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古橋貞之(トレジャーデータ(Treasure Data))

2021年11月25日 00時00分更新

文● MIT Technology Review Japan

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オープンソースのデータ収集ソフトウェアを開発。世界的なクラウド事業者に認められたデータベース・エンジニア界のスーパースター。

英半導体設計大手のアーム(ARM)が、ソフトウェア・ベンチャーを6億ドルで買収——。2018年3月、こんなニュースがメディアの見出しを飾った。このとき買収された企業が、3人の日本人によって米国で設立された「トレジャー・データ(Treasure Data)」である(同社は現在、ソフトバンク・ビジョンファンドの傘下にある)。

トレジャー・データは、カスタマー・データ・プラットフォームと呼ばれるサービスを提供する企業だ。カスタマー・データ・プラットフォームは、顧客の購入履歴や広告閲覧履歴、SNSの投稿などの多種多様なビッグデータを収集、分析する基盤ツール。国内外の有名企業のマーケティング活動に活用されている。このサービスの中核となるソフトウェアをほぼ一手に開発したのが、共同創業者の古橋貞之だ。

例えば、古橋が開発したものの1つに、「Fluentd(フルエントディー)」と呼ばれるオープンソース・ソフトウェアがある。これは異なるデータソースから大量のログファイルを収集し、ストレージに保存。統一した形式に変換して出力するツールだ。従来はデータソースに応じてバラバラの収集・出力処理を作成しなければならなかったが、Fluentdでは「プラグイン」で柔軟に対応できるようにした。こうした使い勝手の良さが評価され、アマゾンWebサービス(AWS)やグーグル・クラウド、マイクロソフト・アジュール(Microsoft Azure)などのクラウド・サービスや、ウーバー、アップルなどの巨大テック企業が採用している。

古橋はまた、「MessegePack(メッセージパック)」と呼ばれるデータ圧縮フォーマットも開発した。大量のデータを効率よく高速に利用できることから、大規模なシステムや消費電力を低く抑えたい事業者に広く浸透している。

古橋の功績は、こうしたソフトウェアを開発しただけでなく、オープンソースとして公開し、広く使えるようにしたことにある。古橋が手掛けたソフトウェアは世界中から数億回以上もダウンロードされ、大規模データを扱う基盤として普及している。古橋は「大規模分散計算技術は一部の巨大企業のみが独占的に行使する技術ではなく、人類があまねく公平にアクセスできる技術になっていくでしょう」と語る。

(笹田 仁)

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