いまさらながら扱いにくい本体サイズ
これは今に始まったことではなく、特に27インチのiMacが最初に登場した時からそうなのだが、27インチiMacの最大の欠点は、全体のサイズが大き過ぎることだろう。そんなこと、27インチサイズのディスプレーを内蔵しているのだから当たり前だと思われるかもしれないが、必ずしもそうとは言えない。27〜28インチサイズの単体ディスプレーでも、設置方法に気をつければ、iMacよりもずっとコンパクトに無理なく使うことができる。iMacには、そうした使い方ができない欠点があるのだ。
その根本的な原因となっているのが、スタンドの高さが調整できず、しかもその位置が高過ぎること。その結果、本体最上部の高さは仕様上で516mm、実測では520mmほどになる。ここで問題となるのがiMacの前に座ったユーザーの目の高さと、画面の上端との位置関係だ。パソコンなどの画面と向き合う、いわゆるVDT作業では、画面の上端が目の高さよりも低くなるように設置すべきとされている。そうしないと、常に画面を見上げるような姿勢となり、首が疲れやすくなってしまう。
疲れるだけなら、休憩すればいいのかもしれないが、無理な姿勢で日常的に作業していると、最悪の場合には頚椎ヘルニアなどを発症し、非常に苦しむことになる。
一般的な日本人の体格のユーザーの場合、iMacの27インチモデルの画面の上端が自分の目よりも下になるようにするためには、椅子の座面をかなり高く調整する必要があるだろう。もちろんiMacを乗せるテーブルの高さにもよるが、一般的な作業用デスクの場合、椅子の高さの調整範囲を超えてしまうこともある。テーブルの高さを低くすれば、標準的な椅子の高さでも条件を満たすことが可能だが、それではテーブルに置いたキーボードやマウス、トラックパッドの位置が低くなってしまう。すると、こんどは手首を曲げたままタイプしたり、マウスやトラックパッドを操作することになり、手根管症候群を発症する危険が高まってしまう。
スタンドが高いのが問題なら、VESAマウントタイプのiMacを購入すれば良いのではないかと思われるだろう。VESAマウントタイプは、量販店では入手できない可能性が高いが、アップルストアであれば各標準モデルに対して+4000円で選択することができる。それを高さ調整可能なVESAアームに取り付ければ、状況は多少緩和される。
仮に本体の底面をテーブルに付くように設置すれば、上端の高さは465mmほどまで下げられる。ただし、本体底面には空冷ファンの吹き出し口があるので、少しだけでも隙間を空ける必要がある。本体の上端の高さは、最低でも470mmにはなるだろう。
VESAマウントを選択しても、画面の位置を十分に下げることのできない理由は、ベゼルの幅が広いからだ。まず実際に映像が表示されている液晶ディスプレーの端から本体の外縁までは、左右の辺と上辺で、いずれも実測で約27mmある。これは、最近のディスプレーとしてはかなり広い方で、どうしてこんなに必要なのかという疑問もわく。しかし、これら左右、そして上辺のベゼル幅は、本体の高さ調整の制限とは直接関係ない。
問題はディスプレー下辺のベゼル幅だ。黒く塗りつぶされた純粋なディスプレー部分のベゼルとしては25mmだが、その下のiMac本体のアルミ部分の高さが60mmもある。合計で85mmだ。最近の27〜28インチクラスの一般的な液晶ディスプレー製品でも、下辺のベゼル幅はせいぜい20mm程度に収まっている。下面に空冷用の通気口があるわけでもないので、その気になればディスプレー下面をほぼぴったりテーブルに触れるように設置することも可能だ。
iMacのベゼルの幅が広いのも、ディスプレーの下部に「本体」がはみ出しているのも、多分にiMacとしての伝統的なデザインを重視しているからのように思われる。それは、平均的に日本人よりもかなり体格の大きなアメリカ人を基準に設計されたものなので、いつまで経ってもここで書いたような問題が認識されることはないのだろう。27インチが大きすぎるならば、21.5インチのiMacがあるではないかと思われるだろう。確かに21.5インチであれば、全体の高さも低く、平均的な日本人の体格でも扱いやすい。
ただし、今どきデスクトップで21.5インチというのも画面が狭い感じがするし、CTOオプションで可能なカスタマイズの幅を考えても、似たような外観を持ちながら、中身は27インチモデルとは別のマシンと考えたほうが良いように思う。代わりのマシンとはなり難い。
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