カウルはリペイントされています
乗れる体力のあるうちに買わなくちゃということで購入したホンダのモトコンポ。エンジンもマフラーもノーマルなオリジナル状態なんですが、変更されている点が3ヵ所ありました。
ひとつは車体の色です。
ボディーカウルが深みのあるメタリックレッドになっていますが、モトコンポのカラバリはソリッドな赤、黄、白の3色のみ。メタリックの設定はありません。この色はリペイントされたもので、カウルを外して裏を見てみると元の色は赤でした。
リアキャリアを外してみたら塗装が……
2つ目の変更点はリアキャリア。
バイクに荷物を積むには無くてはならないリアキャリアですが、折りたたむと上面がフラットになるというデザインのためか、モトコンポには装備されず、オプションでも用意されていませんでした。ただ、いくつかのバイク用品メーカーから専用品が発売されていたそうで、うちのにはそれが付いています。
このリアキャリア、まるで純正品かのように違和感なく収まっていていい感じなんですが、気になるのが真ん中にある支柱。下にパッドが付いていてカウルのフチに乗るようになっています。
荷物の重量をカウルで支えるということですが、プラ製でそれほど丈夫ではないし、その下は空洞なので重さに負けて割れかねません。それに畳んだときにはピタッと箱型になって欲しいので、外すことにしました。
で、カウルを外してみたら、支柱が当たる部分の塗装が剥がれてしまっていました。取り付けたのが完全に乾く前だったのか当たってるうちに剥がれてきたのかはわかりませんが、表面が削られたようになっています。カウルを外すと目立つので、いずれ補修をしなければ。
バッテリーはシールドタイプが付いていました
変更点その3は前回も書いたバッテリーです。
ユアサ製のモトコンポ純正品はとっくに廃盤になっています。純正品を復刻したサードパーティー製のリプロ品も売られていますが、うちのに付いていたのは汎用のシールドバッテリーでした。純正品やリプロ品はフタを開けて自分でバッテリー液を入れるタイプですが、シールドバッテリーは“sealed”という名称の通り密閉されています。
密封されているため液漏れの心配はなく、横倒しにしたまま充放電をすることもできるし、完全メンテナンスフリーでバッテリー液を補充する必要もなくいいことづくめ……と言いたいところですが、モトコンポの場合は問題もあります。純正バッテリーより幅が広いため、リアフェンダーにあるバッテリースペースに入らないのです。
そのためバッテリー固定部の前か後ろをカットすることが多く、うちのも後部が切られていました。ここにはバッテリーの固定ベルトを引っ掛ける部分があり、そのベルトが使えなくなるので固定には結束バンドが使われています。
バッテリーはリプロ品の方がオリジナルに近いですが、加工前のリアフェンダーを調達して元に戻さなくてはならないし、バッテリー液の定期的なチェックも必要なので、これはこのまま使おうと思います。
ただバッテリーケース以外にも別の問題があるので、それを解決しなくちゃいけません。と、その前にまずはバッテリーのお話を。
鉛蓄電池と呼ばれる充電池です
純正品もこのシールドバッテリーも電池の種類としては同じもので、プラスとマイナスの電極とバッテリー液の化学反応で充放電を行なう充電池です。電極に鉛が使われていることから鉛蓄電池と呼ばれています。
始動時に大きな電流を放電でき、安定していて爆発や火災の危険性が低く安価なのが特徴で、自動車・バイク用ほか様々な場所でよく使われています。
プラスの金属板(正極)は二酸化鉛(PbO2)製。マイナス側(負極)は海綿状の鉛(Pb)でできています。バッテリー液は電解液と呼ばれ、その正体は希硫酸(H2SO4+H2O)です。
バッテリーを外から見るとプラス端子とマイナス端子がひとつずつあるだけですが、中はセルと呼ばれる部屋に分けられて、各セルには正極と負極が対になって入れられています。
なんでそんな面倒な構造になっているかというと、実はこの反応、2.1Vほどしか電力を取り出せないんですよね。自動車や今のバイクで使う12Vバッテリーはもちろん、モトコンポの6Vにも全然届きません。
そのため12Vの場合は6個のセルを直列に、6Vの場合は3個のセルをつなぐ形になっています。セルとセルは仕切りで分けられているためバッテリー液も別々に入れるようになっていて、12Vではフタが6個、6Vでは3個並んでいます。
鉛蓄電池の放電の仕組み
