正しいプロセスを身につけて効率良く英語を学ぶフェーズ3→4の学習方法
音声知覚を「自動化」して英語の処理スピードをアップ
2021年11月05日 08時00分更新
社会人になってから「英語をマスターしたい」と、一念発起して勉強を始めたものの、思うように身に付かず、中途半端なまま学習を止めてしまったり、せっかく通っていた英会話教室に行かなくなってしまったりする人は多いのではないだろうか。
そこで本連載では、英語パーソナルジム「ENGLISH COMPANY」や、英語学習コーチングサービス「STRAIL」などを運営する株式会社スタディーハッカーに取材し、目標達成まで挫折せず効率的に進められる英語の学習方法を紹介する。
連載第4回では、フェーズ4の目標である「理解の処理がすばやくできている」状態を目指す。各フェーズの詳細については、連載の初回で解説しているので、併せて参考にしてほしい。
フェーズ0:基本文法・基本語彙(基礎知識)
フェーズ1:ゆっくり読めば理解できる(リーディング)
フェーズ2:すばやく読める(リーディング)
【今回の記事】
フェーズ3:音声知覚ができている(リスニング)
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フェーズ4:理解の処理がすばやくできる(リスニング)
フェーズ5:記憶にとどめておける(リスニング)
フェーズ6:正確に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ7:流暢に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
フェーズ8:複雑に話し、書くことができる(スピーキング・ライティング)
音声知覚ができるようになったフェーズ3の課題は?
前回のフェーズ3では、音声変化の5つのルールを覚えてディクテーションやオーバーラッピングの練習を繰り返すことで、(英語の音に対する)音声知覚ができるようになることが目標だった。音声知覚が向上すれば、相手の発音から単語を認識できるようになる。英文を読めば理解できるのに、ネイティブの話を聞き取れないフェーズ2の状態だった人にとっては、大きな上達を実感できるだろう。
ただし、話している単語を認識できるようになっても、まだフェーズ3は、音声知覚ができて英語をなんとか聞き取れるものの「理解」の処理が追いついていない状態。内容を理解するスピードは上げる必要がある。例えば、英文が長くなるほど聞き取れなくなったり、単語を聞いた瞬間は理解できても、あとで振り返るとどんな内容だったか思い出せなかったりするのが、フェーズ3の課題だ。
音声知覚を「自動化」して理解の処理にワーキングメモリーを割く
本フェーズでは、音声知覚に多くのワーキングメモリーが割かれているため、英語を聞き取れても次のステップである内容を「理解」する処理にリソースを回す余裕がない。
そこで今回は、前回身につけた音声知覚の処理をできる限り「自動化」し、理解の処理に脳のリソースを集中できるようにトレーニングを重ねてステップ4の状態に到達するのが目標だ。
音声知覚の処理を自動化できるようになることで、今まで以上にすばやく内容を理解できるようになる。リスニング時には、「聞く」と「理解する」をセットで行う必要がある。本来異なる2つの作業を同時に行うためには、聞くための負荷を極力下げる必要がある。
シャドーイングで音声知覚を自動化する
具体的なトレーニングを始める前に、まずはフェーズ3に到達した段階で音声知覚をどの程度できているかセルフチェックしてみよう。目安として、TOEIC L&R TESTリスニングセクションパート2にあるような短めの英文を、余裕を持って聞けるようになれば、音声知覚にあまり負荷がかかっていないと判断できる。
音声知覚を自動化するために有効なトレーニングが、英語の音声を聞きながら1、2語遅れでリピートするシャドーイングだ。シャドーイングは、発音と同時に先の音声も聞き取る必要があるため、想像以上に負荷が高い。最初はついていけないかもしれないので、読めばすぐに理解できる音声から始めるとよい。まずは正確に音声を追いかけられるようになるまで練習を繰り返そう。
ここで行うシャドーイングは、「プロソディー・シャドーイング」と呼ばれる。「プロソディー」とは、「韻律(いんりつ)」という音声の強弱や長短のリズムのこと。日本人がリスニングに苦戦するのは、英語と日本語の韻律の違いによるところが大きいという。この違いに慣れ、音声知覚を鍛えられるのがプロソディー・シャドーイングだ。
「英語を聞きながら同じことをリピートするのは難しいと感じるかもしれませんが、日本語ではたやすく行える作業です。英語でできないのは能力のせいではなく慣れていないだけ。プロソディー・シャドーイングで音声知覚の処理を効率良く行えるようになれば、英語でも楽についていけるようになります」と、同社常務取締役 兼コンテンツ戦略企画部部長の田畑翔子氏は話す。
「理解」の自動化に有効な「コンテンツ・シャドーイング」
「聞く」処理を自動化できるようになると「理解」の処理に多くのワーキングメモリーを割くことができ、音を追いかけながら自然と文章の意味まで思い浮かべられるようになるという。その段階になったら、音声を聞いたそばから意味内容まで理解できるようにするため、「コンテンツ(内容)・シャドーイング」を取り入れるとよい。内容を思い浮かべながらシャドーイングを行うのだ。そうすることで、理解の処理スピードが上がる。
これは、フェーズ1でも行った英文を意味のかたまりに分解して理解するチャンクリーディングを音声でもできるようにするということ。
「コンテンツ・シャドーイングができないということは、それ以前のフェーズが十分に習得できていないと考えられます。前のフェーズができていないのに、次のフェーズの目標をクリアできることはありません。一つずつ着実に力をつけていくのが最も効率的です」と、同社コンテンツ戦略企画部の堀登起子氏はアドバイスする。
シャドーイングも自分の英語レベルよりやさしい教材から取り組むのがオススメだ。シャドーイングが難しいと感じたら、前のフェーズに戻ってトレーニングをやり直しても構わない。次回はさらに一歩進み、処理した内容を記憶にとどめる「フェーズ5」のトレーニングを紹介する。
■関連サイト
株式会社スタディーハッカー
Listening Hacker for iOS(App Store)
Listening Hacker for Android(Google Play)
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