長引く時短営業要請による売上激減、そして大量閉店など暗いニュースが続く居酒屋業界。その存亡の危機を乗り越える秘策は見えるのか。居酒屋業界の著名プロデューサーで、浜倉的商店製作所の浜倉好宣氏が横丁文化の存続と、MIYASHITA PARK「渋谷横丁」の連日盛況で示した好結果の背景には“きっかけ作り”と“次世代継承”があった。
この4月より、一般社団法人・日本居酒屋協会の会長に就任した浜倉氏の、成功の秘訣と熱い魂の経営術を、元ウォーカー総編集長の玉置泰紀が聞いた。
震災後、24時間営業に変えて今がある
昭和のシャッター商店街再生プロジェクト「恵比寿横丁」を成功させ、都内のターミナル各所で横丁文化を今に伝える浜倉的商店も、かつて未曾有の苦境に立たされた。しかしその際の「逆転の発想」が、コロナ禍中の生き残りをも支えていた。
――コロナ禍で一番影響を受けている業界ですが、以前にも大きな危機にさらされた
「うちの場合は、夜だけの営業ではない店が多くて。昼間から開けるようになったきっかけは、2011年の東日本大震災です。『有楽町産直飲食街』(現・有楽町産直横丁)は、震災の前まではいわゆる居酒屋業態で、夕方から朝までの営業でした。それが震災の翌日からお客さんがまったく来ない。居酒屋のスタッフというのは、単価の安いランチを嫌がる傾向にありますが、その危機にスタッフ自ら『ランチをやりましょう」と申し出てきたのです』
――当時は自粛という感じでしたね
「やっぱり昼間は、メインのおかずももちろんですが、まずご飯と味噌汁がおいしくないとダメです。そこで本格的に精米機を用意し、精米したての米を羽釜で炊き、炊き立ての“ごはん”と各業態の“汁”にこだわりました」
――震災をきっかけに24時間営業へシフトした
「どうせならと、その時から24時間に変えたんです。あの当時、24時間営業は時代とは逆行していましたが、今こうして残れているのは、やっぱりそのおかげですね。
それまで居酒屋というと、ランチをやって休憩時間で、17時から開けるというパターンが多かった。でも銀座エリアはフレックスタイムなので、昼に丼食べる人もいれば、昼から飲みたい人もいる。商業施設に勤めている人や水商売の方たちでは、一般のビジネスマンとは出勤時間も違いますし、対応時間も変わります。
だから食事している方もいれば、飲んでいる方も混在しています。昔の食堂のイメージですね。そうしないと、マーケットニーズを受け取っていけないな、と感じていました」
――土地柄でニーズはどう変わるもの?
「まず、お客様の層が違います。シャッター商店街を改装した恵比寿では、元があの雰囲気なので、昼間は暗くて入りにくいですし、ビジネス街でもない立地のため、昼やっても元気が出ないんです。神田は元々昼がメインで夜は早い。恵比寿は逆で、何の仕事かな?って思うくらい、終電過ぎても飲む方はいます。
業態や場所、マーケットによってニーズに合わせないと、どの業種も残っていけない。渋谷横丁は商業施設内なので、昼の営業は必須。これまでは“酒場”をたくさん作ってきましたが、“酒場”ではお昼時に入りにくいイメージを持たれますので、“食市”という表現にしました」
――渋谷は全国各地の「食市」が並んで楽しいし、中央の通路でうまく分かれていて面白いですよね
原点である「恵比寿横丁」開業までのイバラの道
渋谷、恵比寿、新橋、日比谷、上野、横浜など多くの主要ターミナルで、横丁や飲食街を運営している浜倉的商店製作所。その原点は2008年にオープンした恵比寿横丁だ。しかし築40年の昭和なシャッター商店街「山下ショッピングセンター」を再生させ、人工的な横丁を作るという一大プロジェクトの完成への道のりは、かなり険しかった。
――実績ゼロからのスタート。開業まで2年ほど掛かったそう
「権利関係が複雑な物件で、当時は地元の不動産業者の方も『あそこは複雑だからまとめられないよ』と言われるようなところでした。でも半年ほど通い詰めて、最終的には何とか権利者にご協力を得て1期オープン。そこから別の権利者の方を2期、3期とつなぐことができて、全体につながる現状に至りました」
――そんな浜倉さんのパッションがスゴい!