電流というとプラスからマイナスに流れるものですが、実際はマイナスの電荷を持った電子がマイナスからプラスに流れています。逆になっちゃった理由は、電子が見つかるのが遅かったからなんだとか。
電池が発明された1800年ごろ、電気にはプラス(正)とマイナス(負)があることはすでに知られていたそうなんですよね。でも、電気の流れを電流と名付けたりもしたものの、目に見えないだけに何がどう流れているかはわかっていませんでした。それでも向きを決めなくちゃということで、電流はプラス(正極)からマイナス(負極)に流れると定義されたそうです。ちなみに決め人知らずです。
ところがそれから100年弱の時が過ぎ、電子が発見されてビックリ。実際はマイナスの電荷を持った電子が、逆にマイナスからプラスに流れていたんです。つまり、電子の流れは電流と逆向き。確率1/2を外しちゃった感じですね。
放電すると負極では酸化反応が起こります
鉛蓄電池の充放電は化学の授業で習った酸化還元反応を利用しています。
電子が流れる状態にする、つまり鉛蓄電池を回路に接続すると放電が始まります。このとき負極の鉛(Pb)が鉛イオン(Pb2+)として希硫酸に溶け出し、電子(e-)を放出=電流が発生します。
この鉛イオン(Pb2+)は希硫酸中の硫酸イオン(SO42-)とめちゃくちゃくっつきやすいため、溶けた途端に結びついて白っぽい硫酸鉛(PbSO4)となり、負極の表面に付着していきます。この2つの反応式は以下の通りです。
Pb → Pb2+ + 2e- (鉛 → 鉛イオン+電子2つ)
Pb2+ + SO42- → PbSO4 (鉛イオン+硫酸イオン → 硫酸鉛)
そしてこの2つを合わせると酸化還元反応の半分、酸化部分だけを表わす半反応式になります。
Pb + SO42-- → PbSO4 + 2e- (鉛+硫酸イオン → 硫酸鉛+電子2つ)
鉛が鉛イオンと電子2つになり、その鉛イオンは硫酸イオンと結びついて硫酸鉛になる。結果として鉛と硫酸イオンが合わさると、硫酸鉛と電子2つになるというわけです。
酸化は3種類あって、一番わかりやすいのは酸素と結びつく酸化。文字通りです。もうひとつは水素を失う反応。そしてこれらは結局電子を失っていることとイコールなので、電子を失うことも酸化です。ちょっとややこしい上、奪われてるのに式では引き算じゃなくて足し算になるので、さらにややこしいですね。
正極は還元反応を起こし、全体で酸化還元反応が起こる
負極から放出された2個の電子(2e-)は、回路をぐるっと回って正極に戻ってきます。正極で行われるのは還元。全体で酸化還元反応が起こることになります。
正極に電子(2e-)が流れ込むことで二酸化鉛(PbO2)がマイナスに帯電するため、希硫酸中の水素イオン(H+)が吸い寄せられてきます。水素イオン(H+)は二酸化鉛(PbO2)から酸素イオン(O2-)を奪い取って水(H2O)になり、酸素イオン(O2-)を失った二酸化鉛(PbO2)からは鉛イオン(Pb2+)が発生します。
そして鉛イオン(Pb2+)といえば、なんと負極から溶け出すのと同じ物。当然こちらも硫酸イオン(SO42-)とくっついて硫酸鉛(PbSO4)が正極の電極に付着していきます。
文章にすると難しそうですが、式にするとそうでもありません。
PbO2 + 4H+ + 2e- → Pb2+ + 2H2O (二酸化鉛+水素イオン4つ+電子2つ → 鉛イオン+水2つ)
Pb2+ + SO42- → PbSO4 (鉛イオン+硫酸イオン → 硫酸鉛)
負極のときと同様に、この2つを合わせると還元の半反応式になります。
PbO2 + 4H+ + SO42- + 2e- → PbSO4 + 2H2O (二酸化鉛+水素イオン4つ+硫酸イオン+電子2つ → 硫酸鉛+水2つ)
「水2つ」って意味不明ですけど、水分子が2つということです。
酸化の半反応式と還元の半反応式をまとめると酸化還元反応となり、全体の反応式の完成です。
Pb + PbO2 + H2SO4 → 2PbSO4 + 2H2O (鉛+二酸化鉛+硫酸→硫酸鉛2つ+水2つ)
全部一緒にしたら、急にスッとした式になりました。
要するに、鉛蓄電池が放電するときは、鉛と酸化鉛でできた電極と硫酸が酸化還元反応を起こし、両方の電極に二酸化鉛(PbO2)がくっついて、生成された水でバッテリー液が薄まるということになります。
長くなってしまったので今回はここまで!
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