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Windows Info 第262回

WSL2の2つの設定ファイル「.wslconfig」と「wsl.conf」

2021年02月14日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

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「.wslconfig」をもう少し深掘りする

 「.wslconfig」は、前述したようにWSL2の振る舞いを指定するためのファイルだ。WSL2というよりは、それを動かす「軽量ユーティリティ仮想マシン」の設定をするものと言った方がいいかもしれない。

 ファイルの構造としては、過去にWindowsでよく使われていたiniファイルに似ている。

「.wslconfig」は、レジストリ導入以前に利用されていたiniファイル形式によく似た構造を持つ。角カッコでセクション名を囲んで指定し、キーと設定値を"="で区切って1行に記述していく

 角カッコを使ったセクションの指定に続く行で、「パラメーター名=値」という行形式で設定を行う。パラメーター名としては、以下の表のようなものがある。

 表の後半にある2つの項目は、現時点では、Windows Insider ProgramのDev Channelで配布されているプレビュー版でのみ有効である。このファイルを書き換える前には、すべてのWSL2ディストリビューションを停止させておく必要がある。それには、

wsl.exe --shutdown

を実行する。

 また、ここでは、カーネルのパスなども指定できるため、その変更には注意が求められる。もっとも、このファイルはなくてもWSL2は起動するので、最悪の場合にはファイル自体を一旦削除すればいいだろう。

 実際に「.wslconfig」を作って動作を試してみた。この設定をする前に、メモリ状態を表示するfreeコマンドや/proc/cmdline(カーネル起動オプション)、/proc/cpuinfo(プロセッサ情報)を表示させ、「.wslconfig」を編集したあとの実行状態が下の画面だ。指定どおりにコア数やメモリ量が変化しており、カーネルの起動オプションも追加されている。

WSL2内でfreeコマンドなどで設定値を確認しているもの。「.wslconfig」で指定することで、メモリ量、プロセッサ数、カーネル起動オプションの追加などができる

「wsl.confファイル」では
ディストリビューション起動時の設定などを変えられる

 一方の「wsl.conf」は、wslディストリビューションごとの設定を記述する。この設定ファイルは、WSL当初からあり、WSL2だけでなくWSL1でも有効だ。このファイルは、WSLディストビューションのファイルシステム(DrvFs内)の/etc/ディレクトリにある。

 このファイルでは、ディストリビューション起動時の自動マウントやDrvFsのルートフォルダー、WSLの自動ログインユーザー名などを設定できる。キーなどを以下の表に示す。やはり構造はiniファイルに似ている。

 なお、このファイルはシステムの設定ファイルなので、書き換えにはroot権限が必要だ。たとえば、

sudo vi /etc/wsl.conf

などとして、管理者権限を使って編集する必要がある。読み出しは一般ユーザーでも可能なのだが、エディターでの編集後、書き込むことができない。

 こちらの設定は、WSLディストリビューションであるLinuxの挙動を変更するものなので、設定値もLinux様式だ。デフォルトのままでほとんど問題ないが、「[automount] 」セクションの「root」キーを使うと、WSL側から見えるwin32側ファイルシステム(DrvFs)のマウントパスを標準の「/mnt」から別の場所に変更することもできる。

 ただし、Linuxのマウントでは、存在しているディレクトリを指定する必要があるため、変更時には、あらかじめ該当のディレクトリを作成しておかないといけない。

 現在のDev Channelのプレビュー版では、WSLディストリビューションの起動時に自動実行するコマンドを指定することができる。「[boot]」セクションの「command」キーに起動したいコマンドを記述しておくと、該当のディストリビューションが起動したときに自動的にコマンドを起動できる(これを自動実行コマンドと表記する)。

 本来、こうした処理は、Linuxのinit.dなどがしていたが、クライアント利用を想定したWSLでは、init.dなどのデーモン(バックグラウンドで動作するプログラム、Windowsのサービスに相当するもの)起動などの仕組みは省かれている。しかし、WSL2になり、高度な利用が増えてきたため、こうした機能が追加されたようだ。

 自動実行コマンドは、停止中のWSLが起動したときのみ実行される。バックグラウンドでWSLが動作している間は、wsl.exeなどでWSLディストリビューションを起動しても、コマンドは実行されない。WSLは、接続しているセッションがなくなり、動作しているプログラムがなければ、一定時間後に停止するようになっている。

 終了までに遅延時間が設けられているのは、続けてWSLを起動するときの時間を短縮するためだろう。たとえば、コマンドラインのパイプラインでwsl.exeを使うと、Linuxコマンドを実行しては抜け、再度WSLを実行するというパターンになると考えられる。このような場合にコマンド実行時間を短縮するため、すぐにはプロセスを停止しないようになっていると思われる。

 実際に試してみたところ、この起動コマンドは、rootが実行しているようだ。

自動実行コマンドは、停止していたWSLディストリビューションが起動したときにのみ実行され、root権限を用いている

 ユーザーログイン時のコマンド実行には、bashなどのログインスクリプトも使えるが、実行はユーザー権限となり、自動実行コマンドとは挙動が変わる。このため、起動時に実行権限が問題になることはないと思われるが、うかつなコマンドを実行してしまうと、なんでもできてしまうので注意が必要だ。WSLは、Linuxマシンなどと違って、外部からの侵入の恐れはないが、変なコマンドを登録しないようにしたほうがいいだろう。

 「.wslconfig」と「wsl.conf」を使うことで、WSLの挙動を変更することが可能だ。WSLに関しては、設定項目が少ないこともあり、当面は、こうしたテキストファイルベースでの設定が続くと思われる。

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