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多様なコラボで知名度アップを図る! 「サガプライズ!」にみる地方活性化の一つの形

2020年02月16日 12時00分更新

文● MOVIEW 清水、編集● ASCII

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 アニメやゲームといったサブカルチャーと企業とのコラボレーションが、さまざまな分野で実施されている。そして、アニメツーリズムをはじめとして、地域や自治体がサブカルのパワーを活用して観光客を誘致したり、盛り上げを図る試みが行なわれているが、その話題が継続する例は必ずしも多くない。

 そのような中、佐賀県が実施している「サガプライズ!」は長年にわたって話題性の高いコラボを実施し、新しい施策がスタートする度にSNSなどでも話題となるプロジェクトだ。そこで今回は、サガプライズ!オフィスにお伺いし、プロジェクトリーダーの吉武幸司氏とプロデューサーの大塚峻氏に、エンタメを活用した地方活性化についてお話しを伺った。

佐賀県の知名度向上を目標としたプロジェクト「サガプライズ!」

佐賀県には何がある? そのおにぎりの海苔、佐賀県産かも?

 読者の方々は佐賀県についての知識は、どのくらいお持ちだろうか。首都圏にいると関西を除く西日本は意外に遠い存在で、九州ともなると県名は知っていても具体的な知識がないという人もいるのではないだろうか。しかし、実は佐賀県は食の宝庫だ。

 海産物では玄界灘と有明海の2つの海を持ち、玄界灘に面する呼子の透明なイカ刺しは全国的にも有名だ。有明海にはムツゴロウやワラスボといった、他の地域にはあまりない海産物があるほか、海苔の生産量は17年連続で日本一であり、コンビニのおにぎりの海苔として多く使われている。また、米や麦といった農業も盛んに行なわれており、畜産では佐賀牛®というブランド牛もいる。

透明なイカ刺しで有名な呼子のイカ

 歴史という点では吉野ヶ里遺跡が有名で、さらに、日本三大茶器と言われる唐津焼、400年以上続く有田焼や伊万里焼といった焼き物、唐津くんちといったお祭りなど、伝統的な文化も受け継がれている。また、アジア最大級のインターナショナルバルーンフェスタという熱気球のイベントも多くの人が集まるイベントだ。

佐賀県には名産品も多いが認知度が低いというのが課題

 立地的には隣に福岡県があり、唐津には福岡空港から地下鉄やバスで1本でアクセスでき、福岡市と佐賀市は電車で30~40分という通勤圏内。佐賀市から福岡へ通う人には補助もあるとのこと。もちろん福岡からは日帰り観光圏内であり、福岡から温泉のために佐賀へ遊びに来る人も多い。

 しかし、これだけ観光資源などに恵まれている佐賀県ではあるが、全国的、特に首都圏において知名度が足りないという課題があった。それをカバーするため、自治体の多くは東京でアンテナショップを運営して地元をアピールするといった施策が一般的だが、佐賀県では市町村も含めて公式のアンテナショップが存在しない。

 そうした中で、地元の海産物や農産物などを買う、観光客を誘致する、さらには県内へ移住するといった行動へ移す前の情報発信が不足しており、まずは佐賀県のことを知ってもらうというのが課題であった。それを解決する具体的な方法として情報発信プロジェクトの「サガプライズ!」の構想がスタートしている。

佐賀県の観光資源を活かす「サガプライズ!」のコラボ事例

 佐賀県と言えば、『ユーリ!!! on ICE』や『ゾンビランドサガ』といったアニメの舞台となった地域としてアニメファンには知られているが、さまざまなコラボレーションを実施してきた「サガプライズ!」はそうしたコンテンツとのコラボありきで発生したプロジェクトではなく、佐賀県内にある食や文化といった観光資源をアピールするためのプロジェクトだ。

 そのため、エンタメコンテンツとのコラボでも、観光資源との親和性や、どのようにアピールするかというシナリオ作りに注力している。ここではこれまで行なわれてきたコラボレーション事例を紹介しよう。

●Romancing佐賀

 初めは佐賀にゆかりのある企業とのコラボが多かった「サガプライズ!」のターニングポイントとなったコラボレーション。25周年を迎えたゲーム「ロマンシングサガ」とコラボし、六本木ヒルズに期間限定のカフェをオープン。イラストレーターに有田焼の絵を描いてもらい、すごく貴重なグッズを作ったところものすごい行列となり、メディアにも多数取り上げられた。

ゲームのイラストレーターに絵付けをしてもらった有田焼

●さが松り

 唐津市にある、日本三大松原の一つ「虹の松原」。松に関わる名産品も多数あり、松つながりで『おそ松さん』とのコラボを実施した。このコラボでは、唐津にいままで見たことがないような若い人たちの行列ができ、地元では何が起きているのか?という状態になったという。

松つながりで実施された、佐賀県×おそ松さん「さが松り」

コラボグッズとして作られた有田焼

●サーガ!!!on ICE

 『ユーリ!!! on ICE』の放送が始まってまもなく、その舞台が唐津ではないかということが話題になり、サガプライズ!側からアプローチしたコラボ。東京と佐賀でイベントを行ない、その後唐津市の観光課が引き継いで毎年のようにイベントが展開されている。サガプライズ!をきっかけにその後につながった、いい事例だ。

佐賀県 × ユーリ!!!on ICE「サーガ!!! on ICE」

公式聖地巡礼マップを発行

描き下ろしイラストによるオリジナルグッズ

●ニャース気球佐賀襲来!

 「ポケットモンスター」に登場するニャースの気球が佐賀インターナショナルバルーンフェスタに登場するということで行なわれたコラボ。県庁のホームページをロケット団がジャックしたり、県知事が記者会見をするなど、大胆なコラボが行なわれた。

アニメ『ポケットモンスター』1000回記念で製作されたニャース気球

佐賀県知事がロケット団員に!?

県知事の記者会見にニャースが登場したほか、県庁のホームページをロケット団がジャックした

●ヴィンランド・佐賀

 TVアニメ『ヴィンランド・サガ』の放送とほぼ同時期にスタートしたコラボイベント。佐賀県をユートピアであるヴィンランドに例え、生産量日本一である二条大麦の畑をキービジュアルに使うなど、ストーリー仕立てで佐賀県をPR。秋葉原で行なわれた声優登壇PRイベントでは、佐賀弁でセリフを話して盛り上がった。

放送開始とほぼ同時期にスタートした「ヴィンランド・佐賀」

秋葉原UDXではキャスト登壇のイベントを開催

秋葉原では資料展示のほか、謎を解いてスタンプを集めるイベントも開催された

 サガプライズ!ではこのほかにも数多くの取り組みがあり、これまで30近くが実施されている。どの取り組みもただ組み合わせるだけでなく、コンテンツホルダー側が何周年といった記念の年であったり、TV放送のタイミングなどに合わせてコラボレーションすることによって、両者にメリットがある関係性を築いているのが特徴だ。

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