「貫けば形に変わると。ただ、横丁になって集客施設になると、権利が高く転売されて家主様も替わったり。家賃も当初の倍以上に上がってしまっている現実もありますが(笑)」
――作る方はものすごく夢を持っているけど、地元の人にはいろいろ反対される。開発が成功したら地価も上がるのに
「そうですね。開発しないと街が動かないんですよね。『赤羽トロ函』を作った時も、SNSでいろいろ書かれましたけど、結局、店がたくさん入ればその商店街も潤う。当時は空き店舗ばかりだったのに、今はもう空きなしの人気エリアになりましたし。
どこかで店を出すとなると、ご近所様にまず挨拶に行きます。その時に反対の声が大きいほど成功しますね。お客様が集まれば地域が明るくなり、活性化され、最後は“作ってくれてありがとう”になります。常に明るい地域作りを目指しています」
――それは最高ですね
「渋谷横丁の隣は、歴史ある『のんべい横丁』さんですが、渋谷横丁に来てみたけど、やっぱりおじさんは、のんべい横丁の方が落ち着くから河岸変えよう、といった相乗効果も出ればうれしいですね」
――若い人たちも、のんべい横丁にトライしてみようか、という流れもできる
「お客様も世代交代していってるので。ちょうど良いと思うんですよね。小さなコミュニティと大きな施設では雰囲気も全く違いますので」
――地元の方々は、どうやって説得するのか?
「ひたすら怒られているだけですよ(笑)。皆さん『何ができるんやろ?』と気にしている。でもお客様が地域に流れるようになったら自然とお付合いが成立していきます。ご近所様なら飲みにも行きますし」
――それが一番重要。単独の店、個店は作らない?
「うちも一軒一軒、個店の集合体ですけれども、責任者によりますね。特に個店は人間で大きく変わりますよ。個店はやはり“人の力”次第になってしまう」
コロナの経験が飲食店をグレードアップする
――浜倉さんの築いてきた横丁の世界は、今のコロナ禍でもニーズをつかんでいると思いますが、居酒屋協会としては、この現状で経営不振の個店から「大変だ」という声は届いている?
「今は、ほとんどがそうです。この声をまとめていけるような窓口がないので、なかなか一本槍にできないっていうところが、ちょっと歯がゆいですね。ニュースにもなりましたが、104円訴訟で立ち向かうグローバルダイニング代表の長谷川耕造さんはさすがだな、と」
――業態を変えて、営業時間を延ばすのが難しい店も多い?
「その人や会社の背景、大きさにもよりますね。 ひとまとめで言えないところです。緊急事態宣言で20時閉店だからって、通常は17時から営業の店に、いきなり明日から昼開けなさいって言われても、どうしていいか分からないでしょう」
――日本居酒屋協会のネットワークでどんな手助けを?
「ラーメン店の経営者へ、居酒屋の昼に自分もラーメンを始めたいという話が来て始まったり。居酒屋側よりも食堂側にちょっと寄せて開発を進めているところも増えています。みんな情報交換しながら、持っている技術の交流もしていますね」
――そうした新しい挑戦は、コロナ収束後も財産になりますね
「そうですね。そこはしっかり続けていきたいです」
――店舗ではマスクや消毒、検温。コロナ対策にやはり気を配ると
「コロナは、今後も長くお付き合いせざるを得ない環境になりました。これからは衛生観念への配慮が大きく変わると感じています」
――国内では、インフルエンザや食中毒の年間死亡者数が減ったんですよね。コロナ禍でいろんな対策をやっているおかげでは
「マスクに消毒、衛生意識の変化が大きいですね。それがコロナ以降、当たり前になってくると思います」
――コロナの体験を活かして、店のグレードを上げていけば、インバウンド需要が戻って来ても安心して来てもらえる
「渋谷横丁が、コロナ禍でもお客さんに来て頂ける大きな要因は、前面テラス席があることです。空気が吹き抜けることが安心材料のひとつになっている。換気環境を整えることも大事で、僕も他のお店に行くと小マメに換気してくれないか、と意識するようになりましたね」
――渋谷横丁など、浜倉さんが作る施設は規模が大きくて席数も多い。ソーシャルディスタンスは取りやすいのでは?
「最初は、通路もないくらいの席数だったのですが、1596席から350席分減らしました。元々はいわゆる横丁っぽくて、人と友達になってもらうとか、出られないから声を掛けるとか、そんな感じの密度が魅力だったんですけども」
――今は通路もしっかりとあり、安心して食べられる感じ
「お客様がたくさんいらっしゃったので賛否両論でしたね。そこで、日本フードサービス協会が発表しているガイドラインに沿ってテーブル同士の間を測り、間引いたのが350席です」
――コロナ対応型の横丁になっていると。他の横丁はどう?
