エリアLOVEウォーカー総編集長・玉置泰紀の「チャレンジャー・インタビュー」第12回

横浜駅西口・ジョイナスがグルメデリバリーとICTに挑戦中! 相鉄魂とジモト愛で盛り上げる

文●土信田玲子/ASCII、写真(インタビュー)●曽根田元

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 1973年の高度経済成長期に誕生。いまや乗降客数で日本第5位の巨大ターミナルとなった横浜駅西口直結の駅ビル「ジョイナス」が、止まないコロナ禍で新戦略に挑戦中! 駅ビルグルメを自宅で味わえる「ジョイナス デリ」、密を避ける「リアルタイム空席情報サービス」など、DX(デジタル・トランスフォーメーション)やICT(情報通信技術)を駆使した戦略の成果は?

 あふれてやまない地元愛と「Join Us」の精神で、横浜駅西口を街ごと盛り上げるという使命感に燃える運営担当者の熱き思い、ジョイナスのデジタル戦略と今後の展望、横浜への愛着について、運営を取り仕切る運営事業部の面々に、元ウォーカー総編集長の玉置泰紀が直撃した。

(写真左から)株式会社相鉄ビルマネジメント運営事業部横浜営業所営業販促担当課長・ 田中氏、営業担当係長・正木氏、営業担当主任・宮坂氏

地元客を惹きつけるジョイナスの魅力とは?

乗降客数日本第5位の巨大ターミナル、横浜駅西口のシンボル「ジョイナス」

――ジョイナスの魅力とセールスポイントを

田中「まず横浜駅に直結していることですね。横浜駅は日本で5番目の乗降客数を誇ります(コロナ影響前)。その駅直結の立地で商業展開していて、これだけたくさんの往来があり、年齢層も中学生、高校生からご年配の方まで幅広い。地下フロアの上には西口バスターミナルがあり、1日2000本を超えるバスが発着しています。

 そのおかげで、大勢のお客様がジョイナスをご利用下さっていて、メインのターゲットもフロアごとに異なる部分はありますが、若い方からご年配の方までご利用頂けるように、バリエーションに富んだテナントを取り揃えていることが、ジョイナスの魅力と特徴です」

コロナ禍における影響と対策

――コロナ禍が始まってもう2年余り。影響は実際のところ、どうですか?

田中「報道などで周知のとおり、緊急事態宣言やまん延防止措置による不要不急の外出を自粛する動き、商業施設における時短営業の継続、アルコール提供の禁止など、多くの規制があり厳しい商環境が続いています。飲食店はもとより、全体的に売り上げ不振も続いています。しかし厳しい環境下でありますが、ジョイナスはおよそ36万人のジョイナスポイントカード会員を中心に、多くのお客様に支えられ、出店テナントの頑張りもあり影響を最小限に留めながら営業を続けることができております」

――例えば、常連のお客さんが多いとか、ターミナル駅にあるから生活リズムの中に組み込まれているとか、そういった強さがあるため?

田中「まさにそうです。多くのファン、常連さんがおられます。ターミナル駅だからこそ生活必需品と呼ばれるスーパーマーケットやドラッグストアのような業態は、コロナ禍の中でも日常的に立ち寄って頂けたと思っています。食を中心としたゾーンや、若い世代向けのファッションと、バリエーションに富んだ業種展開をしていたからこそ、一部の業種の落ち込みを他業種がカバーし今がある、と捉えています」

――なるほど。実際どの商業施設も苦労されていますが、ジョイナスのコロナ対策については?

田中「売り場だけではなく、トイレや階段の手すりなどの消毒作業も行ない、最大限の対策をしています。また、利用するお客様が安心してお食事、お買い物を楽しんで頂けるように、感染防止対策の内容を、ホームページや館内告知物で発信しています。店舗のレジ周りはアクリル板を設置するなど、目に見える形で安心感を伝えています。

 さらに、お店のスタッフも安心して働けるように、従業員休憩室を増設し密を防ぐ取り組みや、マスク着用とアルコール消毒の徹底、休憩室利用時の検温確認なども行なっています」

――館内の換気設備の運転レベルアップ、いわゆる換気強化にも大変気を遣っている

田中「そうですね。通常、夏場はドアを閉め切って冷気を逃がさないようにしますが、コロナ禍においては気温上昇よりも換気を優先。入口を開放したり空調も稼働させて、少しでも空気の滞留を防ぐような取り組みを行なっております」

「リアルタイム空席情報サービス」で行列や密を回避

 ジョイナスでは2018年2月から、バカン社のシステムを使った「リアルタイム空席情報サービス」を活用中。それはコロナ禍での行列や密を回避するのに大いに役立っている。

「リアルタイム空席情報サービス」より

――「リアルタイム空席情報サービス」を導入したきっかけや反響、成果は?

