レノボはThinkPad X1シリーズのメインモデルであるCarbonとYogaの2021年モデルを発表し、モバイルシリーズがすべてTiger Lakeに更新された。
ThinkPad X1シリーズは、最小モデルが画面2つ折りのThinkPad X1 Foldで4対3比率の13.3インチである(半分に折れるが)。そして、その上が最軽量であるThinkPad X1 Nanoで13インチの16対10、さらに最薄モデルであるThinkPad X1 Titaniumは13.5インチの3対2だ。その上のサイズのThinkPad X1 CarbonとThinkPad X1 Yogaも更新にともない、16対10になった。15.6インチのThinkPad X1 Extremeは16対9のままなで、画面の縦横比のバリエーションがここまで多種多彩なシリーズも珍しい。
中でも画面が3対2と最も縦長で最薄の「ThinkPad X1 Tianium」5Gモデムを内蔵したモデルを試用してみた。
史上「最薄」のThinkPad X1誕生
あこがれの「チタン」なのだっ
ThinkPad X1 Titanium(タイタニウム)は「YOGA」名がついていないが、ディスプレイが360度回転するヨガ型のモバイルノートである。その名のとおり、ボディがチタンでできていて、X1として「最薄」を実現しているのが特長だ。
さらに、搭載するディスプレイが13.5インチの3対2であるというのも珍しい。他社ではすでにあるが、モバイルノートとして最も「縦長」なディスプレイを搭載しているのだ。
搭載するCPUはCore i7-1180G7/1160G7、Core i5-1140G7/1130G7の4種類で、これらはUP4つまり消費電力が7~15Wの省エネタイプで、ThinkPad X1 Nanoと同じである。通常のモバイルノートはUP3という12~28Wタイプなので、ちょっと非力である。メインメモリは最大16GB、ストレージは最大1TBとなっている。インテルのEVOプラットフォーム認定だ。
特長であるディスプレイは、13.5インチのQHDつまり2256×1504ドットのIPS液晶で、マルチタッチ(10点)を搭載する。
インターフェイスはUSB4(Thunderbolt 4)×2とオーディオコンボジャックと最小限に絞られている。無線機能はWi-Fi 6とBluetoothに加えて、WWANとしてLTEまたは5Gも内蔵可能だ。
LTEの場合は「Fibocom L850-GL LTE CAT9」でプラス1万9800円、5Gでは「Qualcomm Snapdragon X55 5G Modem-RF System」でさらにプラス3万6300円となっている。5Gの周波数はn77/78/79に対応で、これはX1 FoldやNanoと同じだ。
キーボードはJIS配列とUS配列(1100円プラス)が選択可能で、左右にスピーカーが設置された。ポインティングデバイスは、キーボード手前のタッチパッド(ThinkPadクリックパッド)と、おなじみ赤ポチのTrackPointもキーボード中央に搭載する。
本体サイズは297.5×232.7×11.5ミリで、重量はWi-Fiモデルが1.15キロ、LTE/5Gモデルは1.18キロ、バッテリー駆動時間(JEITA2)は16.8時間である。執筆時点ではクーポン適用で約24万円からとなっている。
チタンの感触と薄さがGOOD
もちろんキズはつきません
ボディはまさにチタンらしい「チタニムシルバー」で、手にすると、やはり薄さを感じる。キーボード一体型のThinkPadでは最薄だそうで、11.5ミリしかない。同じく360度回転の最新のThinkPad X1 Yogaでは、14型とTitaniumより0.5インチ大きいはいえ、1.4キロからとなっているので、Titaniumは250グラムほど軽いことになる。
ただし、ボディすべてがチタンではなく、天板のみがチタンで、裏側はカーボンで補強されている。キーボード面と底面はマグネシウム合金である。チタンは軽量化というより「防キズ」のために使われているのだ。
使ってみて感じるのは、3対2比率13.5インチの画面の広さだが、伴ってボディも長方形ではなく、極端に言うと、正方形に近い。
Nano = 292.8×207.7×13.87mm
Titanium = 297.5×232.7×11.5mm
Carbon = 314.4×223×14.9mm
横幅が30センチを切っているのは、特にカバンの出し入れが楽なのだが、奥行きが23センチを超えるのは、けっこう圧迫感がある。タッチパッドも正方形にみえるくらいなのだ。
キーボードの横幅は265ミリで、「-」と「@」と「:」より右側のキーが幅寄せされている。これは最近発表されたX1 CarbonやX1 Yogaも同様で、使いにくいまではいかないが、ちょっとせまっ苦しい。左側のTab、CapsLockやShiftが巨大なので、ここをもう少し我慢して、右側のキーを正常化してほしいところだ。
ディスプレイは実測すると、285×190ミリある。16対9では13.3インチになるが、富士通のUHでは294×165ミリなので、面積はTitaniumのほうが12%広くなる。実際比べると、縦の長さが25ミリ違うのがとても大きくて、仕事の効率も上がるのだ。
13.5インチの3対2というと、Surface Bookがズバリ同寸で、ドット数まで全く同じである。Surface Book 3は1265グラムなので、Titaniumのほうが115グラムも軽い。バッテリー容量はSurfaceが45.8Whで、Titaniumが44.5Whと変わらないから、チタン+マグネシウムの威力なのである。
では、ThinkPad X1最軽量モデルのNanoと比べるとどうかというと、13インチ16対10ディスプレイで907グラムなので、Titaniumのほうが243グラムも重い。バッテリーはNanoのほうは48Whと上なので、ちょっと悩ましいのだ。
コアi5-1140G7の速度計測
Tiger Lake UP3の回しっぷりやいかに
今回試用したのはCore i5-1140G7搭載モデルで、速度計測をしてみた。
CPUの速度をみるCinebenchではR15で691、R20で1632、R23で4029だった。i7-1160Gを搭載するX1 Nanoでは853、2149、5521だったので、7~8割の速度である。ともに4コア8スレッドで、i5とi7の違いは通常クロックが1.8GHzと2.1GHz、最高クロックが4.2GHzと4.4GHz、キャッシュが8MBと12MBという違いがある。
3DMarkでは、FireStrikeが3674、TimeSpyが1304、WildLifeが9488で、i7-1160Gの92~98%まで出た。Iris Xe Graphicsはコアi5とi7ともに全く同じスペックなので、同等に回っている。 SSDは256GBでPCIe 3.0x4を搭載していたが、マルチシーケンシャルリードが2088、ライトが1293と、特に書き込み速度が速かった。
バッテリーベンチは液晶輝度最高、電源モード「最も高いパフォーマンス」では2時間10分しか稼働しなかった。「より良いバッテリー」では3時間22分走ったので及第としよう。
チャージのほうは、付属の65WのACアダプターでは50%まで62分、70%まで93分、90%まで134分と遅めである。
3対2画面と5G回線は
1度使ったらやめられません
試用したTitaniumには5Gモデムが入っていたので、こちらの速度も計ってみた。ドコモのSIMを入れて、都内各所でSpeedtestを走らせたところ、最高で下りが878Mbps、上りが47bps出た。5Gスマホでもまだまだ受信感度は不安定だが、春以降には3キャリアとも5Gのエリアが大きく広がる「予定」なので、LTEモデルよりは5Gを買いたくなる。
そして、Surface BookやLaptopで体験しているのだが、3対2比率の画面は、特にモバイル時にとても使いやすく、手放せなくなる魔力がある。
おじさんとしては、X1シリーズらしいブラックボディにしてほしいと強く望んでいるのだが、Tiger Lakeに縦長画面に5G内蔵で、3拍子そろったThinkPad X1 Titanはいまイチオシのモバイルノートなのだ。