「現状は時短で、お客様の集客が以前より減っている分、席の距離を取ってご案内するようにしています。検温、消毒、マスク、飛沫防止パーテーション等の最低限の事と、定期的な換気を当たり前にする意識は、常に持っていますね」
MIYASHITA PARKのキーテナント「渋谷横丁」は観光振興にも一役買っている
以前は、薄暗くて怖かった宮下公園も商業施設の屋上に移り、明るく健全な場所になった。女性客や家族連れに人気の東京の新名所・MIYASHITA PARKの中でも、特ににぎわいを見せる渋谷横丁は施設のシンボルであり、キーテナントでもある。渋谷全体の観光振興にも一役買っているのではないか。
――観光&文化振興について、飲食の側から考えていることは?
「有楽町で産直メインの業態として、地域や自治体の産直食材のイベントを実施していました。それが渋谷までつながっているんですが、ここにもデジタルサイネージを100台入れているのは、イベントなどに対応するためです。
今の時代、美味しいものを食べるだけでは喜んで頂けない。例えば、隣ののんべえ横丁さんだと、店主とお客様が小さな空間の雰囲気で楽しめるという空気感。あとはミシュランクラスの店みたいに、飛び抜けて美味しいものを体験する場は求められます。渋谷横丁なら、大規模なエンタメ系施設にして『横丁を体感する』ということ。わざわざ行く目的や動機が必要な時代になるでしょう」
――渋谷横丁に行かなくちゃ!というフック作りですね
「それを、ここではいろいろなものを集めながらやっていこうと。生産者イベントや流しにマジシャン、大道芸からお祭りイベント、ライブDJも入れています。気軽に食べに来られた方が、流しで盛り上がったからカラオケに流れたり、DJがあればクラブに流れたり、騒ぎすぎたから落ち着いた店に流れたり、街に流れるフックを作っています」 」
――不思議と違和感はないし、流しの歌手までいる
「渋谷のんべえ横丁、新宿の思い出横丁は、20年前は若い人は入りにくい雰囲気がありました。僕は横丁が大好きでしたので、この横丁文化を次世代につなげ、老若男女、世代を超えたコミュニティの場を蘇らせたいと思いました。それで、若い人たちが入りやすい恵比寿横丁を人工的に作って、オープンして13年経つのですが、今や若い人ばかりが増えて、逆に僕たちが入れなくなりました。でも、それはすごく良いことなんですよね」
――渋谷横丁とのんべえ横丁が隣り合っているのが面白い
「新旧並んでいますが、本当の横丁みたいに店を小さく区切るのは、今は新築では法的にできなくて。だから両方体験して頂けると面白いと思います。
居酒屋っていうのは、とても身近な飲食のレジャーです。渋谷横丁では、まず気軽に入って、誰も呼んでないのに流しが歌って、マジシャンやパフォーマー、占い師もやってくる。DJが勝手に曲を流し始める。そして居酒屋でノリにノッたからクラブへ行こうとか、流しにつられて歌ったあげく、勢いでスナックに流れたり。そうして街全体が潤った方がいいですよね。
特に若い人たちは、ちょっとした体験のフックを置くことが、別の何かへの動機付けになる。また、こういう場所があると、こんなことをやれませんか?と、いろいろなジャンルの方々が、ある程度集まってきて下さる。お祭りもここでやりましょうとか。
そしてどんどん広がりながら、いろんな方々にも応援してもらえる。今はコロナで花見や旅行も出来ないので、全国のお花見の映像を店内で流したり、地方局や観光にもつなげていければと思います」
――居酒屋というのは、本当にいろいろなきっかけを生める場所ですね
ご当地ソウルフードが大集合!
渋谷でリアル「全国ケンミンショー」
最新店舗は2020年8月開業の「渋谷横丁」。渋谷・宮下公園再開発地にオープンした大型商業施設「RAYARD MIYASHITA PARK」1階に広がる、総面積1380㎡の巨大な横丁だ。地方別に分かれた全19店舗で、全国から産直の新鮮素材や各地の郷土料理が味わえる。
――渋谷横丁のお客さんの平均年齢や男女比は?
