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新宿グランドターミナルの再編 第1回

「新宿の拠点再整備方針~新宿グランドターミナルの一体的な再編~」始動! vol.1

【連載/新宿再開発】新宿はこれからどうなる!? 次世代に向けて目指すべき新たな“都市”の姿とは?

文●岡田知子(BLOOM) 写真●曽根田 元

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次世代の都市・新宿を感じられる空間をつくりたい

 

――「新宿グランドターミナル」の再編において特に期待している点は?

岸井「空間的には、多様な新宿を見ることができる、多様な新宿を感じることができる『新宿テラス』の整備です。この再編の顔ともなる空間『テラス』は、新宿駅の線路上空に新設される『新宿セントラルプラザ』をはじめ、各建物にも配置されます。『新宿という都市』の中心部、各所に埋め込み、多様な新宿を感じ取り、多様な人々が交流する機会を提供します。

 新宿の東西のまちをつなぐ『新宿セントラルプラザ』は、2035(令和17)年度の一部完成を目指しています。ここは、鉄道各社の垣根を越えて、もう一段高い活動が見える場所、『世界を相手にする東京』が見える場所になってほしいと考えています」

――「新宿テラス」から、「都市のショーケース」である新宿が見えることに?

岸井「このテラスから見る風景は『新宿という都市』の風景、つまり多様なものが融合している大きな都市スケールの風景です。そういったスケール感をつくり出すには、単体の施設ではない観点が必要です。例えば、西口であれば、超高層ビル群に対峙するくらいのしっかりとした群としての空間的なしつらえが欲しいし、そこから新宿というまちを見たい、見せたいと思うんですよね。大きな新宿、何でもある新宿を、自分たちで感じられる場所をつくらなければいけない、と。

 今の新宿は、鉄道各社の駅や駅ビル、百貨店などがたまたま集まっているまちにも見えますが、『新宿グランドターミナル』のテラスに行けば、さまざまな機能が集約した世界一のターミナルの風景が『見える!』、エネルギーが『感じられる!』となり、外から見れば、『新宿グランドターミナル』というアイデンティティを持った駅がそこに見える。そういう空間をきちんとつくれないかと考えながら、再編事業を進めています」

 

これからの時代の新宿の在り方とは?

 

――「新宿グランドターミナル」の再編を経て、新宿にはどんなまちになってほしいですか?

岸井「1964年の東京オリンピック以降に新宿副都心の整備が進んでから50年余り。次の時代を切り開かなくてはいけません。これまで以上に、次の時代を予感させる新宿、であってほしいですね。今、新宿に集中しているエネルギーを具体的に皆さんに感じてもらえるような場所となるように。

 『ニューヨークのグランドセントラル? ロンドンのキングスクロス? 新宿はあんなものじゃないよ!』と思うんです。でも、新宿は大きくていろいろなものがありますが、ニューヨークやロンドンのようにさまざまな人がうごめいているというより、安心な日本人がたくさんいる、という感じ(笑)。決して悪いことではありませんが、これだけでは世界では勝てなくなってきています。

 この『新宿グランドターミナル』の再編が完了するまでには時間がかかりますが、こうした変化は次の変化も誘発します。少し長い目で見ながら、新宿が『東京を引っ張っていく存在感』を示していくことが必要だし、そういうまちになってほしいと考えています」




※掲載用に撮影時のみマスクを外しています。

 

提供:東日本旅客鉄道株式会社、小田急電鉄株式会社、東京地下鉄株式会社、京王電鉄株式会社、西武鉄道株式会社

プロフィール:岸井隆幸(きしい・たかゆき)
日本大学理工学部 特任教授。兵庫県生まれ。東京大学工学部都市工学科卒業、東京大学大学院都市工学専攻修了後、建設省に入省。日本大学理工学部の専任講師、助教授、教授を経て、2018年より現職。

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