カードマジシャンとフォトグラファー(写真家)の共通点とは
筆者の仕事はマジックを披露すること。トランプをよく使う「カードマジック」が専門のマジシャンです。実は、筆者の仕事では必需の家電製品があります。記事のタイトルでネタバレかもしれませんが、ないと困ってしまうのが「除湿機」なのです。
その理由は、マジシャンやギャンブラーが扱う、(いわゆるプロ用の)トランプにあります。紙製のため、湿度は大敵なのです。さらに、仕事用の靴も皮革製品がほとんどですし、衣装のスーツも湿気を嫌うことはよく知られています。高いギャラを払ったマジシャンがカビ臭かったとしたら……マジックの魅力も半減するに違いないでしょう。
同様に、フォトグラファーにとっても湿度は大敵。ASCII.jpの読者ならご存知かもしれませんが、カメラのレンズはカビが苦手。写真愛好家を含め、プロは高価なレンズを防湿庫で管理するほど。
カードマジックが専門のマジシャンとフォトグラファーの意外な共通点。それは、「湿度が大敵」ということです。
意外と知られていない? 湿度のこと
湿度といえば、天気予報でも「今日の湿度は……」などと、なじみのある単語。しかし、あまり知られていない、あるいは誤解されていることがあります。たとえば、下の3つの◯×クイズに挑戦してみて下さい。
●クイズ1:天気予報などで使われる湿度は、空気中の水分量のことである
●クイズ2:冷蔵庫内の湿度は低い
●クイズ3:湿度の高い空気は下に溜まりやすい
答え合わせの前にすこし解説すると、天気予報など、僕らがよく使う「湿度」は「相対湿度」のことを指します。相対湿度は、空気中の水分量を飽和水蒸気量で割った数値を百分率(パーセント表示)で表したもの。
ちょっと乱暴に説明しますが、相対湿度は「結露のしやすさ」のこと。たとえば、霧や雲は、空気中の水蒸気が小さい水の粒になり、空気中に漂っている状態ですから、湿度はほぼ100%の状態といえます。
ポイントは、「飽和水蒸気量は空気の温度によって変わる」ということ。温度が高ければ、空気中にたくさんの水分量が維持されます。逆に温度が低ければ、少しの水分量でも飽和水蒸気量に達して、水(の粒)になってしまいます。
温度が低ければ、飽和水蒸気量は小さくなる。なので、冷蔵庫内は「部屋の空気に比べて乾燥はしているけれど、(相対)湿度は高くなる」なんて、ちょっと矛盾したようなことが起こります。また、湿度の高い空気は水蒸気で重さが増すので、下に溜まりやすくなります。
よって、上の問題の答えは、順に「×、×、○」となります。
ところで、「なんで、重たいはずの雲は落ちてこないの?」と疑問を持つ方もいらっしゃるかもしれません。それは「(下から上に吹く)上昇気流が雲の下にあるから」だそう。重いのに落ちてこない、もしくはゆっくり落ちてくるって、なんかマジックみたいですよね(笑)。
新しく買い足した除湿機「CD-P6321」がすごい!
