11月10日に「Xbox Series X/S(XSX)」が、そして11月12日には「PlayStation 5(PS5)」が発売され、ゲーム業界にとって大きな動きのある1週間となった。
新しいコンシューマーゲーム機が2機種もこの時点で登場することに、どんな意義があるのか。そして、XSXとPS5はどれくらい売れるのか?
ゲーム業界を長年俯瞰で見続けている『ファミ通ゲーム白書』編集長の上床光信氏(角川アスキー総合研究所)に聞いた。
最新ゲーム機は、ID獲得のための最強ツール
―― 「PlayStation 5」と「Xbox Series X/S」、どちらもソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)とマイクロソフトにとっては、7年ぶりの新機種になります。いきなりですが、どれくらい売れるでしょうか?
上床 まず、日本国内での発売初週の販売台数は、以下のようになりました。
「PlayStation 5」本体 国内推定販売台数:11万8,085台
(集計期間:2020年11月12日~2020年11月15日の4日間)
「Xbox Series X/S」本体 国内推定販売台数:2万534台
(集計期間:2020年11月10日~2020年11月15日の6日間)
「PlayStation 4」(PS4)の初週販売台数は32万2083台(2014年2月22日~23日、ファミ通調べ)、「Xbox One」は2万3562台(2014年9月4日~9月7日、ファミ通調べ)でしたので、どちらも前機種の初週販売台数に及ばなかったことになります。
―― これは端的に、売れ行きが思わしくないということなのでしょうか?
上床 いいえ、国内の出荷数の問題です。どちらも予約はいっぱいなので、年末に向けては、出荷された数がそのまま販売数になります。
―― では、出荷が順調になされれば、販売台数はどんどん伸びていくと?
上床 前機種の国内での累計販売台数(11月8日時点)は、「PS4」が924万6,235台、「Xbox one」が11万4,617台です。これをどれくらいトレースするか、あるいは超えてくるかですが、日本では高い目標かもしれませんが、ワールドワイドではかなり売れるのではないかと考えています。もっとも、今後はどっちが何台売れたかというよりも、どれくらいIDを獲得できたかが勝負になります。
―― IDというのは?
上床 マイクロソフトの「Xbox Game Pass」、SIEの「PlayStation Plus」や「PlayStation Now」などの、ゲームサービスの利用者の数ですね。端末側ではなくクラウド側で動作するゲームを、Netflixなどの動画サービスと同じように、サブスクリプションモデルで提供するクラウドゲームの世界が、いよいよ到来しようとしています。クラウドゲームなら、スマホでもタブレットでも、PCでもプレイできます。
―― そうなると、コンシューマーゲーム機でなくてもよいとなりませんか?
上床 GoogleやFacebookも、クラウドゲームのサービスを始めていて、今後続々とゲームに関連するサブスクリプションサービスや、クラウド技術を使ったサービスが広がるでしょう。それに対して、SIEやマイクロソフトは今回、クラウドではないゲームもプレイできる、最高のゲーム環境を提供したわけです。つまり、PS5とXSXは、両者のゲームサービスの魅力を大きく高めることになります。
―― 各社がクラウドゲームのID獲得を競うなかで、コンシューマーゲーム機もあることが、より多くのユーザーを獲得するための武器になるということですね。