残念ながら動きませんでした
実家の物置で見つけたパタパタ時計(第273回「昭和レトロ感がすごい 懐かしいパタパタ時計が出てきました」)。
電源コードをコンセントに差し込んだら照明のライトがついて、小窓から見える縞模様が左右にユラユラと動き始めました。そういえばこんなの付いてた付いてた、動作中なことがわかるようになってるんだよなあ、なんて懐かしさが込み上げてきます。
アラームをセットして時計を進めてみたらちゃんと鳴ったし、きれいだから普段使いしよう! ……と思ったんですけど、そうはいきませんでした。どうやら壊れてるみたいなんですよね。
というのも、肝心の時刻表示が動かないんです。本来なら1分経つと分表示の板がパタンと落ちて次の数字に変わるはずなんですが、いつまで待ってもその気配なし。1分どころか2、3分は過ぎてるはずなのにずっと同じ時刻のままです。これじゃレトロなオブジェにしかなりません。
ただ、耳を近づけるとジーッという小さな動作音が聞こえるんで、まったくダメでもなさそうな感じがします。もしかしたら直せるかも。
というわけで修復を試みてみました。
ケースの分解は慎重に
修理しようとしてケースを壊してしまったら本末転倒なので、様子を見つつ慎重に分解していきます。
まずはネジ。ケースを固定しているネジを外しても開かなかったので、まさか接着されてたりする? と思ったんですけどそんなことはなくて、時刻とアラームを設定するダイヤルがはまっているせいでした。そりゃそうですよね。修理できなくなっちゃいますもんね。
ツマミなどは差し込まれているだけということがほとんどで、このダイヤルもジワジワと引っぱると外れてきました。2つのダイヤルを抜き取るとケースを2つに分割できます。
……と思ったら、今度はアラームボタンが引っかかってしまいました。隙間から覗いてみると、ボタンに爪があってレバーのような物にはまっているだけみたい。
爪が折れたりしませんようにと祈りつつ、ボタンを上引き出してから恐る恐る引っ張ると、パチンと外れました。一度やってしまえば何と言うことはないんですけど、こういうのってやっぱ怖いですよね。これでようやくケースを開けられます。
パッと見は問題なさそう
ケース底面のネジを外すと時計のユニットが取り外せました。ホコリも全然なくて超きれいです。
ユニットを見ると、パタパタ動く時刻表示部分に駆動装置らしき物がくっついているのがわかります。電源コードがハンダ付されているところが剥き出しなので、通電中に触ったりしたらとっても危険。コンセントに差さっていないことをもう一度確認してから作業を進めます。
時刻調整ダイヤルを回すと時間が書かれた板がパタパタと回り、特に引っかかったりはしませんでした。時刻表示部分の機構は問題なさそうです。
ていうか、そこが壊れているようなら自分にはお手上げなんですけどね。駆動装置にしてもギアが欠けていたりモーターが死んでいたりしたら直せないので、どこかが外れてるとか接触不良程度であってほしいところです。
それにしても、これってどこにモーターがついてるんだろう。
縞模様はモーターの回転部分でした
通電するとユラユラ動く縞模様のユニットは透明ケースの中に入っていて、とりあえず外せそうなのはこの透明ケースです。試しにネジを外してみると、ケースと一緒に縞模様も外れてきました。
縞模様をよく見ると、縞々ではなくて螺旋状の1本の線になっています。そしてこれを見て、モーターがどうなっているのかがわかってきました。
モーターっていうと、ケースに入っていて軸とコードが出ているような物を想像するじゃないですか。それで最初はこの縞模様(と思っていた螺旋模様)の部分がモーターなのかと思ったんですけど、それにしては電線がありません。
縞模様の部分はモーターの一部、つまり回転する部分で、モーターの中身が剥き出しで設置されていたんです。
構造が簡単な交流モーター
交流モーターって、直流モーターより構造が単純なんですよね。
モーターは電磁石と永久磁石からできていて、電磁石のN極S極を交互に入れ替えることで永久磁石と引き合ったり反発したりして回転します。このとき極性を入れ替えるためには電流の向きを逆にしなければならず、一方向にしか流れない直流の場合は工夫が必要になります。
直流モーターは回転する部分に電磁石が取り付けられていて、周囲に磁石が配置されています。一番基本的な直流モーターは回転部分の軸に2つの電極があり、ブラシという接点から給電されます。
よくできているのはこの部分。電極が軸と一緒に回るようになっているため、半分回ったところで反対側の接点につながるようになっているんですよね。つまり半回転ごとにN極とS極が入れ替わるということです。
対する交流モーターはというと、こちらは直流の逆。回転する部分が永久磁石で、周囲にあるのが電磁石になっています。交流は一定間隔でプラスマイナスが反転してくれるため、電流を反転させる必要がありません。ただ単に電磁石に流してやるだけで、勝手にN極とS極が入れ替わってくれるわけです。50Hz帯なら毎秒50回、N極とS極が入れ替わります。
駆動装置だと思っていたものがモーターでした
この時計のモーターも交流モーターなので、螺旋模様のユニットが永久磁石で、電磁石が周囲にあることになります。
透明ケースが付いていたところの鉄板はフレームだと思ってたんですが、これが電磁石の一部でした。鉄板は上下に分かれていて、それぞれがN極S極になります。電磁石本体はその右にあるコイルで、ここ全体でモーターを構成していたんです。
コイル部分が電磁石なことは最初に見たときにわかったんですけど、「ああ、ブザーだね」なんて知ったかぶってたんですよね。たしかにアラームのブザーでもあるんですけど、モーターでもありました。それにしてもブザーと兼用になってるなんて、よく考えられてます。
複雑な形をしてるのは逆回転防止?
回転部分の磁石は、本来は軸を挟んで外側に向かってN極S極があるんですけど、このモーターでは90度違っていて、軸の前後方向がNSになっています。
その磁石の両面にトゲトゲがついた鉄板が付いています。片側15ヵ所にあるトゲがそれぞれN極S極になるということですね。そして上下にある金属プレートのフチには6ヵ所ずつ半円状の切り欠き。
なんでこんなややこしい形をしてるのかよくわからないんですけど、こうなってると回転方向が一定になったりするのかもしれません。トゲの位置が上半分が切り欠きのところにあると、下半分は切り欠きがないところに来るようになっているので、引き合ったり反発したりという力に微妙な差が生まれて、上手い具合に逆回転しないようになってるのかな、と。
磁力を強める効果があるってことかもしれないですけど、そうなるとどうして逆回転しないのかがわからないんですよね。
古いグリスが固まっていました
ここまで調べたところで、「あれ? そうなると変だな……」と、おかしな点に気づきました。
螺旋模様がモーターの回転部分であるなら、縞々が左右に揺れるのではなく一方向に流れて見えるはずです。揺れるということはモーターが回転せず、行きつ戻りつしてるということ。
試しに元どおり組み直して感電に注意しつつ通電してみると、やっぱりその通りでした。ちょっと回って戻るを繰り返しています。ここで考えられるのは、本来の位置まで回転する前に極性が入れ替わってしまうのではないかということ。引き戻されているということですね。
一番単純な理由は、負荷の増大です。何十年も経っているので、中のグリスがダメになっているのではないかと。
で、螺旋模様ユニットを外してみると、飴みたいな色をした、飴みたいに粘度の高いグリスが出てきました。
原因はほかにもあるかもしれませんが、少なくともこれではダメです。グリスがこうなっているのに、こんな小さなモーターではトルクが小さくて回るわけがありません。まずはこれをきれいにしてみましょう。
以下次回!
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