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若き才能がグローバルで“More Than Robots”を目指す

中高生ロボコンの頂点「FRC」を目指すSAKURA Tempestaの仲間作り

2020年10月07日 09時00分更新

文● 大谷イビサ 編集●ASCII 写真提供●SAKURA Tempesta

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 ロボットを使った競技大会であるロボットコンテスト(通称、ロボコン)は、海外でも広く行なわれている。その中高生向けグローバル大会の頂点とも言える「FIRST Robotics Competition」にチャレンジするのが、千葉工業大学津田沼キャンパスを拠点とする「SAKURA Tempesta」だ。4人のメンバーにFRCの魅力やFRCで求められるチームや仲間作り、そして強みのアウトリーチ活動について聞いた。

ロボット製作中のメンバー

ロボコンの頂点「FRC」でいきなり世界大会に出場したルーキー

 中高生のメンバーを中心に構成されたロボコンチーム「SAKURA Tempesta」は、34カ国・9万4000人の中高生が参加する世界最大級のロボット競技会「FIRST Robotics Competition(通称FRC)」に参加している。チームが立ち上がったのは2017年6月。ミネソタ州ミネアポリス市の「FRC Team 2500 Herobotics」にてメンバーとして活動していた中嶋 花音さんによって創設され、2018年のFRCからエントリーしている。まずはSAKURA Tempestaが挑むFRCについて説明しておこう。

 20年以上の歴史を持つFRCはいわゆるロボコンの頂点とも言えるグローバル大会で、FIRST (For Inspiration and Recognition of Science and Technology)という米国のNPOが運営している。毎年、社会情勢や技術課題にあわせたテーマでルールが用意され、ロボコンのプロセスを通して、STEM(Science、Technology、Engineering、Mathematics)教育を提供していくという思想が強く根付いている。

 ルールは毎年1月に発表され、そこから各チームのプロジェクトが本格的にスタートする。ルールブックの翻訳や解釈を行ない、主催者から送られてくるロボットのコアユニットを元に、重さ50~60kg、高さ1mほどのロボットの製作に入る。ルールの発表から予選大会までは約2ヶ月間しかないので、設計から制作までをチームで効率的に行なわなければ、出場すらおぼつかない。3チームが合同チームを組んで競技するのも特徴で、予選を勝ち抜いたチームは4月の世界大会に参加することが可能になる。

 SAKURA Tempestaが注目を集めたのは、チーム結成1年目のルーキーでありながら、ハワイで行なわれた地区大会を勝ち抜き、いきなりデトロイトの世界大会に出場してしまったという点だ。ハワイではチームキャプテンの中嶋 花音さんはFRCファウンダーのディーン・ケーメン氏を冠した「FIRST Dean’s List Finalist Award」も受賞。世界大会での予選突破はならなかったが、2019年も2年連続で世界大会に出場し、前年に比べて順位も上げた。FRCを目指すロボコンチームは国内でも3チームあるが、2年連続で世界大会に出場した実力派チームというわけだ。

2019年の世界大会でのショット

資金調達まで自ら行なうFRCチームはスタートアップのような組織

 SAKURA Tempestaの立崎さんは小学校3年生のときから、設計、制作、回路、プログラミングまで全部一人でやってきた実力派で、チームに入ってからはロボットの設計を担当している。「中1の時に個人で私の身長ほどの大きさのロボットを製作する機会があったのですが、その時に大型のロボットが自分に合っていると感じ、チームへの参加を決めました。個人では大型のロボットを作り続けることは出来ないので、とても良い経験が出来ています」と語る。

 2019年は、宇宙基地を模した試合会場でロボットを遠隔操作し、ボールをゴールに入れたり、パネルを規定の位置にはめ込んだり、約50cmの台にロボットを登らせることで、ポイントが加算されるという内容だった。「約50cmの台に重さが60㎏もあるロボットを登らせるのは大変で、機構を決定するのに苦労した」と立崎さんは語る。

製作したロボットのテスト

 SAKURA Tempestaを支えるのは、立崎さんのようなロボットエンジニアだけではない。“More Than Robots”というキャッチを掲げるFRCは、単なるロボット競技会にとどまらず、資金調達まで必要となる。大会への参加費や渡航費、滞在費など250万円近く資金はすべてチームが負担するため、スポンサーや材料のサプライヤー探し、クラウドファウンディングなども自前で行わなければならない。そのため、チーム運営はロボット製作ができるメンバーだけでは難しく、翻訳や対外交渉、デザイン、広報などそれぞれスタートアップのようなチームを構成する必要がある。

