Azure Arc、Azure Synapse Analytics、Power Automateの概要と強み
すべてはカスタマードリブン Ignite 2019で発表されたAzureの新サービス
2019年12月06日 10時00分更新
日本マイクロソフトは2019年12月5日、米国本社が2019年11月に開催した年次カンファレンス「Ignite 2019」で発表した数多くのソリューションから、Microsoft Azure関連に絞った記者説明会を都内で開催した。米国本社CVPとして、クラウドビジネス担当を務める沼本健氏による説明とIgnite 2019の講演を元にAzure Arc、Azure Synapse Analytics、Power Automateについて解説する。
Azureを次のステップに引き上げるAzure Arc
Azure Arcはオンプレミスや他のパブリッククラウドで稼働するVM(仮想マシン)やKubernetes、コンテナなどをAzureポータルからコントロールする技術。同様にSQL DatabseもAzureデータセンターにとどめず、オンプレミスや他のパブリッククラウドにデプロイ可能だ。米国本社CVPとして、クラウドビジネス担当を務める沼本健氏は、Azure Arcについて「製品というよりも要素技術。Microsoft AzureはMicrosoft Azure Stackとのハイブリッドを差別化要因としてきたが、Azure ArcはMicrosoft Azureを次のステップに押し上げる存在」だと語る。
Azure Arcを用いることでユーザーはオンプレミス/クラウド/エッジと多様化しつつあるプラットフォームを区別することなく、オンプレミスで稼働するVMの稼働ログを収集し、セキュリティセンターで管理するといったカスタマードリブンなシナリオ構築が可能になる。以前Officeを担当していた沼本氏は、「OneNoteをリリースするとWordの利用者が減るという声が社内で挙がったが、結局減ることはなかった。テクノロジーの成長は総和が増える」と、ITエンジニアが煩雑な運用から解放され、空いた時間をアプリケーション構築など別の作業に費やせる点を強調した。
また、「Azure Synapse Analytics(旧Azure SQL Data Warehouse)」は、データ分析時に用いるプロセスを自動化したサービスである。通常はDWH(データウェアハウス)などに格納したデータソースをクレンジングしてから分析システムに掛け、その結果はPowerBIを通じて可視化していた。前述のとおりMicrosoft Azureは分析サービスとしてAzure SQL Data Warehouseを提供していたが、さらにPower BIやAzure Machine Learningとの連携を強化したのが、Azure Synapse Analyticsである。
説明会では触れなかったが脳内神経細胞のシナプスを模して命名されたのだろう。一括したセキュリティ管理や機能拡張もさることながら、目を見張るのはパフォーマンス。マイクロソフトはクエリエンジンを最適化することで、Amazon RedshiftやGoogle BigQueryよりも12倍(TPC-DS)から14倍(TPC-H)高速という結果を[公表](https://azure.microsoft.com/ja-jp/services/synapse-analytics/compare/)している。
「Power Automate(旧Microsoft Flow)」は筆者の連載で取り上げ済みなので詳細は割愛するが、マイクロソフトはローコード/ノンコーディングで現場の課題を解決するPower Platformに注力している。
Power BIやPower Apps、Power Automateを補完する形で登場したのが「Power Virtual Agents」。同じくGUIベースで「現場のパワーユーザーやシチズンデベロッパーがローコードでAIチャットボットを作成できる」(沼本氏)。マイクロソフトはPower Platformについても、「強みはMicrosoft Dynamics 365やOffice 365、エンタープライズSaaSサービスとの親和性が高い。もう1つはMicrosoft Azureとの親和性。プロフェッショナルデベロッパー向けに用意したAPIや機能をPower Automateから使える」(沼本氏)と利点を強調した。