国内ではauから発売予定のOPPOの次期フラグシップ「OPPO Find X3 Pro」は、流れるようなデザインのボディーに10億色対応のディスプレーとカメラを搭載した特徴的なスマートフォンだ。OPPOはメディア向けに開発者とのラウンドテーブルをオンラインで開催、Find X3 Pro開発にかかわったRison Chen氏(Product Manager)、Tan Hao博士(Display Specialist)、Huang Juewen博士(Senior Engineer of Photography)に開発のコンセプトを聞いた。
宇宙船をイメージした本体デザイン
──カメラ周りに特徴のある本体デザインは、どのような発想から生まれたのか?
Rison Chen Find X3 Proは未来を感じさせるデザインを取り入れ、イノベーション感をユーザーに伝えることを考えた。本体背面からカメラ周りが滑らかにつながるデザインは、宇宙船にヒントを得て、そのインスピレーションを形に仕上げた。またカメラを含めた、製品全体の一体感あるデザインを実現しようとも考えた。その結果、他社も含めたほかの製品と差別化できるデザインにまとめあげることができたと考えている。
──ディスプレーは世界初という10ビット・10億色表示とした。カメラも同様だ。どうしてここまでの性能を出そうと考えたのか?
Rison Chen スマートフォンで撮影した写真は「感動のひととき」を記録するものでもある。人生の中で無数の大切なひとときをすべて撮影し、それを美しく表示するために10億色表示というディスプレーの搭載と、10億色対応のカメラの搭載を決めた。ディスプレー性能を高めることでコンテンツの表現力が高まり、より忠実に「雰囲気」を伝えることもできると考えている。
──ディスプレーでほかに進化している点は?
Tan Hao博士 ディスプレーのリフレッシュレートは最大120Hzで、5Hzからの可変式とした。これによりコンテンツごとにディスプレー表示が滑らかになるだけではなく、消費電量を抑えることもできる。高リフレッシュレートは主にゲームアプリの仕様に優位で、ゲームアプリの対応も進めている。
──10億色のディスプレイでできる新しい機能はあるか?
Rison Chen 色覚異常(CVD)の方々へも美しい世界を提供したいと考え、ディスプレー表示の補正機能を搭載した。簡単なステップでユーザーがどの色の表示に対して反応が弱いかをチェックし、それを自動的に補正してプリセットできる。世界の人口の約8%が色覚異常という調査結果があり、弊社としては社会的責任をはたすことも重要な取り組みと考えている。
──ハードウェアの日本向けのカスタマイズは行われているか?
Rison Chen 今回はハードウェアはグローバルモデルとほぼ同等としている。FeliCaの搭載については、日本でもコード払いの普及が進んでいることもあり見送った。なお、OSのColorOSについては日本人向けに使いやすいようカスタマイズを加えている。
──サウンド周りの進化はあるか?
Rison Chen スピーカーは前モデルのOPPO Find X2 Proと同等で、2つを搭載してステレオ再生に対応している。またマイクは3つに増やし、録音環境などを強化している。
──映画音楽家などで知られるHans Zimmerとコラボレーションした理由は?(Find X3 Proは着信音などを同氏が手掛けている)
Rison Chen OPPO Find X3の先進性や未来館を伝えるために巨匠であるHans Zimmer氏を採用した。これまでSF映画などで数多くの名曲を生み出しており、同氏の作り出すサウンドはFind X3 Proのイメージと見事に合致している。また、同氏にもFind X3 Proに興味を持っていただいた。今後も製品展開に見合ったコラボレーションは続けていきたいと考えている。
10億色に対応、顕微鏡撮影も可能にしたカメラ
──OPPOとして、スマートフォンのカメラ進化をどのように考えているか?
Rison Chen スマートフォンでの写真撮影が消費者にどんな体験を与えるか、それを常に念頭に考えカメラを開発している。「ポケットから取り出し、感動の瞬間をいつでも撮れる」カメラを消費者に届けたいと考えている。今回のFind X3 Proでは10億色対応やビデオ撮影機能の向上などに注力した。今後も「体験」を第一に考えカメラ開発をしていくつもりだ。スマートフォンは本体サイズが限られているから、その中でコンピュテーショナルフォトグラフィ (Computational Photography) 、計算写真学で写真の質を高めることも考えている。たとえばある場所を3月に訪れて写真を撮影。しかし、その場所で最も美しい色合いで写真が撮影できるのが9月であったなら、3月に撮影した写真を9月のイメージに近づける、そんな表現ができる処理も開発したいと考えている。
──10億色、10ビット撮影のフォーマットは? また他機種での表示は?
Rison Chen氏 JPEGでは最大8ビットまでしか保存できないため、10ビット撮影はHEIF(High Efficiency Image File Format、ヒーフ)形式となる。弊社でテストした結果、JPEGよりも少ない容量で保存できることもわかっている。また、ビデオはMPEG4で保存される。現時点では10ビットで撮影してそれを表示できる端末はFind X3 Proだけとなるが、これからは10ビット表示可能なディスプレーが増えるだろう。Find X3 Proの10ビット撮影は、将来の10ビットディスプレー時代を見越して搭載している。
Huang Juewen 10ビットHEIF撮影はカメラの設定でオンとオフを切り替えられる。
──顕微鏡モードはどのように動作するのか?
Huang Juewen マクロレンズを使い、光学30倍とデジタル2倍を合わせ、ハイブリッドで60倍の拡大を実現している。レンズは500万画素のセンサーを搭載しているが、周囲がボケないように300万画素を使ってる。またレンズの周りにはLEDライトを搭載し、被写体の表面を照らして細かい部分も写せるようにしている。
──顕微鏡撮影はどのような使い方を想定しているのか
Rison Chen Findシリーズは未来のスマートフォンに向かい、高い技術やイノベーションを搭載する製品である。Find X3 Proの顕微鏡撮影は従来のカメラではできないことを表現するものと考えている。宝石など高級品を撮影して、細かいディテールを見ることが可能だ。また教育用途として、子供たちにマクロの世界を見てもらい、物の構造を知ってもらうという使い方もできる。今の時世なら手のひらの手洗い前、手洗い後を撮影して、それを子供に見せて手洗いの重要性を教える、といった使い道もある。ほかにも貝殻や蝶々の羽の表面など、大自然が生み出した奇跡のような美しい世界を顕微鏡なしで手軽に見られるだろう。
──Find X2 Proではペリスコープの望遠カメラを搭載し、最大60倍撮影が可能だった。Find X3 Proにはなぜペリスコープカメラを搭載しなかったのか
Rison Chen Find X2 Proのユーザー調査を行ったところ、望遠機能は5倍以下を主に使うという声が多かった。そこでFind X3 Proでは望遠機能は光学2倍とし、顕微鏡撮影など他の部分にリソースを振り分けた。
──ありがとうございました。
デザインもディスプレーもカメラも美しい「Find X3 Pro」。日本での投入が待ち遠しい限りだ。