大洗発のECサイトARISE GIFTがオープン
茨城県東茨城郡大洗町を中心に事業を展開するハイド&ルークが、ECサイトARISE GIFTをオープンした。
大洗町の特産品や土産物を中心に取り揃えた、大洗発のECサイトだ。大洗町は観光スポットが多く、個人商店や、個人経営の宿泊施設が立ち並ぶ、レトロな街並みに魅力があることでも知られている。ARISE GIFTからは、個人商店の品物を購入できるだけでなく、地元の商業に関わる人の声もインタビュー形式で楽しむことができる。いわば、大洗の街並みをそのままECに置き換えたサイトである。
ARISE GIFTを運営するハイド&ルークの代表取締役社長 廣岡 祐次氏に、サイトの狙いと特色、新型コロナウイルス感染症にともなう大洗の状況について、広くインタビューした。
なぜ大洗で事業をするのか
ーー廣岡さんは大洗で初のコワーキングスペース「ARISE CO-WORKING」や大洗の特産品をリターンに設定したクラウドファンディングなど、これまでも大洗を中心とした事業を展開してきました。今回のARISE GIFTは、どのような趣旨のサイトでしょうか?
廣岡「そもそも、起業時から、このポータルサイトを作ることは構想していました。当初は、地元の商店街のサイト制作やリニューアルを行い、会社の運転資金をためながら、このサイトを制作して、町の情報発信をするという事業を計画していたんです。
ところが、思ったよりもその需要がないことに気づきました。というのも『Twitterなどを使って自分で情報発信をしているので、事足りている』という個人商店の方々が多かったんです。新しいサイトの構築にも当然費用がかかりますから、考え方を変えてクラウドファンディングに挑戦し、資金調達をしました。当初の予定より遅れましたが、プロジェクトは達成し、今回オープンできることになりました。
地元の特産品などを購入できるEC機能に、大洗の人たちの声をリアルに届ける、メディア的な役割を統合した、大洗発のポータルサイトです」
ーー新型コロナウイルスの感染拡大とも準備期間が重なっていると思いますが、サイトの仕様や構想に影響はありましたか?
廣岡「そこはすごく大きいですよ。大洗は、観光業が大きな収益源になっている街なんです。10月現在は、すこしずつ客足が戻ってきたようですが、外出自粛期間などは、ほとんど観光に訪れる人もおらず、商店街の売り上げも非常に厳しい状況でした。
いまも、厳しい状況であることには変わりないですが、大洗は都心から車ですぐに来られる範囲ということもあって、『遠くに旅行には行けないけど、車で行ける範囲の近場に出かけたい』というお客さんが来やすいですよね。そういう意味では、これからが大事な時期だと思います。
ARISE GIFTの役割も、『大洗の魅力を知ってもらう』を第一に考えていましたが、コロナの影響を受けて、個人商店の売り上げに貢献する方を主軸に考えるようになりました」
ーー観光都市は、新型コロナウイルスのダメージが特に大きいですからね。
廣岡「大洗だと、宿泊施設はもちろん、学校給食や地元の飲食店に食材を卸している業者も多いですから、自粛期間は本当に収益がゼロの事業者も多かったようです」
目標は20店舗100品、工芸品も視野
ーーARISE GIFTは、どのように収益化していく造りですか? 販売手数料をもらうとか?
廣岡「ARISE GIFTの商品は、すべてお店から卸してもらってるんです。商店の人からすると、卸先がひとつ増えたという状態ですね。お店にとっては、弊社に商品を下ろした段階でお金のやり取りが完結していて、シンプルです」
ーーなるほど。でも事業として考えると、在庫を抱えるリスクもありますよね。
廣岡「たくさんの商品を一度に弊社が買い取るわけではなく、注文が入った個数だけ店に取りにいく、という形を取っていまして、基本は弊社は在庫は持ちません。と、言いますか「持てません」というのが正しい表現でしょうか。
基本は商店の倉庫や店頭に置いてある在庫からラインナップさせて頂いています。そのような形で、弊社の規模感で回っていくように、いくつか工夫している部分はあります。その代わりではないですが、店舗の皆様は、通販における商品登録や写真撮影、発送業務の手間を省けるような仕組みになっています。
いずれにしても、いまの状況的にも、お店の負担にならないことが第一だと思っています。『通販をやってみたかったけど、やり方がわからない』という声も実際にいただいているので、そういった 商店さんにとっては、通常の卸先に卸す感覚で、通販に参入できるというメリットもあると思います」
ーー出品の交渉も廣岡さんが担当しているんですか?