さて筆者は、自宅で使う除湿機として東芝「RAD-C100DEX」を愛用してきました。その理由はスリムなサイズのわりに、除湿能力が高く、貯水タンクが3リットルあること。除湿方式が、除湿能力が高いとされるコンプレッサー式だったことも選択した理由です。
10年ほどフル回転(オート)で電源を入れていますが、いまでも頼もしく活躍しています。しかし、最近は納戸とクローゼットルームの間を移動させるのが面倒になってきたので、新たにコロナの「CD-P6321」を買い足しました(実売価格1万6800円前後)。
新しいCD-P6321は除湿能力が高く、8畳ほどのクローゼットルームが湿度35%くらいまで下がります。そのぶん、溜まった水を捨てるために、クローゼットルームと洗面所を2日〜5日に1回、往復。タンクに溜まった水を見るたびに「ああ、これがお金だったらなあ……」と妄想しているのは、決して筆者だけではないはず(笑)。
防湿庫代わりとはいきませんが、仕事で使うビデオカメラもCD-P6321が除湿しているクローゼットルームで保管しています。普通に保管するよりも、レンズにカビが発生するリスクが格段に下がるはず。
ただし、CD-P6321は貯水タンクを取り出すと、上にフタがありません。水を捨てるときに注意が必要かもしれません(貯水タンクは慣れれば簡単に持ち運べますし、逆に水を速く捨てられるメリットもあります)。
コンプレッサー式なので、やや音は大きめ。作動音が気になる方は、仕事部屋や寝室など、居室には向かないかもしれません。ただ、コンプレッサー式には電気代が安いというメリットがあります。
除湿機を使う際のポイント
最後に、マジシャンでなくても(笑)、除湿機の活用をお考えの方向けに、いくつかの筆者のおすすめポイントを挙げてみます。
○部屋用の除湿機なら、除湿方式は3つある
除湿機には、筆者が使っている「コンプレッサー式」以外にも、静かな「デシカント式」、両方の機能を持った「ハイブリッド式」があります。主な特徴として、デシカント式は「動作音が静か」「室温が低くてもても除湿能力が下がらない」。コンプレッサー式は「除湿能力が高い」「電気代が安い」。「ハイブリット式」は両方の特徴を兼ねそなえています。
○ある程度、密閉できる空間で使う
除湿機は密閉された部屋でこそ威力を発揮します。クローゼットルームや納戸に使うなら、ドアの隙間や窓に目張りをすると効果的です。ホームセンターやネットショップなどで「ドア、窓用の気密パッキン」で探せばすぐに見つかりますし、ほとんどが接着テープ付き。DIYが苦手な方も、ハサミひとつで簡単に取り付けられます。
○洗濯乾燥に使うなら下から上に向けて
「あっ! 明日着るシャツをクリーニングに出すのを忘れた」なんて場合も、さっくりと手洗いして、除湿機で乾かせば簡単に乾きます。ポイントは、洗濯物の下から風をあてるようにすること。濡れた衣類は上部から乾燥していきます。ただし、機種によっては熱風が出る場合があるので、衣類の縮みや事故防止のため、洗濯物やカーテンから40センチ以上離してくださいね。
○急いで湿度を下げたいときはサーキュレーターを併用
初めて除湿機を使う空間や、全体を一気に除湿したい場合などは、サーキュレーターを併用すると速やかに除湿できます。ただし、タンクに水が溜まるスピードも速いので、チェックを忘れないでくださいね。
いずれにしても、製品の取扱説明書に従った使用法に準じて、快適な除湿ライフを楽しんでいただければ幸いです。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
この連載の記事
-
第225回
デジタル
PCケーブルの乱れは心の乱れ! ワンランク上のケーブル取り回し術 -
第224回
ゲーム・ホビー
「温度がリアルタイムでわかるフライパン」テンプパンを使えば、料理が3倍上手くなるかもしれない -
第223回
デジタル
スーツを持ち運ぶのに便利すぎる……「SU-PACK」 ならシワをつけずにたたんで、バッグの中に収納できる! -
第222回
デジタル
ティファールの衣類スチーマー、もっと早く買えばよかった 毎日使っているほど便利です -
第221回
ゲーム・ホビー
こういうのが欲しかった! 背が高い人に「ジョセフジョセフ」のアイロン台がオススメできる5つの理由 -
第220回
デジタル
タマネギを一瞬でみじん切り! スウェーデン製「アリゲーター」は気分よく使えて掃除もラクでテンション上がる -
第219回
デジタル
家にある雑誌を並べたら幅7mに! 必要な記事だけブックスキャナー「iOCHOW K2」で読み取るのが快適でした -
第218回
デジタル
エコで省電力、超シンプルな空気清浄+加湿器「Venta LW15」の変わらないスゴさ -
第217回
デジタル
マジシャンがフィッシング詐欺の手口を解説 重要なのは「いつ、どのタイミングでウソがバレるか」 -
第216回
デジタル
秘密基地感がある! 我が家にミニダクトがある生活 -
第215回
デジタル
自宅でレーザーによる「金属の切断」「金属の着色」「サビ取り」にチャレンジしてみた - この連載の一覧へ