「20~30代中心、6対4ぐらいで若い女性同士も多いですね。でも、土日はご年配の方もいらっしゃいますよ」
――昼夜通じて、テラスのにぎわいがいいですね
「ここは公園管轄で、“にぎわい条例”に則って、オープンテラスにしています」
――観光の面で渋谷区と一緒に何か行なっている?
「こういう時期なのでイベントはできないんですけど、渋谷区観光協会さんから話があって、『純喫茶&スナック 思ひ出』をスタジオにして、渋谷横丁とYouTubeで同時配信をやりました」
――渋谷横丁は全国各地のソウルフードも楽しめるのが魅力。この発想はどこから?
「まず有楽町で産直を始めてから、日本各地のいろいろな食材を仕入れ、生産者ともご縁ができました。渋谷横丁は店舗が大きいので、多様な業態をただ並べても、ひとつのストーリーができない。
そこでケンミンショーじゃないけど、ご当地フードが出てきて、地域ごとに分かれていたら面白いかなと。東京に住む人の半分以上は、僕のように地方出身でプラス出張の方がいらっしゃる。地方の名物を集めて紹介できるのは、東京でしかできないことです。
メニューも、地方色が出せるので常に変えていける。有名になった食材をアレンジしてバリエーションも出せる。料理も素材も全国から発掘しているんです」
――人気を集めているご当地やヒット商品は?
「九州や韓国が人気ですね。料理ではないのですが、韓国食市ではチャミスルが驚くほど売れましたね。居酒屋メニューで絶対に頼まれるものでは、唐揚げが強い。串の焼鳥も鉄板なので、ご当地食べ比べメニューを作って、店舗間でデリバリーしています。昼間はご当地丼ですね。丼、ラーメン、麺類。B級グルメのトルコライスなどもありますし。
“毎日がフェス”みたいにしていると、ずっとそれを掘り起こせて、一度集めたメニューは『ご当地焼き鳥』といった形で残していけます」
――全国のケンミンショーは続けるだけでも大変では?
「永遠に大変です(笑)。でも、居酒屋をはじめ、自分がこの仕事をしているのは、次世代につながないといけないという使命感です。ずっと踏ん張りすぎると衰退しますし、だんだん店主もお客様も年を取る。お店はずっと残るけど、お客さんはその時代の人々しか来ない。そんな中で生き残るために、次世代につなぐものを蘇らせていくと。
やっぱり昔あった良いものはリバイバルとして、常に求められる世の中ですし、蘇らせてずっと続かせたい、という考え方なんです」
――現在・過去・未来と時代を行ったり来たりしながらニーズを探す
「この街には何が望まれているか?ということですね。店の数は多いのに営業時間が短いとか、不足していることが実はたくさんある。こんな店があったらいいなと考える、そこから入ります。
最初から完成形ではなくて、ずっとブラッシュアップをしていく。一発では決まらないのでアメーバのように作っていく。時代は変わり続けるから、すぐに追いかけないとダメなんですよ」
浜倉流・居酒屋を元気にする方法
浜倉氏には、独自の人材キャスティング論がある。“オヤジと娘”という組み合わせで、浜焼き酒場が繁盛する理由とは?
――「オヤジと娘の浜焼き酒場」というのが面白いですね。オヤジとギャルの相乗効果!
「おじさんばかりの重たい雰囲気の店は入りにくいですが、若い子が声を掛けるとお客さんも入りやすくなる。そういう雰囲気作りですよね。もう本当に人とキャスティングだと、つくづく思います。
個店の場合、誰にも管理されてないし、ずっとお客さんから見られてるわけじゃないですか。だから、少しやる気がなくなると店の雰囲気に出てしまう。横丁ならば、周りの店と競争も協力もする。集合体の方が、自然体でハンドリングも成立していきます」
――浜倉さんのパワー注入、活性化させる力はスゴい
「本当はこうじゃないかな、といろいろな組み合わせを試みながら、自分たちだけではできなくても、いろんな協力者の方々が携わって頂けたからこそ、成立しています」
――話し言葉もマニュアルではないとか
「若い子は親戚のおじさんに喋ってるような感じでいい。あの半分タメ口のような、敬語のような。マニュアル通りでは、そっちに意識が行って気持ちが入らないですし。おじさんと姪のような会話ができて、その姪がかわいかったら、多少のタメ口もおじさんたちは許せるでしょう」
生産者応援「おいしい笑顔プロジェクト」は 外食のきっかけ作り
渋谷横丁では、今年3月12~17日の6日間、日本居酒屋協会主催のイベント「おいしい笑顔プロジェクト 飲食店から全国の市場へ、漁師さんへ、エールを送ろう!」が開催された。コロナ禍での時短営業要請などで経営の苦しい飲食店や、豊洲市場ほか全国の市場、漁業者の販売不振対策として、おいしい水産物を食べて応援しようというプロジェクトだ。
――「おいしい笑顔プロジェクト」の目的は?
