報道の世界にテクノロジーを持ち込み、さまざまなデータを核として正確なニュースをすばやく提供する仕組みを構築。
近年、報道機関を取り巻く状況は厳しい。紙媒体の購読者数は減少に歯止めがかからず、有料のWebニュースに取り組むも、購読者数は伸びない。一方でネット上ではフェイクニュースの氾濫という大きな問題があるにもかかわらず、既存の報道機関には問題に取り組む力が残っていない。
報道の世界にテクノロジーを持ち込んで、客観的なニュースをすばやく届けようとしているのが、米重克洋率いるJX通信社だ。同社が開発したサービス「ファストアラート(FASTALERT)」は、ソーシャルネットワークなどのデータをAIが解析して、災害や事件、事故などのリスク情報をすばやく検知・配信する。現在では全国の報道機関のおよそ9割が利用しているという。
新型コロナウイルスのパンデミック発生後は、全国の感染者数などの統計を集計して提供するサービスも始めた。感染者数などのデータは全国の自治体がそれぞれ各自で発表するため、データの収集と集計には手間と時間がかかる。そこで、各自治体の発表を自動的に収集し、データを集計するサービスを開始。報道各社だけでなく、ヤフー、LINE、スマートニュースなどのニュース・アグリゲーターでも採用するに至った。
さらに、全国各地のワクチン接種時期をAIで予測するサービスや、全国の企業や自治体が発表する感染発生場所のデータを独自に集めて分析し、感染が都心部から郊外に拡大していく傾向を明らかにするなど、データとAIを活用した新しい報道の形を作り上げようとしている。
(笹田仁)