廣岡「そうです。クラウドファンディングで一度皆さんにお話しに行っているので、『ああ、あのプロジェクトをやっていた人ですか!』と好意的に迎えてくれる方が多く、ありがたかったですね」
大洗の魅力をブランド化して発信したい
ーー新型コロナウイルス感染症の拡大で、世の中の状況もどんどん変化しています。その中で、今後、ハイド&ルークとして、またはARISE GIFTとして、どのようなことに取り組んでいきたいですか?
廣岡「まず近い目線では、コロナ禍で売り上げが壊滅的だったところも多く、その分を補填しなければいけない状況の事業者が多いので、そこに貢献していくのが第一です。状況はこれからも変わっていくと思いますし、実際に運営してみて、新たに発見できることもたくさんあると思うんです。
少し先の計画では、商品を拡充して、売り上げの貢献だけでなく、街の魅力を総合的に伝えられるサイトに成長させていくことですね。いまのところ、大洗まいわい市場、吉田屋、お弁当の万年屋、にんべんいち、山戸呉服店、藤乃屋、飯岡屋水産、サザコーヒーの8業者さんと、弊社のオリジナル商品を展開していますが、今後も拡充していく予定です。
当面の目標は、20店舗、100店の出品。大洗の近隣の地区の商品も積極的に取り扱っていきたいですね。笠間焼など、茨城の工芸品も取り扱うと、より幅が広がっていくのではと考えています。
それぞれの商店でも自社でECサイトを展開していたりするのですが、それぞれに発送時期や発送方法も異なっていたりするので、ARISE GIFTで購入してもらえば、複数のお店の違った商品が一度に届くというメリットもあります。大洗の魅力をワンパッケージで楽しんでいただけるのが、お客様にとってはメリットになると思います」
ーーECサイトを運営されるのは、廣岡さんにとっても初めてのことですか?
廣岡「そうです、そうです。まったくの素人で。ようやくオープンできましたが、まずはECサイトってどんな仕組みで動いているのかとか、どのような免許や許可が必要なのかとか、ぜんぶ調べるところからのスタートでした。
当初はお酒も売りたいと思っていて、酒類販売業免許の取得を目指していたのですが、いざ取得しに行ったら、条件を満たしておらず、申請できなかったりとか。色々と苦労しました。酒類販売業免許の部分がクリアできれば、オリジナルのクラフトビールを作ろうとしている地元の酒蔵さんもありますので、そういうところと協業して商品を作って販売するとか、さらに幅は広げられるんですけどね」
ーーこのサイトから、「これが大洗の名物だ!」というものが生まれるといいですよね。
廣岡「そこが私も課題なのかなと思っているんですよね。地元の観光協会の会長さんや、自治体の担当者さんなどとも話す機会が多いですが、『いいものは揃っているのに、認知度が思うように広がらない』ということは皆さんおっしゃっていて。このあたりの人は、すごく謙虚というか自虐的というか、いいものがあっても、『こんなにいいものがあるんだよ!』と自慢はしたくないというところがあるのかなと思っているところです。
私は、アニメの『ガールズ&パンツァー』を始め、アニメ作品の宣伝広報に長くたずさわっていたこともあるのですが、何かを伝える・流行らせるって、狙って出来るものじゃないと常々思っています。その中で、良い物の「良い部分」をしっかり伝え、価値を上げて行く。つまりは『ブランド化』が必要だと思っています。大洗には、すばらしい物産や文化が残っているので、ARISE GIFT通して様々な商品を『ブランド化』するお手伝いができれば、結果的に地域の売り上げ向上に貢献できると考えています」