正木「ジョイナスの飲食店は、コロナ以前ですとランチやディナーだけでなく、店によってはアイドルタイムも常に行列ができていたので。このコロナ禍でも行列ができるお店があるなら、お客様に『今、この店は何分待ちですよ』と、お客様のストレス軽減のため、分かりやすくお知らせするサービスはできないのかと思い、導入しました。

 今のところ、定量でこんな結果が得られましたと、データで把握するのは難しいですけれども、店のスタッフさんからは案内がしやすくなったと聞いています。5分待ちなのか、15分待ちなのか、待ち時間の目安が分かるので、お客様側で時間を選んで頂けるようになってきた。結果的に混雑が緩和されて『すごく待たされたのに入れなかった』とのご意見は減少した、と感じています」

――行きたい店と周りの店の比較もできるし、営業時間外の店も一目瞭然。地図とも連動していて面白い。画期的なサービスなのでは

正木「お客様もご利用しやすくなり、お店側にしても混雑の分散化が図れるというメリットが出ているのではないかと」

―もう一種のDXというか、ある意味ICTでもあるし、コロナ収束後も役に立ちますよね

正木「そうですね。お客様に長くご利用して頂ける、使いやすいサービスのひとつだと思いますね」

横浜の駅グルメを直送する「ジョイナス デリ」

 「ジョイナス デリ」とは、ジョイナスの「食」をサイトから注文し、出来立ての料理をオフィスや自宅まで届ける、フードデリバリー&事前予約サービスシステムのこと。最低注文金額なしで1品からでも注文でき、自宅やオフィスで店の味が楽しめる。2019年11月1日から2020年1月末まで、期間限定で試験的に行なわれた後、コロナ禍需要に対応して2020年6月30日から再始動した。5店舗からスタートし、2021年8月現在、24店舗が参加している。

――「ジョイナス デリ」の仕組みはどうなってるの?

田中「まず運営元としてスカイファームという会社があり、ジョイナスと提携しています。参加店については、我々から声を掛けて集めるなど調整しています。仕組みでいうと、お客様はまずスカイファーム社が運営する『ニューポート』サイトにアクセスします。そこで『ジョイナス デリ』を選択すると、参加店の情報が出てくるので商品を選ぶ。そしてデリバリーの場合は、ニューポートのスタッフがお店に商品を取りに行き、お客様にお届けします」

――デリバリーサービスでは、配達員のマナーの悪さなどトラブルも多く聞かれますが、「ジョイナス デリ」は大丈夫?

正木「お客様からクレームが来ることは、ほぼ無いです。配送員も業務委託をしている他社とは違い、ニューポートのスタッフが配達しますので、しっかりと教育が行き届いている。時間を守る&お届けの仕方など、お客様が不快にならないサービスが徹底されていると思っています」

――「ジョイナス デリ」は値段も手頃で、ガッツリ系が多い?

正木「そうですね。ジョイナス デリは女性が1人でも楽しめるスイーツ、軽食から、寿司、カレー、ラーメンなどお腹にたまる系の料理まで、豊富なメニューが揃っております。比較的お求めやすい価格で展開されていることが強みです」

幅広いジャンルのメニューは選ぶのが大変なほど

――和洋中、アジア料理にハンバーガーやピザ、焼き鳥などのおつまみも。メニューが多彩で、いろいろな店の料理を一度に注文できて届けてもらえるのがいい

正木「同じくニューポートに掲載されている施設が4ヵ所程あるのですが、手前味噌ですけれども、ジョイナス デリはそのなかでもメニューも多くて、値段も手頃で利用しやすい。非常にいい形で運営できていますね」

――おひとり様にファミリー、誰でも楽しめる

正木「決済データから見えるご利用層としては、男女問わず30代から40代が一番強いところではあるのですが、なかには60代や10代の方もいらっしゃる。本当に幅広いお客様にご利用して頂いています」

非接触型グルメスタンプラリー

 コロナ禍での販促キャンペーン、苦しい状況の飲食店応援企画として、ジョイナスではこの夏、飲食店舗3回利用につき1回抽選ができる、スマホでの非接触型「グルメスタンプラリー」を開催した。ジョイナス内飲食店で使える300円のクーポンが、抽選で1000本当たるキャンペーンだ。

――この夏に実施された非接触型「グルメスタンプラリー」の反響は ?

宮坂「店舗での非接触型スタンプラリーという施策自体が、ジョイナス初の試みです。ショッピングセンターでは、お馴染みのガラガラ福引のキャンペーンをジョイナスでもよく行なっており、人気がありました。でもコロナ禍で、なかなか人を集めてのキャンペーンは難しいので、今年は一番苦しい飲食での非接触型グルメスタンプラリーを、夏の販促として初めて実施してみたのです。

 スマホを活用したものになるので、高齢のお客様にはご利用しづらいところがあるのですが、スマホに慣れている世代の方には、多くチャレンジして頂きました」

――300円とは結構うれしいし、ルーレットチャレンジも楽しい

宮坂「1回の利用での値段の下限はないので、コーヒー1杯飲んでもスタンプが集められる し、お飲み物代だったらほぼ充当できます。ランチだったら900円が600円とおトクに。ルーレットチャレンジは、ゲームっぽい感覚で楽しんで下さったようです。36日間の期間中で1000本と当選確率は悪くはなかったので、今回は外れても次回は楽しみにして下さい」

屋上バーベキュー・ガーデン「THE BBQ GARDEN in 横浜ジョイナス」へ影響は?

