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シスコ、データ支援した卓球・石川選手と張本選手とともに東京2020を振り返る

2021年11月17日 06時00分更新

文● 末岡洋子 編集●ASCII STARTUP

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 新型コロナウイルス感染症(COVID‑19)の影響を受けた東京2020オリンピック・パラリンピック、「ネットワーク製品」でスポンサーとして機器を提供したシスコシステムズが2021年10月21日、東京大会を振り返る説明会をオンラインで開催した。同社がアスリートアンバサダー契約を結び、データ活用の支援をした卓球日本代表の石川佳純選手と張本智和選手も登場し、データ活用について語った。

 シスコがオリンピックの支援をするのは3大会目となる。2012年のロンドン2012、リオ2016と「ネットワーク インフラストラクチャ」カテゴリでオフィシャルサポーターを務め、東京大会では「ネットワーク製品」で支援した。

 同社で代表執行役員会長を務める鈴木和洋氏は、東京大会を振り返り「デジタルのテクノロジーを高度に利活用した新しいオリンピックモデルを示すことができた」と述べる。

 ネットワーク製品を支援する立場から見た大きな特徴として、鈴木氏は拠点数の多さを挙げた。43の競技会場、大会本部、ブロードキャスティングセンター/メディアセンター、選手村と3つの大規模施設があり、主要拠点のネットワークを高い信頼性と高い可用性で接続する必要があった。結果として、「ネットワークアベイラビリティは100%を維持できた。一度もネットワーク障害はなかった」と鈴木氏は胸を張った。

東京2020でシスコはオリンピック史上最多拠点をカバーするネットワークの設計・構築・運用を支援した

東京2020をネットワークからみた数字。鈴木社長は100%のネットワーク可用性とセキュリティインシデント・ゼロを誇った

 そのほかの数字として、大会ネットワークに接続するデバイスの数は18万6000台と過去最高を記録、シスコ製品の数も前回のリオ大会の2倍以上の2万2000台だったと言う。この中には、1万台近くのWi-Fi機器が含まれている。そして、トータルのインターネットトラフィックは1.6PB。もちろん過去最大だ。

 これらを24時間体制でサポートしたシスコのエンジニアの数は50人強、パートナーのエンジニアを入れると全会場で数千人だったそうだ。セキュリティについては、インシデントはゼロだった。「サイバー攻撃はたくさんあったと思うが、全てブロックした」と鈴木氏。なお、セキュリティはシスコ製品を含むマルチベンダーで、NTTグループがトータルで運用したそうだ。

 新しい取り組みもいくつか紹介した。まずは、IoTネットワーク。6000台以上の監視カメラ、3000台以上の人感センサーなどを繋ぐもので、これらを集中管理センターから常時モニタリングした。

 また、NBC Olympics(NBC Sports Group)が実施した初のオールIP配信も支援した。フィールドでカメラがとらえる映像、編集、制作、配信を全てIPネットワーク上で行うもので、オリンピック史上初となった。

 データを活用したアスリート支援も新しい取り組みとなる。シスコは2017年末に石川選手、張本選手らとアスリートアンバサダー契約を締結し、データ分析の支援をした。大会開催前は、過去の対戦相手やマークしている相手の映像からサーブシーン、ボールの軌道などと失点・得点の分析を行う仕組みを提供した。AIを使った解析についてはデータスタジアムが支援をした。

 大会期間中はWebex BOTを使って、「サーブシーン」などと入力することで、対戦相手の映像のサーブシーンなどの見たいシーンをクイック検索できるようにした。

 データが生かされた点を聞かれると、石川選手は「何度も対戦すると相手の癖は覚えてくるが、(データや映像が)イメージと違うこともあった。このコースが得意と思っていたけどミスが多いなど、データをみてハッとさせられることが多かった。自分のイメージとデータを見ながら、ここはもうちょっと攻めていいのかななど、戦術のイメージが立てやすくなった」と述べる。張本選手は、相手のサーブを最もよく研究対象にしていたそうだ。

 映像が活かせた試合として、張本選手はドイツのDimitrij Ovtcharov選手と対戦した男子団体準決勝のドイツ戦を挙げた。「毎年試合をしている相手で、傾向もわかっていたが、改めて試合前にもう一度分析した」と張本選手。「サーブが独特の選手なのでそこを研究した。出だしはリードされたが、しっかりデータを見ていた分、2ゲーム目は冷静に立て直しをして逆転できた」と振り返った。石川選手は、「これまで体験したことがなかった」と言うシングルス初戦の対戦相手を挙げ、「映像があったことでサーブ、レシーブ、のコース取りなどをみて、試合に活かせた」と述べた。

 映像やデータは、コロナ禍で国際大会が減る中、モチベーションの維持にも役立っていると言う。「2020年は半年は自宅で練習だった。ずっと練習していると、なんのために練習しているのかわからない時期があった」と言う張本選手、動画をみて他の選手に合わせた練習に変更できたそうだ。

 石川選手は「直接対戦する機会が減った分、これまで以上に相手の癖を理解しないといけない。映像を見る機会は増えた」と答えた。

 シスコの鈴木氏は、東京大会を終えた後、日本企業のDX支援に加えて「日本社会全体のデジタライゼーションに貢献する」と今後の重点戦略を説明した。「今回の大会で得た経験や学びを日本社会全体のデジタライゼーション、ひいては社会課題の解決に活かしたい」と語った。

 同社は3年後のパリ大会ではオフィシャルパートナーとして、「ネットワーク製品」に加えて「サイバーセキュリティ製品」「会議ソフトウェア製品」のカテゴリも支援する。「東京大会の学びや知見をいかし、過去大会最高のオリンピックにしていきたい」と鈴木氏は展望した。

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