 チームリーダーの高木さんは、創設者の中嶋さんが1年目の大会の実績を学校で表彰されているのを見て、参加したという。「周りでロボットを作っている友達はいなかったけど、プログラミングには興味もあったので」とのことで、現在はチームの統括する役割を担っている。「メンバーのやる気があって、向上心が高い。自分も刺激になっています」と語る。また、同じくチームリーダーの中村さんは「女性がSTEM教育に携われるワークショップに参加して、興味を持ってチームに参加しました」とのことで、広報活動に携わっている。特に創設者が女性ということもあり、立崎さんのような女性メンバーが多いのはSAKURA Tempestaの特徴だ。スタート当初は半分以上が女性で、今回話を聞いたメンバーも4人中3人が女性だった。

シーズンオフのアウトリーチ活動が強み

 こうした多彩なメンバーによる「アウトリーチ活動」という対外活動はSAKURA Tempestaの大きな強みだ。

 アウトリーチ活動はSTEM教育普及の活動のほか、地域貢献やボランティアなども含まれており、シーズンオフに行なっている。「ロボットを作っているのは1~3月だけなので、その他はこうしたアウトリーチ活動を展開しています。具体的には女子向けのワークショップをスポンサーと共同企画したり、Maker Faire Tokyoや千葉市のイベント、メンバーが通う学校の文化祭などに出展しています」(高木さん)。

 こうしたアウトリーチ活動はFRCからも高く評価されており、2019年はCharman's AwardというFRCで最高権威とされる賞を受賞している。もともとFRCに女性の参加者が少ないため、女性向けのアウトリーチ活動自体が珍しく、評価も高いという。

2020年の完成披露会の模様

 スポンサーに関しても、多彩な企業・団体が資金や製品を提供しており、SAKURA Tempestaの活動を支援している。IT系では、オートデスク、ヌーラボ、ユミルリンク、インターネットイニシアティブなどがスポンサーとして名を連ねており、さくらインターネットはサーバーやCADのアプリを提供している。

 プログラマーの寺崎さんはチームのブログやイベントサイト、メールサーバーなどをさくらのレンタルサーバーで運営している。アウトリーチ活動を対外的にアピールしたり、スポンサーに活動を紹介するWebサイトはSAKURA Tempestaにとってきわめて重要。「もともとはメンターのサーバーに頼りきりでした。私自身がさくらインターネットのユーザーで、値段や使い勝手が気に入っていたこともあり、さくらへの支援を依頼したところ、快諾を得ました」と寺崎さんは語る。

 こうした用途の1つがGPUをサービスとして利用できる「高火力コンピューティング」を用いたAIの分野だ。寺崎氏は、「今はロボットによるボールの回収は人手の操作でやっていますが、AIを使えばボールを学習させ、自動的に照準を合わせて、ドライバーをサポートすることができるはず」と語る。実際、近年の大会の上位チームはAIを導入し始めており、こうした機械学習を支える高火力コンピューティングには高い期待を寄せている。

FRCの楽しさを伝えつつ、次はロボット競技でも上位へ

 2020年のFRCはコロナウイルスの影響で残念ながら中止となったが、書類審査で提出したアウトリーチ活動が評価され、北京大会でのChairman’s Awardを2年連続して受賞している。とはいえ、ロボコンチームとしては残念な1年になったのは間違いない。中高生向けのロボコン大会ということで18歳という年齢制限があるため、試合に臨めなかった悔しさはひとしおだろう。

 今後もSAKURA TempestaはFRCの楽しさを今後も広げ、仲間を増やしていくという。チームの高木さんは「普通のロボコンは競技で勝つことを目的にするが、FRCはロボットだけではじゃないので、多くの人に興味を持ってほしい」、中嶋さんは「資金集めや広報、チームのTシャツやロゴのデザイン、どんなことでもチームにプラスになる役割があるし、学年や学校ごとの差もない。来期は女子メンバーが少なくなるので、ぜひ参加してほしい」とアピール。立崎さんも「イベント運営や交渉など社会に出たときにやることを体験できるし、海外メンバーと協力して戦うので、世界も広がる」と参加した感想を語る。

 次の目標はロボット競技で順位をあげること。「今まではアウトリーチ活動は評価されてきたが、今後はロボット競技でもいい成績を上げていきたい」と高木さんは次への抱負を語る。

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