3歳児くんの保護者をしています盛田諒ですこんにちは。先日37歳になりまして、家族で温泉に行ってきました。特急踊り子にゆられるあいだ、子は車窓を眺めては、「あっ電車通った」「湘南新宿ラインじゃない?」「あっ貨物列車、青いのは桃太郎だね」などと鉄道知識を披露します。
子どもはなぜ車や電車が好きなのか。特に男子をもつ親御さんが一度は感じる疑問ではないかと思います。「何がそんな好きなのかお母さんは分からないなあ」と妻が冷静に言う一方、「いやいやでっかいモンがでっかい音させて動いてるんだから好きになるでしょ」と37歳児は雑なことを言います。なんならパトカーは光るしショベルカーはガッシャンガッシャン動くしね。まあ「なんでそれが好きなの」と聞かれても「そりゃ好きだからでしょ!」としか言えないんですが。
その名も「子どもはなぜ電車が好きなのか」という本によれば、子どもが電車を好きになるには発達に応じて段階があるそうです。母親との一体性が強い2歳ごろまでは鉄道や乗り物との一体感を楽しみ、言語の世界へ移行していく2歳から3歳ごろには名前や形などの秩序をおぼえ、所有・収集の楽しみを理解していくと。子はまさにこの時期ですね。ようするに、発達に必要な要素のひとつを電車が担ってるわけです。電車はこの世界を学ぶ手がかりになるのですね。
また、電車ごっこの世界では、子どもは電車になったり車掌になったり踏み切りになったりと自由自在。これが年齢が上がると「ぼくが仮面ライダーで、Aくんは悪い人ね」と遊びの役まわりが固定化されていくそうです。想像の世界に社会的なルールが加わるわけですね。「七歳までは夢の中」という有名なシュタイナー教育の本がありますが、夢がだんだん現実に近づいてくるんでしょうか。
たしかに子がプラレールで遊んでいるときも、「はるくん電車なの」と電車になったかと思えば、「カーンカーンここは通れません」と踏み切りになったり、想像の世界で変幻自在に遊びます。最近では「Aくん(保育園のお友だち)乗って?」と言い、私にAくんの役をさせることで空想の領域を広げています。子に見えている世界がめまぐるしく変わるのでついていくのに苦労するくらいですが、これも今だけかと思うとしみじみしますね。新生児期はモロー反射や吸啜反射みたいな原始反射を貴重がってましたが、今日も明日も貴重なもんです。子どもは日々発達して別の姿になっている。
一方、おっぱいの出ない男にとって電車や車は子どもとつながる武器になるという話も本にはありました。これはたいへん納得で、昔からお父さん(男親)は子どもの遊び相手になるのが大事と言いますが、逆に言えば子どもとのコミュニケーションの取り方に戸惑ってしまう私のような男が、遊びという子どもとの共通語を得ることで安心できるという話でもあると思います。
今までいろんな男親たちと会ってきた経験からすると、男親は女親より関係を築くのがへたくそです。男親が子連れで集まる児童館の工作イベントで、女性陣が「何歳ですか?」と周りと話を広げるかたわら、私を含む男性陣が黙々と「大剣」の精製に力を注いでいたのが印象的でした。大きな子どもかよって話ですが、子どもと遊ぶときにはその幼さこそが武器になり、子の世界を広げる手伝いができるわけです。子どもは遊ぶのが仕事といいますが、男親は遊ぶのが育児なのかもしれません。
そして電車や車は現実と直接つながっているものなので、親が子と一緒にこの世界について学べる楽しさもありますね。子どもはパンタグラフの形状を見分けるようになり、私はいわゆるシングルアーム式パンタグラフの意味を初めて知りました。「脳の90%が完成する6歳までに教育を始めましょう」などと幼児教育のパンフレットは急かしてきますが、親子で電車の図鑑を見たりおもちゃで遊ぶことも立派な教育なんじゃないかなあ、いい年の大人が電車や車に熱をあげるのも悪くないことなんじゃないかなあ、などと37歳児は考えております。あっサフィール踊り子だ!お母さん見てー!
書いた人──盛田 諒(Ryo Morita)
1983年生まれ。3歳児くんの保護者です。Facebookでおたより募集中。
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