Windows 10 Ver.21H1のプレビューがWindows Insider ProgramのBeta Channelで開始された。最初の配布は、OSビルド19043.833で、直前までBeta Channelで配布されていた、20H2の品質アップデートOSビルド19042.833とほぼ同じ番号だ。21H2の最終的なOSビルドはまだわからないが、少なくとも、最初のプレビュー版は、20H2と非常に近い関係にあると考えられる。
春のアップデートも段階的更新を採用
更新にかかる時間は短いくなるか
2019年の19H2(Windows 10 Ver.1909)から、Windows 10の秋のアップデートは、毎月の品質アップデートを利用して段階的に進められるようになっている。これをMicrosoftは「サービステクノロジー」による更新と呼んでいる。昨秋のアップデート20H2(Windows 10 Ver.20H2)も同様だったが、2019年・2020年の春のアップデートは、いわゆる「フルアップデート」であり、Windows自体をそっくり入れ替えるものだった。
フルアップデートは、実質的にはWindowsの再インストールである。ダウンロードしたイメージと既存のWindows 10インストールから、Windows Imaging形式(WIM)を作る。ここまではWindows 10のバックグラウンド処理として実行されるので、Windowsを使い続けることができる。その後、Windowsを終了させ、インストーラーがストレージ上のWindowsシステムファイルを作成したWIMファイルを使って書き換える。
その後、新しいWindowsを起動するが、このときに新規インストールと同じく、ハードウェアをスキャンして必要なデバイスドライバーを組み込んでいく。再度スキャンするのは、Windowsの変更とともにデバイスドライバーやドライバー階層なども変更になる可能性があるからだ。
Microsoftの資料によると、このデバイスのスキャンとドライバーの組み込みではドライバー側の都合により何回か再起動があり、一番時間が掛かる処理になっているという。Windows 10の初期では、WIMをWindowsを起動しない「オフライン」状態で作成していたため、アップデートに数時間かかることも普通だったが、現在では大半の処理をオンライン、しかもユーザーがログインしている間にできる。
しかし、Windowsのアップデートは最大限に負荷の重い仕事であり、CPU、メモリ、ストレージの性能に左右されやすい。簡単にいえば、非力なマシンほど時間がかかる。また、システム性能が高くても、たとえばバッテリでの動作中は、最大性能が出せないためにやはりアップデート時間は長くなる。
これに対して、19H2(Ver.1909)から導入されたサービステクノロジーによる機能アップデートでは、毎月のBアップデート(米国太平洋時間の第2火曜日の午前10時に配布されるアップデート)などで、アップデートを分散的にすすめている。
ただし新機能などは抑制された状態になっており、見た目は従来バージョンのまま。そして最後に「イネーブラー」と呼ばれるアップデートがインストールされることで新機能が有効になり、バージョンが切り替わるという仕組みだ。
そのつど有効にしてもいいのではと思うかもしれないが、毎月変更があると、ユーザーサポートは変更前と変更後の両方のユーザーを相手にする必要があり、さらに新機能の評価などの時間が取れないといった問題が出てしまう。このため、新機能などの情報は事前に流し、Windows Insider Programなどでプレビューを評価してもらいつつ、一般ユーザーに関しては、準備が完了するまで前のバージョンと同じものを使い続ける形を取っているわけだ。
21H1プレビュー版に短い時間でアップデート可能なのは
20H1または20H2からの場合
これまでの秋のアップデート(19H2、20H2)で、サービステクノロジーでのアップデートが可能だったのは、直前の春のバージョン(19H1または20H1)がインストールされているマシンだけだった。それ以前のWindows 10からのアップデートは、フルアップデートになっていた。これに対して、今回の21H1では20H1(Ver.2004)または20H2であればサービステクノロジーでのアップデートが可能になるという。
筆者の手元にあるBeta Channelに登録しているマシンでは、20H2であるOSビルド19042.844によるアップデートがなされた状態だが、ここに21H1の最初のプレビューである19043.844が配布された。OSビルド番号が1しか違わず、しかも、リリース後のアップデートを示す小数点以下の番号(レジストリの名称などからUBRと呼ばれる)は同じである。中身的に、この2つは非常に近いものは間違いなさそうだ。実際にこのアップデートでは、青い画面になっている時間は約7分と、毎月のアップデート並に短かった。この時間を計測したマシンは、CPUがCore i7-4650U(1.70GHz、2コア4スレッド)で8GBメモリと現在の視点からするとまずまず非力なマシンである。
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