最新の高性能XT CPUでも確かな静音性を確認!
Ryzen 9 3900XT搭載でアイドル時はほぼ無音(!?)の「Silent-Master NEO B550A」
2020年07月28日 19時00分更新
静音性の高さは、厳選されたパーツとその組み方にある!
「Silent-Master NEO B550A」のもう1つの騒音対策、つまり、騒音そのものを小さくする工夫も見ていこう。
一番の発熱源であり、最も騒音が大きくなりやすいのがCPUクーラー。静音というと水冷クーラーが思い浮かぶが、実は必ずしもそうとは限らない。
水冷クーラーは、CPUから出た熱を液体へと移動。温度の高くなった液体をポンプでラジエーターへ送り込み、ファンで冷却することでCPUを冷やしている。液体を循環させるために常時ポンプが動作していること、また、ラジエーターでの冷却は常に行なわれるため、低回転とはいえラジエーターファンも常時動作している。低負荷時でもある程度の騒音が出てしまうわけだ。
もちろん、高負荷が続く状態では空冷よりも騒音が抑えられるとはいえ、PCを利用している間中ずっと高負荷が続くというのは、あまりにも特殊な利用方法だ。多くの人は、ブラウザーやオフィスソフトを使う、音楽や動画を楽しむといった負荷の低い用途で使っている時間の方が長いだろう。
この点を考慮し、「Silent-Master NEO B550A」では空冷クーラーであるNoctua製の「NH-U12S」を採用。高負荷が続くような状態ではさすがに騒音は大きくなっていくが、一般用途であれば、無音かと思うほどの静音性を実現している。
また、CPUクーラーの背面に見えるケースファンには、同じくNoctua製の「NF-S12A FLX」を装備。CPUクーラーから放出された熱風をすぐにケース外へと排出できる構成になっている。
CPUクーラー、そして吸気・排気ファンのすべてがNoctua製になっているのは、サイコムのこだわり。十分な風量がありながら静音性に優れているだけに、静音PC用としては最適なファンといえる。
こだわりといえば、ファンの配置にもその工夫がみられる。PC内部を側面から見てみよう。
前面の吸気ファンで取り込まれた冷たい外気はビデオカードとCPUクーラーを冷やし、そして熱風はそのまま背面から排出されるというエアフローになっている。写真でいえば、右下から緩やかに左上方向へと空気が流れる。熱は上部に溜まりやすいことを考慮すると、CPUクーラーの高さよりも若干上に背面の排気ファンが配置されているというのが絶妙だ。
また、この内部写真からもわかる通り、ケース内は非常にすっきりとしている。不要なケーブルはすべて裏配線にしているため、空気の流れを阻害するジャマなケーブルが一切ない状態だ。こういった組み立ての腕の良さも、静音PCの安定動作を手助けしているのは間違いない。
低負荷時の騒音を低減させる工夫はCPUクーラーだけでなく、ビデオカードにもある。今回の構成で搭載されていたビデオカードは、GPUの温度が60度以下であればファンが完全にストップするという、セミファンレス仕様。つまり、グラフィック性能が必要ない用途であれば、騒音がゼロになるわけだ。
これ以外にも、標準電源の「CoolerMaster V650 Gold」もセミファンレス動作が可能な仕様であるほか、ストレージにSSDを採用し、こちらも騒音が出ないようになっている。
まとめると、常時回転して騒音の出るファンは3つあるものの、すべてNoctua製の静音ファンを採用。また、ビデオカードと電源は、低負荷時にファンの回転が止まるセミファンレス仕様にすることで、騒音をゼロにすることが可能。
こういったパーツの選定で、理想的な静音PCとなるよう構成されているのが「Silent-Master NEO B550A」の強みだ。
PCとしての基本性能をベンチマークソフトでチェック
ここまで静音PCとしての特長を見てきたが、やはり気になるのがその性能。CPUは「Ryzen 9 3900XT」、GPUは「Radeon RX 5700 XT」というAMDコンビを搭載しているこだわり構成だけに、知りたくなってくる。
とくに気になるのが、静音性のために性能が犠牲になっていないかという点だ。冷却性能が足りなければ性能を発揮しきれないだけに、いくら高性能なCPUやGPUを搭載していても意味がない。まずは基本的なベンチマークソフトで性能をチェックし、十分な性能が出ているのかを確認していこう。
なお「Ryzen 9 3900XT」は、既存の「Ryzen 9 3900X」と基本スペックは同じで、最大ブーストクロックが4.6GHzから4.7GHzへ引き上げられているという点が異なる。
ライター加藤勝明氏による詳細なレビューがすでに公開されているので、気になる人はそちらも合わせて読んでみて欲しい。ここでは、このレビュー記事内のスコアと比べることで、十分な性能が発揮できているのかを比較しよう。
CPU性能を測るベンチソフトとして使用したのは、定番の「CINEBENCH R20」。CGのレンダリング速度からCPU性能を数値化してくれるもので、すべてのコアを使った性能が計れるため、CPUの最大性能を比較するのに向いたベンチソフトだ。
結果は見ての通りで、マルチスレッドの値が7173pts。レビュー記事のスコアを見ると7268ptsとなっていたので、若干数値が低くなっているものの、ほぼ同等の性能が出ているといえるだろう。シングルスレッドでは531ptsで、こちらもレビュー記事のスコアである538ptsとほぼ同等だ。
ベンチの結果はマザーボードやメモリーなど、CPU以外の環境の違いによっても多少上下する。スコアに差があるといっても1%ちょっと程度のわずかな差しかなく、冷却性能が足りていないと不安になるような違いではない。静音PCとしては、かなり健闘しているといっていいスコアだ。
グラフィック性能も見ていこう。Radeon RX 5700 XTは7nmプロセスで製造されたGPUで、ゲームによってはGeForce RTX 2070をも超える実力をもつ。こちらの実力は、定番の「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITION ベンチマーク」で見てみることにしよう。
ちなみに設定は、画質は「高品質」、解像度は「1920×1080」、表示は「フルスクリーン」にしている。
ベンチの評価は「快適」。スコアが9000以上なら「とても快適」になるが、快適といっても成績は上位の方だ。重量級のゲームでも、フルHDでしっかりと遊べるだけの実力があるのは間違いない。
過去のデータを当たってみたところ、CPUにRyzen 9 3900X、GPUにGeForce RTX 2060を搭載した場合で、7943というスコアになっていた。このベンチマークはNVIDIAのGPUが有利になりやすいのだが、それにもかかわらず上回ったことになる。
条件が全く同じではないためあくまで参考だが、Radeon RX 5700 XTの実力は、GeForce RTX 2060からGeForce RTX 2070の間くらいはありそうだ。多くのゲーミングPCがこのGPUを搭載していることからも、今時のゲームを楽しむにはRadeon RX 5700 XTでまったく問題ないといえる。