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職場におけるAI活用で日本は3年連続最下位、職場でのAI活用に関する年次調査「AI@Work 2021」

日本の75%が「自身の将来設計にAIを活用したい」―オラクル調査

2021年11月09日 07時00分更新

文● 末岡洋子 編集● 大塚/TECH.ASCII.jp

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 日本オラクルは2021年11月4日、職場でのAI活用に関するグローバル年次調査「AI@Work 2021」を発表した。コロナ禍における意識の変化についても尋ねており、私生活と仕事で閉塞感を感じる従業員が増えるなどの結果が出た。なお職場でのAI活用状況について、日本は3年連続で最下位となった。

調査13カ国のうち、日本は「職場でAIを活用している」割合が最下位

慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏、日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド営業部 部長の茂原善博氏

日本では半数が「2021年は職業人生で最もストレスの多い年」と回答

 「AI@Work」は、米Oracleが職場におけるAIについて、人事関連の調査とコンサルティングを手がけるWorkplace Intelligenceと共同で実施している年次調査。4回目となる今年は米国、日本など13カ国、合計1万4600人の従業員、マネージャー、人事部門長、経営層が参加した。日本は2019年から調査対象となっており、今年で3回目となる。日本からは約1000人が参加している。

 今回、グローバルの調査結果から得られたポイントは以下の4つだ。

1) キャリア開発支援の相談相手としてAIを受け入れる(世界は82%、日本は83%)
2) 私生活と仕事において閉塞感を感じている(世界は75%以上、日本は60%以上)
3) パンデミック以降、成功の意味が変わった(世界は88%、日本は78%)
4) 将来の進路の見極めにテクノロジーを活用したい(世界は85%、日本は72%)

 日本の結果と考察については、慶應義塾大学大学院 経営管理研究科 特任教授の岩本隆氏が説明した。岩本氏は、今回の調査におけるポイントを次の4点にまとめた。

1) 67%の人が昨年の1年間でマイナスの影響を受けたと回答
2) 50%の人が2021年は職業人生で最もストレスの多い年であると回答、また約半数の人が2020年より2021年の方が就業中にメンタルヘルスの問題で苦しむ機会が多いと回答
3) パンデミック以降私生活と仕事をほとんどコントロールできていないまたは全くコントロールできていないと感じている人の数は増加
4) 67%の人が私生活に行き詰まりを感じていると回答

 1)について「マイナスの影響はない」という人は33%で、それ以外の人は何らかのマイナスの影響を感じていたことがわかった。具体的には「生活の維持に集中した」(25%)、「経済的に困窮した」(24%)、「メンタルヘルスが悪化した」(24%)が多く上がっている。

「昨年の1年間でマイナスの影響を受けた」理由

 コントロールを失ったと感じるものとして、「自分の将来」を挙げた人は43%、「キャリア」「職場の人間関係」「私生活」も41~42%が挙げている。また、86%が「人生について振り返ることがあった」と回答。ほかにも「コロナ禍以降で成功の意味が変わった」(78%)、「私生活に行き詰まりを感じている」(67%)などといった回答が並ぶ。

 そうした中で、64%が「変化を起こす準備ができている」と述べている。だが、71%が「変化を起こす上で障害に直面している」おり、77%が「雇用主による支援に満足していない」と厳しい評価を下している。こうした調査結果を報告しながら、岩本氏は「企業が従業員に対するサポートをもっと強化しなければ、優秀な人材を含めて人材が外に出て行ってしまう」と助言した。

 なお「成功」の意味の変化では、「ワーク・ライフ・バランスの実現」と「メンタルヘルスの維持」がともに30%でトップに挙がっている。

コロナ禍を経験して「成功」の意味合いも大きく変化している

 変化を阻むものとしては「経済的な困窮」が21%、「何から始めれば良いのかわからない」「自分のスキルをどのように説明したらよいのかわからない」「自分に適したキャリア選択がわからない」なども18~20%が挙げている。

 この結果を反映するように、企業に求めたいこととして、「賃金」(27%)に次いで「学習やスキル開発の機会」(26%)、「(リモートワークなどの)柔軟な働き方」(24%)、「テクノロジーを活用したキャリア提案」(20%)などが挙がっている。

自分自身の「変化を阻むもの」とは

「キャリア開発でもテクノロジーの導入・活用を強化することが重要」

 職場でのAI活用についての調査では、日本が3年連続で最下位となった。インドや中国では「職場でAIを活用している」という回答が70%以上に達したのに対し、日本は31%にとどまる(13カ国平均は47%)。その裏返しとして「職場でのAI活用について議論すらしていない」日本企業は47%で、13カ国中最多だった。

 この調査結果を紹介した岩本氏は、その背景として「シンプルに言えば、総務、人事、経理などの間接部門がのDXが遅れている」と指摘する。

日本は「職場でのAI活用の検討状況」でも「検討していない」が調査国中最多

 日本企業においてはAI活用が進んでない一方で、日本の回答者の75%が「自身の将来設計のためにテクノロジーを活用したい」と回答するなど「テクノロジーに対してポジティブ」(岩本氏)な姿勢を持つことも明らかになった。「AIなど、高度なテクノロジーを活用してキャリアアップをサポートしてくれる会社に止まる可能性が高い」という人も42%に及んでいる。

 テクノロジーにサポートして欲しい具体的なこととしては、「新しいスキルを習得する方法の提案」(28%)、「自分に開発が必要なスキルの特定」(27%)、「キャリア目標達成に向けた具体的な次のステップの提示」(25%)などが挙がっている。逆に、テクノロジーではなく人に頼りたいこととしては、「個人の経験に基づいた助言」(39%)や「自身の長所・短所の特定」(34%)が上位に並ぶ。

具体的にテクノロジーにサポートしてほしいこと

 これについて岩本氏は、「ピープルマネジメントが得意ではない人が年功序列で昇格しているような場合、部下はその上司を信頼しない傾向がある」とし、「人に頼りたいというよりも、どんな人なのかによる」と付け加えた。83%の従業員が「人よりもAIのほうがキャリアサポートが得意」だと考えているという。

 このような調査結果から、「日本企業はキャリア開発の領域でもテクノロジーの導入・活用を強化することが重要になる」と岩本氏は述べている。

 人事クラウド「Oracle Cloud HCM」を展開するオラクルは、テクノロジーの活用により、1)環境の変化に応じたキャリアゴールの設定により従業員をサポートする、2)再設定したキャリアゴール実現のためにキャリアの機会を発見する支援、3)将来設計に応じたスキル開発の支援、と3つの観点から支援できるという。

 日本オラクル クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド営業部 部長の茂原善博氏は、「既存のスキル可視化と同時に、企業が成長するために将来のスキル要件を予測しなければならない。個人の成長と企業の成長のためのスキルがマッチングし、最大化することが求められている」と説明する。「社員視点の価値にシフトが起きており、従業員エンゲージメントを強化しなければ、人材を確保できない。先んじて取り組むことが企業の命題になっている」と続けた。

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