「日本居酒屋協会のメンバーがこの1年間、業界を見てきて、みんな頑張ってはいるものの、全体として外食の割合が小さくなっている。飲食店や協会で話す分には結構前向きですが、それは理解している人間同士だからなんですよね。
それでちょっと離れた、例えば大手企業や外資系の方たちに話を聞かせて頂くと、外にご飯を食べに行く自体が良くないこと、なイメージが強い。これは何か理由付けしないとお店に来られないんだな、と。会社からも行くなと言われ、家にいるのも辛い。
飲食店とは、いろいろなきっかけが生まれる場所で、そこが自宅とは全然違う。来てもらって少し気持ちが明るくなる、人と話して楽しくなる。ご飯を食べてお腹を満たすだけの場でもない。だから、そのきっかけ作りをしたいなと思っていたんです。
外食産業が縮小すると、生産物の行き場がなくなってしまう。漁師さんから『買ってくれ』と言われても、こちらも売れるところがないのが苦しくて」
――高級食材も生産過剰です。外食は悪じゃないし、コロナ対策に気をつければ、食べることによって生産者も元気になるという、その思いを伝えることが大事
「それを多くのお店がやってくれると、小さな取引も大きくなるじゃないですか。今回の40店舗が400店舗、4000店舗になっていけば、漁師さんの生計が立つぐらいの取引になるかもしれない」
――こういう指針があるとニュースになれば、これから名乗りを挙げるところも出てきそう
「理由付けができることが大事ですね。どうして外にご飯食べに行くの?と言われた時に、食べに行けば生産者を助けることになるから、など説明しやすいですよね。今回はトライアルで6日間だけですが、引き続きやっていき、それを見てうちもやりたいとか、行政も動くなどの影響につながるようになれば」
――この後に第2、第3弾の予定は?
「今回は水産省がバックアップして下さっていて、3月の年度末までの事業です。新年度の予算が立てられる4月以降で、次の企画も出しています」
協会の会長として発信力を高めて
成功事例の共有を目指す
一般社団法人・日本居酒屋協会は2009年に発足。「居酒屋業界のネットワーク化」を強め、全国各地の居酒屋・飲食店経営者が、いつでも他の加盟者と情報交換ができるネットワークを構築している。飲食業界のカリスマ・浜倉氏の会長就任で、今後の発展へ熱い期待が寄せられている。
――浜倉さんはこの4月から協会の会長に就任。断り続けていたのに今回、受けた理由は?
「私のような者が立つ位置ではない、おこがましいと…。人前に立つのも大の苦手ですし。しかし業界も、横丁文化を次世代に伝え続けようとするのと同じで、僕もおじさんになりましたので、もう次世代につなぐ年齢です。ここはMCとして次世代を受け入れないと、業界も衰退してしまいます」
――最後に会長としての抱負を聞かせてください
「渋谷横丁ができて、イベントだけでなく、いろんなきっかけが作れるようになりました。だから効果があることはもっと発信していくようにしたい。
県や市からもよく相談を受けるんですが、困っていてもどこに相談していいのか分かりにくい。だから、いろんな事例を発信して普及活動をもっとやっていかないといけないと思っています」
――協会の設立目的は、元来それですよね。業界内でもすごく画期的です。これからのご活躍を期待しています
居酒屋は、ただお酒を飲んで料理を楽しむだけではない。実はいろんな“きっかけ”が生まれるところ。コロナ禍の苦境にも負けない浜倉的商店の強みは、ささいな“きっかけ”を見逃さずにキャッチしていることだろう。居酒屋は人の心と街を潤す“きっかけ”を作る場所というコンセプトで、ニューノーマル時代での生き残りを賭ける。横丁文化や地域名産の継承を支えるのは“世代交代“だ。
そんな浜倉氏の次なる聖地は新宿で、新たな仕掛けを計画しているという。それが居酒屋業界や顧客にどんな新しい影響をもたらすのか。浜倉的商店製作所のアクションから、今後も目が離せない。
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