「モンスターからの挑戦状」がテーマのCybozu Days 2019基調講演
編集者、お笑いタレント、飲食店経営者が語るモンスターの倒し方
2019年12月16日 09時00分更新
12月5日・6日、グランフロント大阪のコングレコンベンションセンターで「Cybozu Days 2019 Osaka」が開催された。6日に行なわれた基調講演では、編集者、お笑いタレント、飲食店経営者の3人の女性がサイボウズ 代表取締役社長 青野慶久氏と「モンスターの倒し方」について語った。
「会社が楽しくないのは当たり前だろう」と言われて、タイトルを変えた
今年のCybozu Daysのテーマは「モンスターからの挑戦状」というもの。法人とは、法の下に会社を人として扱おうというもので、実際には存在しないバーチャルのようなもの。それにもかかわらず、よく人は「会社の方針なら仕方がない」とか「会社に迷惑をかけちゃいけない」という言葉を口にする。しかし、実際そこにいるのは人間。人間には言葉が通じるので、話していけばいいと青野氏は冒頭で語った。
この基調講演では3人のゲストを招いて、このモンスター話を繰り広げた。これまでのゲストは起業家や顧客企業の人が多かったのだが、今年は毛色が大きく異なる。出版社の一般社員、お笑いジャーナリスト、飲食店経営者で、3人とも女性だ。
まずは、PHP研究所 PHP新書副編集長の大岩央氏が登壇した。青野氏の書籍「会社というモンスターが、僕たちを不幸にしているのかもしれない。」を出版した編集者だ。大岩氏はPHP新書シリーズの副編集長で、これまで100冊以上もの編集を手がけてきた。現在は、働き方や経済、経営に関する本と海外の著者にインタビューしてまとめる本などを担当している。
大岩氏は青野氏に書籍の出版を打診したが、その前に「チームのことだけ、考えた。」という本を出していた。執筆に1年かかってへろへろになっていたので、まずは断ったそう。しかし、組織論は書いたが、会社論をまだ書いてないということで、引き受けたとのこと。
最初、青野氏が「会社ってモンスターだよね」と言っている時、大岩氏は何を言っているのかよくわからなかったという。
「私は会社に勤めていても、会社ってなんだろうと考えることってありませんでした。しかし、お話を伺っていくうちに、『いい会社の定義を変えたい』とおっしゃっていて、売り上げが大きいからいい会社なのか、と定義を突き崩してくというのが面白いなと思いました」(大岩氏)
実は、元のタイトルは「会社が楽しくないのはなぜだろう」だった。しかし、大岩氏が社内のいろいろな人に話を聞いたところ、「会社が楽しくないのは当たり前だろう」と言われて、タイトルを変えたという。みんな会社が楽しくないものと思い込んでいたのだ。大岩氏は仕事を楽しんでいたので、この答えに驚いたという。これも、青野氏の言うモンスターの一つだろう。
「会社が楽しくないと思っている人にとってはがまんが当たり前ですからね。大変なことを繰り返していけば、高い到達点にたどり着けるはずだ、と思い込んでいるんですね」(青野氏)
大岩氏も妊娠・出産したときに、おじさんから嫌みを言われたことがあったそう。しかし、復帰した時に「実は自分も共働きで子供が小さい時は大変だったんだよ」と励ましてくれる人もいた。個人の話をしてはいけないとか、公私混同してはいけないと思い込んでると何も伝わらないので、オープンにしていくことが大事だ、と大岩氏は語る。
サイボウズでは、全社員に質問責任を義務化している。聞かれたらきちんと説明しなければならないのが説明責任だが、質問する側にも責任があるというのだ。疑問に思っているなら聞く必要がある。青野氏は「疑問に思ってるのだったら質問すれば理解が進むのに、それをせずに後で陰口をたたくのは卑怯だ」と言う。
オープンにコミュニケーションする文化の浸透には時間がかかる。たとえば、質問しろと言っても、誰かが質問したときに突き放したら終わりだ。サイボウズの場合、入社3年目の営業社員が全社のボーナス制度に不満がある、と提案を出してきたという。通常であれば、「新人が何を言っているんだ」となるところ青野氏は共感し、実際に全社の制度が変わった。そうすると、この組織では言いたいことを言っていいんだ、という空気が流れて、質問する人が増えてきたそうだ。
提案には反対意見も出ることがあるが、その際、決定していくプロセスをオープンにするということが大事だという。提案を密室会議で決めてしまうと、都合が悪い人が出てくるかもしれない。実際に質問責任を果たす場を作り、議論が高まってきたら、最後はリーダーが決めることにすれば、全員の納得が得られるという。
「一般の社員として、下から目線でモンスターと戦うにはどうしたらいいかと考えたときに、3つのことが必要だと思います。ひとつめは、会社という場なので、利益を上げたり貢献したりできる力を付けなければいけないということ。ふたつめは言葉にすることです。言葉にするのは大変ですが、人事や上司にこれからのこういう働き方がいいと思いますと言うときに、サイボウズさんの例を出すと納得してもらえることが多いです。そして、言葉にしていくと、共感してくれる人が集ってきます」と大岩氏は締めた。