デル・テクノロジーズは2020年11月19日、同社が今年7~8月にグローバル18カ国で実施した大/中規模企業調査「Digital Transformation Index 2020」について、日本単独での調査結果や考察も追加したものを発表した。日本でもデジタルトランスフォーメーション(DX)の「評価」段階以降に進んだ企業が約半数(50%)となった一方で、ほぼすべての企業が変革に向けた「障壁」を感じていることもわかった。
グローバルでは「導入」、日本でも「評価」段階の企業が大きく増加
Digital Transformation Index 2020は、2016年、2018年に続く3回目の実施となるグローバル調査。18カ国で12業種、4300社の大規模/中規模企業の経営層/マネージメント層を対象として、組織変革への取り組みなどに関するアンケートを行っている。グローバルで4300名が回答し、うち日本の回答者は200名。
まず、自社におけるDXの進捗/成熟度を5段階で評価した結果を過去2回と比較すると、グローバルでは「導入」段階の企業が大きく増え(39%)、「評価」段階より先に進んでいる企業が80%を超えている。一方で、日本では「評価」段階の企業が大きく増え(33%)、評価段階より先に進んだ企業が50%に達した。「遅ればせながら、日本でもDXに“点火”したと言える」(同社 最高技術責任者の黒田晴彦氏)。
2020年におけるDX加速について、グローバルでは80%、日本でも55%の企業が「加速している」と回答している。ただし「変革の困難な障壁に直面している」とも感じる企業がほぼすべて(グローバル94%、日本98%)であり、道のりの困難さも明らかになっている。
その障壁とは何か。具体的に尋ねた設問を見ると、グローバルでは「データプライバシーとセキュリティに対する不安」(31%)が最多。一方で、日本では「スキル/ノウハウの不足」「デジタル文化が未成熟」「脆弱なデジタルガバナンス/構造」など、「日本では人間の『意識』にかかわる課題が多く見えている」(黒田氏)という。
2020年に加速したDX施策については、グローバルでは上述の課題観を反映して「セキュリティの強化」(48%)がトップ。一方で、日本は「リモートワークの拡大」(46%)がトップだった。
今後1~3年間で投資対象と考えている領域についても、グローバルは「セキュリティ」(43%)がトップで、次に「データ管理ツール」(39%)が続く。日本では「人工知能(AI)」(27%)がトップ、次に「商業/産業用ロボット」(24%)が続いており、グローバルとの傾向の違いが見られる。
黒田氏は、グローバルの結果でAIよりもデータ管理ツールへの投資が多く検討されていることについて、「マシンラーニングの活用が進めば進むほど、『データをどう管理するか』ということが重要になってきているのではないか」との見解を示した。
鍵を握る「デジタルスキル/能力への投資」の優先順位を高めよ
なお同調査では、「業界横断型の知識共有」や「デジタルスキル/能力に対する投資」の実情についてもアンケートを行っている。それによると、グローバル平均では過去2回と比較して双方で増えているが、日本では前回比でいずれも減っている。スキル/能力への投資については、前述したDX阻害要因の上位に「スキル/ノウハウ不足」が挙がっていたことを考えると、やや矛盾した結果にも思える。
この結果について黒田氏は、グローバルと比べて日本はリモートワークに対する投資がこれまで進んでおらず、今年はコロナ禍を受けて緊急的に投資を振り向けたため、知識共有やスキル/能力への投資が一時的に減ったのではないかと分析する。そのうえで、日本企業の状況認識は適切にできており、今後は状況に応じて柔軟に取り組みや投資の優先順位付けをしていくことがポイントになるとまとめた。
「(デジタルの)スキルに投資をすると、一見遠回りに見えるが、それが次のビジネス成果を生む。調査に回答された方も、本当に必要なのはスキルであり、これを上げないといけないが投資できていないことはわかっている。したがって、リモートワークの充実化が終われば、スキルへの投資が増えるものと見ている」(黒田氏)
また黒田氏は、同じく日本企業の課題となっているデジタル文化の醸成について、「『文化』というとつかみ所がない。Dell Technologiesではコンサルティングのサービスを通じて、これを具体的にひとつひとつ整理し(文化醸成を)サポートしていく」と述べた。
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なお同説明会では、デル・テクノロジーズが保有するすべてのソリューションを“as-a-Service”として提供可能にする「Project APEX」の取り組みについても紹介がなされた。10月に開催された年次イベント「Dell Technologies World Digital Experience」で発表された、新しい戦略だ。
同社 ストレージプラットフォームソリューション事業本部 システム本部 ディレクターの森山輝彦氏は、Project APEXは今後数年にわたって段階的に進められる計画だと説明。また、ユーザーの調達/利用方式における「新たな選択肢」であり、従来型の購入方式も引き続き利用できると述べた。