いま持ち歩けるコンピューターといったら本体と液晶パネルがヒンジで繋がった「クラムシェル」と言われるノートPCがほとんどだ。1980年代に、その前段階としてあったのが、ノートといえるほど気軽ではないが、「ラップ」(膝)の上で使えるとうたった「ラップトップコンピューター」である。
今回の「デジタルdeガジェット」では、1986年に東芝が発売した「T3100」(国内モデルはJ-3100)を作る。まさに「ラップトップコンピューター」という言葉を生み出し、その後のPCの方向性を示したともいえる歴史的なマシンだ。
このマシンが編集部に届いたときのことはよく覚えている。ポータブルなのにHDDを内蔵、当時としては先端の80286 8MHz搭載、視認性の高い赤いプラズマディスプレイ。しかも、J-3100に関していえば世界を視野にしたIBM PCのソフトも一部動作する。テクノロジーを凝縮したハイエンドユーザー垂涎のマシンとなった。
ラップトップコンピューターの形をしたマシンは、それ以前にも存在した。これも編集部に届いていた「Data General/One」、国産でもソードの「IS-11C」など(いずれも1984年発売)。その元祖は、1982年の「GRiD Compass 1101」だとされる。
GRiD Compass 1101をデザインしたのは、いまや「デザイン思考」というキーワードで知られるIDEOの創設者ビル・モグリッジ氏である。1980年代初期のパソコンのデザインと、企業活動というまったく異なる2つの分野で、画期的なアイデアを示したというのは凄い。
このラップトップコンピューターのデザインについては、その後、1980年代後半に世界市場を席巻しはじめた日本メーカー複数社に対して訴訟が起こされる。その後のパソコンの歴史の流れを左右しかねなかった事件において、当時の東芝の担当者によると『月刊アスキー』の創刊1周年号に掲載された記事が、訴訟に対する資料として示されたそうだ。
このシリーズの中でも本物ソックリにできた1台と私の周囲では言ってくれたりしているプチブロック製T3100とそのストーリーをご覧あれ。
■ 「ブロックdeガジェット by 遠藤諭」:https://youtu.be/EBCGqbfGtWM
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遠藤諭(えんどうさとし)
株式会社角川アスキー総合研究所 主席研究員。プログラマを経て1985年に株式会社アスキー入社。月刊アスキー編集長、株式会社アスキー取締役などを経て、2013年より現職。角川アスキー総研では、スマートフォンとネットの時代の人々のライフスタイルに関して、調査・コンサルティングを行っている。「AMSCLS」(LHAで全面的に使われている)や「親指ぴゅん」(親指シフトキーボードエミュレーター)などフリーソフトウェアの作者でもある。趣味は、カレーと錯視と文具作り。2018、2019年に日本基礎心理学会の「錯視・錯聴コンテスト」で2年連続入賞。その錯視を利用したアニメーションフローティングペンを作っている。著書に、『計算機屋かく戦えり』(アスキー)、『頭のいい人が変えた10の世界 NHK ITホワイトボックス』(共著、講談社)など。
Twitter:@hortense667
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