このページの本文へ

スマートフォンからシームレスAIライフへ ファーウェイトップが決算発表でコンシューマー事業の方向性を説明

2021年04月03日 09時00分更新

文● 末岡洋子 編集● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 スマートフォンのシェアが激しく落ち込むファーウェイ。一方で次の手も進めている。3月31日に発表した2020年度の決算報告で同社輪番会長の胡厚崑氏は、「HarmonyOS」「HMS(Huawei Mobile Services)」とAIの3つをコアとする「シームレスAIライフ」戦略を強調し、引き続き戦っていく姿勢を見せた。

「ファーウェイは数年前からスマートフォンのリーディングカンパニーになっている」と語る胡氏。先に発表した「HUAWEI Mate X2」は人気で売り切れ状態とのこと

2020年の売上自体は伸びているが
主に自国でのビジネスが牽引している形

 ファーウェイの2020年の決算内容は、売上高は8914億人民元(約15兆円)、純利益は646億人民元(約1兆800億円)と、ともに前年比3.8%増と同3.2%増と成長を遂げた。過去5年の年平均成長率では、売上高は14.3%増、純利益は14.5%となっている。

 同社はネットワーク機器(キャリア事業)、コンシューマー事業、サーバーなどIT機器(エンタープライズ事業)の3つの事業の柱を持つが、3事業ともに前年比プラス成長を遂げた。最も伸びが大きいのはエンタープライズ事業で前年比23%増、コンシューマー事業は3.3%増、キャリア事業は0.2%増となった。

 地域別に見ると、前年比プラスとなったのは、同社の売上の65%以上を占める中国市場のみ。EMEA、APAC、アメリカは全てマイナス成長となり、自国でのビジネスが牽引したことがわかる。中国市場について「元々の市場の大きさを土台に、さらなる健全な成長を遂げた」と胡氏は語った。

 スマートフォンを含むコンシューマー事業について、胡氏は「2020年は仕入れなどの問題があり、売上は減った」と認める。一方でファーウェイはスマホを「1」とし、タブレットやPCなど「8」のデバイス、そしてエコシステムの「N」を意味する「1+8+N」戦略を進めており、スマートフォンは「1」に過ぎないともする。

 胡氏も「スマートフォン事業は影響を受けているが、それ以外のPC、タブレット、ウェアラブル、スマートディスプレイなどの売り上げは、65%増という急速な成長を遂げた」とした。

 その「1+8+N」戦略の中核は、独自OS「HarmonyOS」、独自プラットフォーム「HMS」、そしてAIだ。これにより、さまざまなシーン(状況)に応じるという戦略で、実現するのは「シームレスAIライフ」だ。

 HarmonyOSについては、スマートディスプレイなど搭載が進んでおり、すでに発表されているようにスマートフォンでも採用する計画を再度表明した。エコシステムについては、「すでに20社のハードウェア、280社のアプリケーション事業者がHarmonyOSのエコシステムに参加している」と述べた。

 HMSについても同様に好調さをアピール、「2020年末時点で230万人の開発者が参加、HMS Coreに基づくアプリは12万以上ある」と胸を張った。「HMSの成長スピードは我々の予想を上回っており、すでに世界3位のモバイルアプリケーションエコシステムに成長している」という。

 なお、スマートフォン苦戦の直接の原因となっているチップの供給については、「事業という点で見ると大きな影響を受けている」と述べつつ、「サプライヤーの多様化を進めている」と対応を進めていることに触れた。

 2021年の供給状況については「まだ不明瞭」とし、「スマートフォンの事業自体の見通しが難しい」としながらも、「フラッグシップなどについてはロードマップに沿ってローンチする」と語った。

 なお、同日に日本で開かれた会見で、ファーウェイ・ジャパンの代表取締役会長 王剣峰氏は、日本でもスマートフォン事業は「甚大な影響が出ている」と認めながら、「どんなに苦しい状態でも日本でできる限り存続したい」と語った。なお、一旦は米政府からファーウェイへの輸出許可が降りたものの、取り消しとなったキオクシアを「不確定要因」に挙げた。

 胡氏は、米国の制裁について「グローバルのサプライチェーンは地政学的要素により破壊されており、(ファーウェイだけでなく)サプライヤー、消費者とすべてが影響を受けている」と主張する。「チップはファーウェイだけでなく、自動車業界など他の産業も需要がある。世界レベルで協力して、グローバル化した半導体のサプライチェーンの修復・回復を図らなければ」と語った。

カテゴリートップへ

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン