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災害やAI/IoTエリアが新設された「HOSPEX Japan」レポート

従業員の睡眠から朝型・夜型を判別、シフト勤務に生かす

2019年12月12日 09時00分更新

文● 戸津弘貴 編集●ASCII

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 2019年11月20日~22日、医療福祉分野の総合展示会「HOSPEX Japan」が開催された。44回目の開催となる今回は、病院関連設備や給食といった従来からある展示に加えて、「災害医療・災害対策ゾーン」、「医療 × AI/IoTゾーン」などの新しいエリアが設けられていた。

 本稿では、災害医療・災害対策ゾーン」、「医療 × AI/IoTゾーン」を中心に、興味深い展示のあったブースを紹介する。

勤務体系や所属部署による睡眠の違いを分析

 「健康診断・健康管理EXPO」エリアで出展していたのが「O:(オー)」。従業員の睡眠データから、メンタル不調による休退職やパフォーマンスの低下などを未然に防ぐ企業向けのサービスだ。睡眠の質と、メンタル不調、仕事のパフォーマンスには強い相関が見られるという。

「O:(オー)」の展示ブース

 スマートフォンにインストールしたアプリを就寝時に布団の上に置くだけで、睡眠時間や質を計測するという仕組み。個々のユーザーには、AIが計測データに基づく就床時間の提案や睡眠時間などのコーチングをおこなう。企業側は、集計したデータから勤務体系や部署など特定の集団で問題が生じているのか、個人によるのかを分析することで対策がしやすくなる。

 また、分析ではその人が朝方なのか夜型なのかを判別することもできる。毎朝6時にきちんと起床できる人であっても実は夜型ということもあり、その人は知らず知らずにストレスを貯めているということもあるのだそう。シフト勤務の場合にはその人を遅番にするなど、負担を減らすことで、従業員と企業双方にメリットのある対応が実現できるとしている。

その人が朝方なのか夜型なのかを判別できるアプリ

普段は座布団、災害時には保護帽に

 タイカ ウエルネス事業本部が販売する避難用簡易保護帽「DERUCAP(でるキャップ)」は、普段は座布団として使用し、災害時に避難する際保護帽として使用できるものだ。

普段は座布団になる簡易保護帽「DERUCAP(でるキャップ)」

 防災用ヘルメットにあるような飛来落下認証などはないが、避難時に簡単に頭部を保護したいというニーズに対応する。軽量でコンパクトに収納できるので、不特定多数が出入りする医療施設での備蓄用に提案している。

 小学校の児童向けに、ライフジャケットとセットになったラインナップも用意されていた。

保護帽とライフジャケットがセットになった児童向けラインナップも用意

DMAT用のベストとスマホホルダー

 ナカネは、医療従事者向けのベストや現場撮影用スマホホルダーを展示していた。ベストは「DMAT(災害時対応医療チーム)」の活動に必要な装備を収納できるほか、米軍規格の「モールシステム」に対応し、ポーチ類の着脱が可能。災害現場に応じたアレンジができるのが特徴だ。

 スマートフォンホルダーもモールシステム対応のものからハーネス式、ベストに挟み込む方式まで様々なモデルを用意。現場での行動記録や、指令センターにて現場状況の把握を容易にするなどの際、両手を塞がずに行えることがメリットだ。

DMAT向けベスト

DMAT向けスマホホルダー

塩分制限患者にも対応する医療現場用だし製造機

 給食関連設備で面白かったのが、Sマシンの業務用だし製造機「ダッシー」と、つゆ、だし抽出マシン「つゆ・ダシます」だ。

 ダッシーは、コーヒーサーバー(ドリッパー)の要領でだしを抽出する。味噌汁の具と味噌を入れたお椀にダッシーで温めただし汁を注げば味噌汁が完成するというもの。

業務用だし製造機「ダッシ―」

 「つゆ・ダシます」は、設定した塩分濃度、だしの分量を抽出、製造できるのが特徴。塩分を控える必要がある患者向けの「減塩つゆ」と一般患者用の「つゆ」を作り分けることができるほか、味わいを一定に保つことができるので厨房の省力化に貢献できる。

だし抽出マシン「つゆ・ダシます」

ストレッチャーにもなる災害用簡易ベッド

 フジタは、避難所でプライバシーと健康を維持するための災害用簡易ベッドを紹介していた。組み立て式で、最大2段で使用できる。保温や衛生面で確保されたベッド下にはコンテナなどのケースが収納できるようになっている。

 撥水素材のテントが付属し、プライバシーや就寝時の照明低減などに役立つ。避難生活の長期化だけでなく、帰宅困難者や支援スタッフ用など災害時に必要な備えのための提案となる。

フジタの災害用簡易ベッド

 もう一つの展示がクイック簡易ベッドだ。折りたたみ式で持ち運び用のキャリングケースが付属。ベッドにもキャスターが付いており、そのままストレッチャー代わりにもなる。オプションでテントも用意しており、長期間の避難生活時にはプライバシーの確保もできる様になっている。

簡易ストレッチャーとしても使えるクイック簡易ベッド

アスリート向け、ドーピング検索アプリ

 オンキヨースポーツの展示ブースでは、ドーピング検索アプリ「DINX」が紹介されていた。

 ドーピングをするつもりがなくとも風邪薬やサプリメントに含まれる成分でドーピング検査に引っかかることもある。そういったリスクを避けるために、試合前には風邪を引いても薬を飲まないというアスリートも少ないという。

 「DINX」では、市販薬、処方薬に含まれるドーピング対象成分のデータを持っており、商品バーコードや薬名から検索して対象成分が含まれているかどうかを知ることができる。また、アプリの利用履歴から「非故意証明書」の発行を申し込むことが可能だという。2020年9月7日までは、すべての機能を無料で利用できる。

簡易ストレッチャーとしても使えるクイック簡易ベッド

ドーピング検索アプリ「DINX」

睡眠の質を高めるスマートデバイス

 フィリップスは、発表されたばかりの睡眠サポートデバイス「SmartSleep ディープスリープ ヘッドバンド」を紹介していた。

 このデバイスは睡眠の状態を測定し、深い睡眠に入ると耳元にオーディオトーンを流して眠りの質を高めることができるというもの。良質な睡眠をとることで、日中の眠気軽減につながり、仕事のパフォーマンスも高まることが期待されている。

睡眠サポートデバイス「SmartSleep ディープスリープ ヘッドバンド」

 今回のHOSPEXを振り返ると、実用的なソリューションや問題解決の提案などが目立っていたのが印象的だった。一方で、医療業界の新規参入のハードルの高さやクローズドな体質を目にすることもあった。安全性や信頼性が求められる業界ではあるが、海外ベンダーに先を行かれ後塵を拝することないよう、バランスの良さが必要だと感じた。

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