新型コロナウイルスへの対応として、2020年4月、医療関係者を中心に急遽開催されたオンラインでのニーズソンがあった。主催者の声とともに、「感染対策に関するニーズ」をいかに回収して現場に生かすのか、そのレポートをお届けする。
NPO法人まもるをまもるは4月18日~19日に、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の拡大を受けて、オンラインで「コロナ対策ニーズソン」を開催した。
ニーズソンには医療関係者が約80名、企業から約120名の応募があり、2日間でそれぞれ約100名ずつの参加者に加え、運営スタッフとしてコメンテーターやメンターが約10名参加した。
初日は医師や看護師などさまざまな医療従事者から現場のニーズを聞き、それを元に提案するアイデアを15のチームに分かれて検討した。(初日の様子を紹介した前編はこちら)
各発表内容は2分間の動画にまとめられ、2日目に評価が高かった上位のアイデアが紹介された。
患者側をシールドする感染防止策とAIによるサポート
1位に選ばれたチーム「ムダなシゴト減らし隊」は、医療器具の消毒や防護対策に時間が取られてしまい、本来の業務に影響が出ているという臨床現場の課題に着目し、感染防止を物理的に遮断するという視点から保育器のようなシールドカプセルを作って患者を治療できるようにするというアイデアを提案した。患者側の対策でPPE(個人用防護具)不足や着脱時の負担を軽減し、病院全体の汚染も減らすことができ、患者の呼吸器マスクがはずれていても防護服を着なければならないので、すぐに対応できないという問題にも対応できる可能性がある。
アイデアに対し審査員からは「完全にシールドしなくても、手だけ入れて作業できるような特殊な素材、カーテンで覆う方法はどうか」「キャンプ用品を使った簡易の陰圧室を作ったり、HEPAフィルターで対応できないか」「クリーンルームを製造している半導体メーカーにノウハウを提供してもらえないか」といったコメントが次々出された。
もうひとつ、電話等の問い合わせによる時間とメンタルの負担を減らすために、アプリやAIを活用した無人受付・対応を作るというアイデアも出された。過去に蓄積されたデータとAIを組み合わせて回答が得られ、医療従事者はボットの結果を元に適切な対応ができるというもので、筑波大学など一部で対応が始まっている。ボットサービスの利用経験がある審査員からは「AIは回答が早いだけでなく癒しの効果も得られるので今後は広がるのではないか」といったコメントが寄せられた。
医療従事者を追い込まない情報を共有する場を作る
2位に選ばれたチーム「危機スタンス2.0 ~コロナ危機を乗り越える~」は、人材離職の危機と医療資材不足という在宅医療が抱える危機に着目した。横のつながりが薄いことから、医療現場の間で写真や画像を用いてベストプラティクスを共有したり、対話ができるプラットフォームづくりを提案した。
医療従事者が家族を気づかって距離をとりつつもバーチャルに会える状況を求めていることから、フィジカルディスタンシング&ソーシャルコネクティングをテーマに、物理的に離れていてもつながりを持てる機会の必要性は高いと見られている。気持ちを吐き出す前にまずは医療従事者が自らを追い込まない、明日からがんばれる勇気をもらえるやさしい情報を提供する場を提供する方法として、「コロナ100人会議」といった医療従事者以外も参加できるオンラインイベントの継続開催も提案された。
不足する医療素材を寄付で集める
3位に選ばれたチーム「CLEAR HEART PROJECT」は、海外からの輸入に頼っているため不足がちな医療品の素材として、家やオフィスで余っているクリアファイルやプラ板を寄付してもらう仕組みを提案した。福祉施設やスーパーなどを回収場所とし、回収用ボックスの作り方もあわせて提供する。誰にもできて明日から取り組める簡単な仕組みで、ほかの素材にも応用できるという。
一方で、不特定の人が触ったものは使うのは厳しいといった医療ならではのハードルがあり、素材が足りないのはエンドユーザーの話で製造現場の課題解決とは別であるという意見もあったが、届けるより身近で作るノウハウを提供したり、届ける前に殺菌する仕組みを加えることは可能ではないか、というコメントにつながった。
匿名で利用できるオンラインスナックでメンタルをケアする
4位には、医療従事者に対する心のケアが少なく、気軽に話ができないことにフォーカスした「Zoomオンラインスナック」というアイデアが選ばれた。Zoomを利用した匿名で気軽に参加できる「スナック幸子」も多くから賛同が寄せられ、医療従事者のメンタルケアがいかに必要なのかが浮き彫りにされた。バーチャルの特性を活かし、テストとしてアプリを使って女装をしたところ雰囲気が和らぐという効果も。利用料は投げ銭やQRコードでも可能なことから、試験的に運用してみてはどうかという意見も出された。