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遠藤諭のプログラミング+日記 第112回

ブロックdeガジェット by 遠藤諭 021/難易度★★

コンピューターの中の1ビット1ビットを手で触るパソコン祖先の世界

2021年11月12日 09時00分更新

文● 遠藤諭(角川アスキー総合研究所)

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ふだんお世話になっているパコソンの祖先はこんな顔をしていた

 1971年にマイクロプロセッサが生まれて、電卓なんかも登場すると、電子技術関係の雑誌の読者のお便りコーナーで「自分たちのコンピューターがほしい」ということで盛り上がってきた。それを、レス・ソロモンという編集者が拾い上げ、エド・ロバーツという人が1974年にキットとして売り出した。

 マシンの名前である「Altair」は、星の名前(日本ではアルタイル=七夕の彦星)。映画『禁断の惑星』の舞台となる星系の名前であり、惑星で父親とたった2人で暮らす娘の名前でもある。レス・ソロモンの12歳の娘が『スタートレック』に出てくるその惑星の名前から付けた。

 これが、現在のパーソナルコンピューターの先祖といえるマイコンに関する最も有名な伝説の1つである。この「Altair 8800」というマシンのためにBASICを提供したことがマイクロソフトの最初の成功でもあることもよく知られている。

 今週のブロックdeガジェットで作る「IMSAI 8080」は、翌1975年に発売された「Altair 8080」の互換機で、初期のマイコンキットといえば、この2つがもっともよく知られていた。どちらも四角いケースの前面にコンピューターのアドレスやメモリ内容などを示すランプやスイッチが並んでいるだけのものだった。

 今回、AltairではなくIMSAIをつくることにしたのは、その本体前面の赤や青色のピアノスイッチと呼ばれていたレバー型スイッチが印象深いからだ(1983年の映画『ウォー・ゲーム』にそんなIMSAIの姿は見ることができる)。この種のスイッチは、同時代の国内外製ミニコンを使った人も、みんなお世話になったものだ。一列に並んだスイッチを、文字どおりピアノを弾くように指を総動員してオンオフする。

 コンピューターのメモリ上にちょうどドミノ倒しのドミノを1つずつ並べて立てるようにセットして、一気に走らせる(そうやって短いプログラムをまず動かして紙テープなどから実行したいプログラム全体を読み込ませたりするするのだが=紙テープについてはコチラの記事をご覧あれ)。スイッチ1つ、指1本が、コンピューター内部の1ビットに相当する! まさにデジタル(デジタル=指で数える意味に由来するのはご存じのとおり)。

プチブロックで作ったIMSAI 8080。スイッチの数を減らして、内部の基板もだが背面も省略したものとなっている。

朗報! 21世紀のいま50年前の最初期マイコンの世界を体験したい人へ

 コンピューターの中の1ビット1ビットをいわば指で直接操作できたのが、最初期のマイコンというものだったのだ。もし、いまこうしたハードウェアに触れたいという人には、「Altair8800」、「IMSAI8080」の互換機が販売されている。株式会社 技術少年出版の「Legacy8080」である(以下のリンクから参照)。

「Legacy8080」:https://www.gijyutu-shounen.co.jp/Library/shop/index.html

 世界の何十億人の手にかつてのスパコンを超える演算性能をもったスマートフォンがあるいま、50年以上前のマイコンの互換機が売られている。このこと自体がファンタジーともいえる。しかし、主旨は「アーキテクチャがシンプルで理解し易い構造であることに着目して、コンピュータの原理を学ぶことが出来る体験モデルとして復活させることにした」とのこと。まさに1ビット1ビットに指で触れる世界だ。

 

「ブロックdeガジェット by 遠藤諭」:https://youtu.be/Mf0nSWCDT90
再生リスト:https://www.youtube.com/playlist?list=PLZRpVgG187CvTxcZbuZvHA1V87Qjl2gyB
「in64blocks」:https://www.instagram.com/in64blocks/

 

遠藤諭(えんどうさとし)

 株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。

Twitter:@hortense667

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