2021年9月21日、Twilio Japan(トゥイリオジャパン)は国内のビジネス戦略説明会を開催。Twilio Japan 代表執行役員 社長の今野芳弘氏は、コロナ禍におけるコミュニケーションの課題に応えるTwilioの価値を披露し、特にAIと電話の連携が加速したという。
顧客エンゲージメントを向上するTwilioの価値、使いやすさ、最新動向
電話やSMS、メール、チャット、ビデオなどさまざまなコミュニケーションチャネルをAPI経由で利用できるTwilioは、コミュニケーションや顧客エンゲージメントを民主化する「CPaaS(Communication PaaS)」を謳う。2008年にサンフランシスコで創業され、2019年には日本法人も設立。開発者は1000万人を超えており、世界180カ国以上で24万アカウントが利用している。日本でも開発者向けの日本語リソースを拡充しており、2021年9月時点でコミュニティの会員数は900人を超えるという。
コロナ渦の影響を調べたTwilioの調査によると、日本では遅れていたデジタルコミュニケーション戦略が約7.5年分も加速し、欧米に追いつきつつある。また、デジタルツールの導入期間も72日から33日に短縮され、迅速性を増しているという。また、非接触が求められたコロナ禍では個人においても、企業活動においても、コミュニケーションが共通の課題となった。Eコマースやテレワークはもちろん、オンライン診療や教育、バーチャルイベントなどがメインになり、デジタルでの顧客エンゲージメントが今まで以上に重要になっている状況だ。
これに対してTwilioが提供するのは、顧客体験(CS)を向上するためのエンゲージメントプラットフォームだ。「顧客とのチャネルをどのように作るか?」という課題に対して、Twilioでは多様なチャネルとの接続をAPIで容易に構築し、ビジネスプロセスやアプリケーションに埋め込むことができる。
基本となるTwilio Voiceでは着信や発信はもちろん、電話番号の利用やPSTNの接続も可能。また、Twilio SMSではスマホやガラケーの電話番号でリーチでき、プロモーションやお知らせ、二要素認証にも利用できる。さらにTwilio Videoを使えば、既存のWeb会議ツールと異なり、ビデオ機能を自社のアプリケーションに組み込める。サービス基盤としても高い柔軟性、拡張性、可用性を備えるほか、開発が容易というのも大きなメリット。数多くのコードサンプルを用いたローコード開発が可能なほか、RESTベースのAPI、SDI、マークアップ言語、Webhookなどが用意されている。Web系のスキルセットでコミュニケーションが扱えるため、通信系の専門知識は不要だ。
今野氏は、コロナ渦のユーザー動向として「AI+電話が加速した。相手の状況を確認するためビデオを使ったり、マルチチャネルでサポートしたいというニーズも増えた」とコメント。その他、SaaSとの連携や業務ロジックへの組み込み、在宅コンタクトセンターなどの事例も増えており、Twilioにとって大きな追い風となっている。
AI Shiftのボイスボットはプロトタイプは数週間、プロダクト開発も半年
発表会の後半に登壇したAI Shift 代表取締役社長の米山結人氏は、Twilioを活用したAI電話自動応対サービス「AI Messenger Voicebot」について説明した。
AI Shiftは2019年設立のスタートアップで、AI導入のコンサルティングのほか、AIチャットボットの「AI Messenger Chatbot」や音声対話システム「AI Messenger Voicebot」の開発・販売を手がけている。このうち後者のAI Messenger VoicebotにおいてTwilioを用いている。
ボイスボットとは、音声認識でユーザーの声をテキスト化し、AIが解析。最適な回答を判断した後、回答を読み上げるという電話応対の自動化を実現する。その点、AI Messenger Voicebotはカスタム音声合成やFAQ検索、アウトバウンド機能など多種多様な機能を搭載。導入前の要件定義やシナリオ設計、イントネーション調整のほか、導入後のチューニングやシナリオ調整を含む「サクセスサポートプログラム」も用意されている。
現在、導入事例は80以上。自治体で多いのは、コロナワクチン接収予約の受付で、専用ダイヤルへの発信により、ボイスボットが自動応答し、高齢者にも利用してもらっているという。また、大手法律事務所では、営業時間外にかかってきたコールバック予約をボイスボットで自動化しており、約90%が離脱せず予約完了しているという。
このAI Messenger Voicebotにおいて、電話・SMSとAIとの連携、オペレーターへの転送などを担っているのがTwilioだ。Twilioを選んだ理由として、米山氏は「スピーディな開発が可能」「従量課金制で、初期コストが小さい」「機能が豊富で拡張性が高い」という3つを挙げた。プロトタイプ作成は数週間、プロダクト開発も半年かからず実現したほか、従量課金制のためサービス開始前はコストがかかったり、サービス提供において固定費が発生しなかったことも事業上大きなメリットだったという。