 ジョイナス屋上にある、バーベキュー・ガーデン「THE BBQ GARDEN in 横浜ジョイナス」。オープンエアながら屋根付き、北欧スタイルのソファでゆったりと楽しめる人気のスポットだ。

――緊急事態宣言下での状況は?

食材は持ち込み制。地下の食料品売場で肉や野菜を調達したり、事前予約で届けてもらうこともできる

田中「新型コロナウイルスの感染拡大防止のため、時短で営業しています。神奈川県内飲食店の要請に従い、お酒の提供が一切できない状況です。私自身、ビール大好き人間としましては、ビールのないBBQなんて!と言いたい(笑)。しかし、お酒がなくても開放的な空間と、開放的な気分でお食事できる場所として楽しんで頂ければと思っています。

 私たち施設側からすると、感染拡大防止が図られ、コロナ禍が明けた暁には、ぜひジョイナスの屋上BBQに来てください! と積極的にアピールしたい気持ちですね」

開閉式天幕を備え、雨の日も心配なし。全席ソファ席でソーシャルディスタンスも取りやすい

――ビールとBBQを思い切り楽しめるようになるということは、コロナが落ち着くことにほかならないですよね

田中「はい。コロナの鎮静化を願うばかりです。バーベキュー・ガーデンは、フェンス側にテーブルが置かれているので、実は横浜駅西口を遠くまで見渡せるようなロケーションになっており、とってもおススメです。私も『早く仕事仲間とお肉を焼いてつまみ、おいしい野菜も食べられる時間が戻ってきて!』という気持ちです」

ジョイナスの今後と駅西口の活性化

――コロナ禍でもICTなど新しいチャレンジを続けるジョイナスが、今後やっていきたいことは?

田中「将来的には、鶴屋町エリアの再開発が進んでおり、さらに横浜駅西口の魅力が高まると思っています。

 西口のジョイナス以外の施設も街を盛り上げる仲間と考えていますので、仲間と共にもっともっと魅力的な横浜駅西口にしたい。横浜駅に来た際には西口で過ごして幸せな気持ちで帰ってもらいたい。観光で来た方にはホテルに泊まって、買い物はジョイナスに立ち寄ってほしい。学生や若い人の甘酸っぱい思い出の1ページにジョイナスが登場してほしい。街の魅力のひとつに、ジョイナスが位置付けられたら嬉しいです」

 創設から100年以上の歴史を持つ相鉄グループ。その中で高度経済成長期に誕生した「ジョイナス」は、日本第5位のビッグターミナル横浜駅を、街を、今も盛り上げている。

 このコロナ禍において、経営の厳しい飲食店をデジタル新サービスで支えているが、その根底にあるのは、長年受け継がれている熱い"相鉄魂″と地元への愛着だった。それがある限り、地元を愛し、地元に愛される駅ビルSC「ジョイナス」は、これからも大切な仲間たちと横浜の街を輝かせていくだろう。

●株式会社相鉄ビルマネジメント運営事業部横浜営業所 営業販促担当 田中課長。座右の銘は潔く、「人生一度っきり、貯金より浪費!」。最近のハマりごとは「運動不足解消のため、休日に鎌倉市内の御朱印巡り。21年3月から始め、40か所くらい制覇しています」。
●同社運営事業部横浜営業所 営業担当 宮坂主任。座右の銘は厳しくも愛情も感じる「情けは人の為ならず」。最近のハマりごとは、しつこい汚れも落ちると噂の漬け置き洗い法「オキシ漬け」。さらに「桃が大好きなので、この時期は1年分の桃を食べることにかけています。コロナ禍で休止中のアフタヌーンティー巡りもそろそろ再開させたいです」。
●同社運営事業部横浜営業所 営業担当 正木係長。座右の銘は「勝つことは偶然じゃない」。ハマっているのは「ずっとイヤホン、ヘッドホン」。こだわるあまりにカスタムメイドまでしている、とのこと。

聞き手=玉置泰紀(たまき・やすのり)●1961年生まれ、大阪府出身。元ウォーカー総編集長、現KADOKAWA・2021年室エグゼクティブプロデューサー担当部長。日本型IRビジネスリポート編集委員ほか。座右の銘は「さよならだけが人生だ」。近況は「LOVEWalker総編集長として、横浜LOVEWalkerでのYouTube放送にも、たまに参加してます。以前、女性向け情報誌「シュシュ」(現在休刊中)を担当していた時が、ちょうど八景島シーパラダイスやランドマークタワーのオープニング時期と重なったこともあり、横浜に通った頃が懐かしいです」

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