こと米国のテック企業に対しては、厳しい目を向けるEU。このところのターゲットの1つがアップルだ。6月16日に、フランス・パリのイベント「VIVATECH 2021」にオンライン登場したティム・クック氏のスピーチを受け、アップルがEUで抱えている問題をまとめる。
スウェーデンに本社を置くSpotifyからの抗議
プラットフォーム手数料は適正かどうか
4月末、EUの執行機関である欧州委員会(EC)は、音楽ストリーミング分野においてアップルがアプリストア「App Store」の独占的立場を乱用している疑いがあるとして、異議告知書を送ったと発表した。独占禁止法(EU競争法)訴訟に向けた最初の一歩となる。
EUの異議告知書は、2019年にスウェーデンに本社を置くSpotifyによる申し立てにさかのぼる。ここでSpotifyは、(競合サービスである)Apple Musicを持つアップルがApp Storeで、他の音楽ストリーミングサービスに不利な条件を押し付けていると主張していた。たとえば、アプリを提供する事業者はApp Storeで配信する有料アプリの売上の30%を手数料として払わなければならない。
これに対してAppleは、「SpotifyはApp Storeを通じて自社ビジネスを成長させてきた」「SpotifyはApp Storeのエコシステムから得られる利益全部をApp Storeに支払うことなく独り占めしようとしている」などと反論している(Spotifyが申し立てをした当時)。
公式ストアを通さないアプリのインストールは
ユーザーの利益を損ねると主張するティム・クック氏
そのApp Storeのビジネスモデルを根底から壊しかねない法案が欧州で審議中だ。「Digital Markets Act(DMA)」というもので、デジタルサービスの市場拡大、影響力の増大をにらんで「ゲートキーパー」(”門番”の意味)と定義する事業者は制約を受ける。
ゲートキーパーとはいわゆるプラットフォーマーを指しているわけだが、エンドユーザーの追跡やプロファイリングをしたり、トランザクションの仲介役も担っており、「大きなプラットフォームを提供する企業はコングロマリットのようなエコシステムを作成しつつあり、新規参入を難しくしている」ことから、ゲートウェイやゲートキーパーと表現しているわけだ。
そのDMAについて、ティム・クック氏はVIVATECHで、「ユーザーの利益に反することになる」と反論した。
「審議中のDMAの文言では、iPhoneでサイドローディングが可能になる。つまりApp Store以外の方法で、iPhoneでアプリを入手できることになる」「これはiPhoneのセキュリティーを大きく損ない、App Storeに組み込んできたプライバシーの取り組みを台無しにする」と語った。
App Storeではプライバシー保護のため、アプリを超えた追跡に際しての合意、プライバシーラベルなどの機能を盛り込んできたと語り、App Storeを通さないアプリインストールを可能にすると、これらが意味をなさなくなるというわけだ。この流れでクック氏が取り上げたのがAndroidだ。「マルウェアを例に取ると、AndroidはiOSの47倍のマルウェアがある。Appleにマルウェアが少ない理由は、我々はiOS設計時にアプリストアを単一にし、すべてのアプリがレビューを受けた後に公開されるようにしたからだ」と言う。
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