすことが夢物語ではなくなる」とした。

4つの「レス」で経費精算の仕事をなくす

 コンカーによる「経費管理と不正リスクに関する調査」では、各担当部署での承認者の内容チェックが不十分だとの回答は43%、経理担当者にとって内容チェックが負担だと感じているとの回答は79%、経理担当者として内容チェックが不十分なときがあるという経理担当者は22%に達している。また、不正を意図的に見逃したときがあるとの回答も9%に達しており、その理由として、40%の経理担当者が「金額が少なくて影響が少ないから」と回答している。

経費精算の内容チェックについての調査

 さらに、経費精算における不正のリスクを感じているとの回答は73%、不正を見つけたことがあるとの回答は67%となっている。ここでは、出張費や近隣交通費、会議費などが、リスクを感じているよりも実際の不正が発生する傾向が高く、5万円以上の高額の不正も24%を占めているという。だが、90%の経理担当者が不正を目視で見つけることが難しいと回答しており、これまでに人手による手法では限界に達していることも浮き彫りになっている。

 今回の不正検知ソリューションが、こうした課題の解決にも貢献できるとしている。三村氏は、「経費精算プロセスの全自動化による経費精算のない世界の実現に向けて、大きな一歩になる」とコメント。今後4年間で、コンカーを導入している企業の半数以上の企業での承認レス化を目指すという。

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