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小野員裕「魂のラーメン外伝」 第11回

シンプルでキリッとした醤油ラーメンが食べたいならこの店 さんかく(東京・目白)

2020年06月16日 12時00分更新

文● 小野員裕 編集● ラーメンWalker

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 JR山手線「目白駅」の改札を出て左手、交番脇の狭い階段を下ると三叉路、その真ん中の勾配を10メートルほど上ると、住宅街にぽつんと佇む小料理屋風情の「さんかく」が姿を見せる。ここは紛れもなくラーメン専門店だ。

 ご夫婦で切り盛りしている店内は、L字型のカウンター9席、4人席1卓。内装は木調の色合いに統一され、アンティークな水屋や薪ストーブ、赤電話、大型ラジオなどの調度品が静かにデコレートされている。

 昨今、トリプルスープなど懲りすぎているラーメン専門店が闊歩するなか、シンプルに醤油味のキリっとエッジの効いたラーメン屋はないものかと悩んでいる最中、ここのラーメンに出合った。そのラーメンを味わった時、「あーこれこれ、余計な小細工がされていないラーメンらしいラーメンだな……」と感慨に耽ってしまった。

 スープは豚骨2種、鶏2種、ほんの僅かな魚介の干物に香味野菜。それを寸胴で沸騰させずに旨味を抽出させた中華料理で言う清湯スープ。

 中太平打ち手揉み麺のツルンとモチモチとした喉越し、嫌味な味付けがされていない、ほどよく脂のまわった肩ロースの焼豚、余計な味がついていない歯ごたえの残ったメンマ、長ネギ、色鮮やかな万能ネギと潔い絵姿だ。その深いスープの旨味、具のバランスはお見事、実に旨い。丁寧な仕込みがうかがえる。

 この「さんかく」は元々新宿大ガード脇の「思い出横丁」、通称「しょんべん横丁」に戦後間もなくからあった店だ。記憶に残っていると思うが、20年ほど前にこの一帯が大火事になり、その被害をこうむり焼け出されてしまった。

 ご主人の菅原仁氏は父のもとで若いころから修業を積んでいたそうだ。

 「あの火事から、親父は体を壊してしまってラーメン屋を再びやろうとは思っていなかったんです。でも焼け跡に馴染みのお客さんがメッセージを残していってくれることが度重なって、こんなに応援してくれるんだったら、それじゃ俺がやるしかないかなって感じで、昔のお客さんにお礼をしようと奮起したんですよ。味をもっと進化させるために方々のラーメン屋を訪ねて研究しましてね、でやっとここに再開させたんです」 とそんな苦労の末に完成したラーメン、昔の馴染み客に恩返しが叶ったのだ。

 おすすめは「ワンタン麺」。

 実に食欲をそそるビジュアル。旨味の深い醤油味の清湯スープ。ちょい硬質な縮れ太麺、肩ロースの焼豚、余計な味付けがされていないメンマの歯ごたえも抜群だ。また肉餡タップリのチュルンとしたワンタンも実に美味。

 「餃子」はカリっとモチモチ。

 野菜と肉のバランスが丁度いい逸品だ。ランチのサービスはおにぎりなどもある(なくなり次第終了)。

 キリっとした醤油ラーメンが恋しくなったらこの店に限るね。

 ※新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止策により、営業日・営業時間・営業形態などが変更になる場合があります。

〈店舗データ〉
【住所】東京都豊島区目白3–2–14 電話03–3565–3300
【営業】11時30分~15時 金・土11時30分~15時 17時30分~20時
【休日】日・祝
【アクセス】JR山手線「目白駅」から徒歩2分
※注意事項:店内写真撮影禁止、子供連れはご遠慮下さい

小野員裕 Kazuhiro Ono (大衆料理研究家)

 17歳からカレーの食べ歩きをスタート。以降、大衆料理研究家として早い時期からジャンルを問わず各メディアで情報発信。著書「魂のラーメン(プレジデント社)」はラーメンファンのみならず食に関わる多くの評論家やブロガーにも多大な影響を与えた。現在も1日1軒は食べ歩きの日々。

百麺人(https://ramen.walkerplus.com/hyakumenjin/

本人ブログ https://onochan.jp/

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