2021年8月24日、マップボックス・ジャパンは地図サービス事業者とともに、地図専用のアドネットワーク構築を発表した。発表時点でアドネットワークに参加する地図サービス事業者はヤフー、ゼンリン、ジョルダン、ナビタイムジャパン、駅探、インクリメントP、マップルの7社。約3000万ユーザーのリーチを目標とする。
マネタイズの難しい地図サービスを支える広告サービスに
米Mapboxとソフトバンクとの合弁会社として2020年3月に設立されたマップボックス・ジャパンは、地図情報サービスの開発を迅速に行なうためのプラットフォームを提供している。国内ではヤフーの「Yahoo!MAP」や決済サービスのPayPayなどですでに利用されている。
今回、マップボックス・ジャパンが地図専用アドネットワーク構築を発表したのは、地図サービスのマネタイズの課題を解決するという目的があるという。登壇したマップボックス・ジャパン 最高経営責任者CEOの高田徹氏は、地図業界が解決すべき問題としてビジネスモデルを掲げており、「地図の分野では、収益化が難しい」と指摘する。
過去、Webサービスのマネタイズにおいては優れた広告技術があった。古くはYahoo!のようなポータルサイトにおけるディスプレイ広告、検索エンジンと連動した検索広告などがあり、最近ではスマートフォンでの利用を前提としたSNSやフィード広告、YouTubeのような映像配信サービスとのビデオ広告などが挙げられる。こうした広告事業はすでに数千億円の市場規模に成長し、マネタイズが難しかったサービスの収益化に大きく貢献してきた。
しかし、ビッグプレイヤーが市場を席巻し、デジタル地図自体が無料提供されることが多い地図サービスにおいては、マネタイズが困難だった。これに対して、マップボックスが提供するアドネットワークは、地図サービスのマネタイズを支援していく。「私たちのやりたいことは、地図の世界にも最適な広告技術を提供すること」と高田氏は語る。
地図サービス事業者とアドネットワークを構築 3000万ユーザーにリーチへ
一方、現在の地図広告に関しては、地図に特化した広告技術がないという課題がある。多くの広告技術は既存の他メディアのために作られたもので、地図のために作られたものではない。そのため、地図サービスとの相性がきわめて悪く、地図上の広告はユーザーにとって邪魔な存在で、広告主からも効果のない投資となっているのが実態だ。
これに対して、Mapbox広告は「最新の地図デザインを邪魔にしない」「利用シーンと連動したユーザーによりそう広告表示」「バーチャル空間の活用」「新デバイスにもいち早く対応」といった特徴を持つ。第一弾は「プロモーテッドピン広告」では地図上にスポンサーのピンを表示し、クリックによって広告カードを表示。広告配信、効果測定などが可能なAds SDKが用意されているため、メディアは最小の工数で広告事業を開始できるという。
そして、今回は地図サービス事業者と連携し、魅力的な規模のアドネットワークを構築する。発表時の8月時点でヤフー、ゼンリン、ジョルダン、ナビタイムジャパン、駅探、インクリメントP、マップルがマップボックスの地図アドネットワークに参加しており、3000万ユーザーへのリーチを目標とする。
もとより、ビッグプレイヤーの存在感の大きい地図サービスの市場では、各事業者は差別化戦略として特化型の地図を作らざるを得ず、結果的にMAUを増やしにくいという課題があった。今回は有力な地図サービス事業者と連携して、地図専用のアドネットワークを展開し、群として魅力的な広告商品を構築するという。