ミキラボ　子どもと一緒に楽しむ3分科学 第38回

外出自粛中に試してほしい 子どもと家でできる大気圧の実験

台所のボウルがくっついて離れない!?

　火が消えないうちに、さきほどのステンレスボウルの上に、もう1つのステンレスボウルを重ねます。

火が消えないうちに、もう1つのステンレスボウルを重ねる

　重ねたステンレスボウルを、水を入れた桶やバケツの中に沈めて冷やします。このとき、火でステンレスボウルの側面が熱くなることがあります。ステンレスボウルを持ち上げる際は、ふちを持つようにしてください。

重ねたステンレスボウルを、水を入れた桶やバケツの中に沈めて冷やす

　ステンレスボウルの側面が触れるようになるぐらいまで水で冷やしたら、重なったステンレスボウルを持って引っ張ります。ステンレスボウル同士を思いきり離そうとしても、なかなか離れません。

ステンレスボウルを思いきり離そうとしても、なかなか離れません

成人女性がぶら下がっても離れない！

　いったいどれくらいの力でくっついているのでしょうか？　確かめるために、サイエンスショーではこんな実験をしています。

成人女性がぶらさがってもステンレスボウル同士は離れない

　同じ実験でくっついたステンレスボウルをぶら下がり健康器に吊るし、成人女性の私が全体重をかけてぶら下がっても、なんとまったく離れないのです！

なぜステンレスボウル同士は離れないの？

　今回の実験では、1つのステンレスボウルの中でティッシュペーパーに火をつけ、もう1つのステンレスボウルをかぶせて冷やすだけで、2つのステンレスボウルがくっついて離れなくなりました。なぜなのでしょうか？

　ステンレスボウル2つをただ重ねるだけでは、ステンレスボウルの外側からかかる大気圧と、内側からかかる圧力は同じ大きさなので、引っ張ると簡単に離れます。

　一方で、ステンレスボウルの中でティッシュペーパーを燃やしたまま、別のステンレスボウルをかぶせて密閉すると、ステンレスボウル内の空気は少なくなります。ステンレスボウルを冷水につけて中の空気を冷やすと、ステンレスボウル内の空気の圧力は小さくなります。ステンレスボウルの外側の大気圧よりも、内側の圧力が小さくなるので、外側の大気圧に押されてステンレスボウルが離れなくなるのです。

くっついたステンレスボウルはどう外すの？

　くっついたステンレスボウルを外すには、2つの方法があります。

　1つは、パッキンの役割をしている工作用紙が乾くのを待つ方法です。パッキンが役目を終え、ステンレスボウルが簡単に離れます。

　もう1つは、ステンレスボウルのふちの間にマイナスドライバーを挟んで、ステンレスボウルの中に空気を入れる方法です。ただし、この方法は強くやりすぎると、ステンレスボウルのふちが変形してしまう可能性があります。十分に注意してください。

馬16頭が引いてやっと離せた実験例も

　今回の実験のもととなっているのは、ドイツの物理学者で1650年頃に真空ポンプを発明し、マグデブルグの市長も務めたことのあるオットー・フォン・ゲーリケが手がけた「マグデブルクの半球」という実験です。

　この実験では、2つの半球状容器を組み合わせ、その中の空気を抜いて真空にし、両側から馬で引かせました。それぞれの半球に馬を8頭ずつつなぎ、計16頭の馬が引いて、やっと引き離せたとされています。

　今回は、台所にあるステンレスボウルを使って、「マグデブルグの半球」の原理を簡単に楽しめる実験をご紹介しました。注意事項をよく守りながら、ぜひ皆さまもご家庭で子どもと試してみていただけるとうれしいです！

■注意事項
・小学生など低年齢の子どもが実験するときは、必ず保護者の指導のもとで実施してください。
・はさみを使う際は、手を切らないように気を付けて作業してください。
・火を使う際は、他のものに燃え広がらないように、またやけどなどをしないように十分気を付けて取り扱ってください。実験後の火の後始末もしっかりと実施してください。
・重ねたステンレスボウルは火によって、とても熱くなることがあります。冷めるまではステンレスボウルの側面を触らないように気を付けてください。

■参考文献
・滝川洋二・石崎喜治編著『ガリレオ工房の身近な道具で大実験』（大月書店）