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未来の病院のあるべき姿を発信 医療設備機器の展示会「HOSPEX Japan 2019」

災害・BCP対策、医療×AI/IoTで病院はどう変わる?

2019年11月15日 11時00分更新

文● 松下典子 編集●北島幹雄/ASCII STARTUP 撮影●曽根田元

提供: 日本能率協会

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 日本能率協会は、医療福祉設備機器の専門展示会「HOSPEX Japan 2019」を11月20日~22日に東京ビッグサイトで開催する。HOSPEX Japanは、日本医療福祉設備学会と併設開催され、病院の設備や機器、建設素材などを一度に見ることができる展示会としては日本最大級のイベントだ。今年から新たに「災害医療・災害対策ゾーン」、「医療×AI/IoTゾーン」を設置。災害発生時にも医療を継続するための設備や、AI/IoT技術を活用した製品・サービスの展示やセミナーが行なわれる予定だ。これからの病院や福祉施設はどのような設備やサービスが求められるのか。主催する一般社団法人日本能率協会の武石 真氏に今回の見どころと、今後の病院設備への導入が期待される技術やサービスについて、お話を伺った。

一般社団法人日本能率協会 産業振興センター 第2事業系 武石 真氏

病院の設備・機器に特化した日本最大級の展示会

――HOSPEX Japanとはどのようなイベントですか?

 「HOSPEX Japanは、日本医療福祉設備学会との併設で毎年開催している展示会で、今年で44回目になります。日本医療福祉設備学会は、病院の経営層や設備担当者の方、病院施設の建築・設計に関わる大手事業者が参加されており、演題も病院設備や設計、BCP対策が中心です。そのためHOSPEXは、ほかの医療系展示会に比べて、素材や設備に関する展示が多いのが特徴です。

 具体的には、床材やドアなどの建築素材、手術室の設備や手術準備室、ナースステーションの空間づくりなどが展示されます。また近年では、いわゆる医療設備に限らず、病院給食や介護の設備・機器、ICTなどの展示が増えてきています」

HOSPEX Japan

――建築の素材や設備など、ほかの医療系の展示会とは、また違った展示内容なのですね。来場者はやはり医療関係の方が中心なのでしょうか。

 「来場者数は毎年1万7千名前後で、日本医療福祉設備学会の方が1000名近くいらっしゃるほか、病院や福祉施設の経営層、事務、設備、建築担当の方、医療機器メーカーが来場者の7割を占めています。そのほか、地域医療や包括ケアが進んできているなか、自治体の担当者などが来場されているのが最近の傾向です」

――来場者は、どういった目的で来場されるのでしょう?

 「今後数年間で900施設の病院、1600の介護施設が新築・改築・移転される予定で、病院の新築・改築・移転を控えている方が多く来場されます。いわば住宅展示場の病院版ですね。主な目的は、病院の新築やリフォーム時に導入する製品の商談ですが、一度に複数メーカーの製品を比較できる機会はなかなかありませんから、各社のブースを回って見比べられるのがいちばんのメリットです。また、直近に建て替えや導入の予定がなくても、この先、病院の設備がどう変わっていくのか、トレンドをキャッチするためにご来場される方もいらっしゃいます」

――情報収集の目的で来場する方も多いわけですね。HOSPEXならではの来場者と出展者のコミュニケーションの特徴はありますか?

 「病院の設備機器は、安全面・機能面を重視し選定に慎重になることや、金額が大きいこともあり、最初の商談から納品までのスパンが長く、1~2年以上かかることもあります。限られた予算のなかで、長い目で見て本当にいいものを導入したいと考えていらっしゃるので、1度の出展で短期的に効果測定すると、すぐには成果が感じにくいかもしれません。継続して出展することで病院関係者との関係を築いていくという使い方をされています。もちろん、入れ替えスパンが短いものであれば、すぐに納品につながる可能性もあります」

 病院側としては、大規模な設備やシステムは頻繁に入れ替えできないが、最新の技術を取り入れて医療やサービスの質を向上させたいと考えており、HOSPEXの来場者は、既存のシステムと連携でき、低コストに導入できる技術や製品を探しに来ている。今はまだ病院や介護施設へのネットワークのないスタートアップが、自社の製品をPRするには絶好の場だ。

 たとえば、ナースコールシステム「Yuiコール」を開発する平和テクノシステムは、当初の主な取引先は小規模な介護施設が中心だったのが、HOSPEXに出展したことで、病院やクリニックからの認知度が上がり、現在は100以上の病院に導入されているという。(参考:HOSPEXホームページの出展者インタビュー 平和テクノシステム社

注目の集中展示「災害医療・災害対策ゾーン」と「医療×AI/IoTゾーン」

――今回は「災害医療・災害対策ゾーン」、「医療×AI/IoTゾーン」という2つの集中展示が設けられています。病院設備のニーズがこれまでとは変わってきているのでしょうか。

 「BCP対策の必要性は以前より言われてきましたが、昨今はとくに台風や地震などの自然災害が多く、いよいよ対策が急務となってきました。病院は一般企業とは異なり、災害発生時にも医療を継続する必要があり、災害に対する備えは欠かせません。過去にもBCP対策の展示はありましたが、今年からは『災害医療・災害対策ゾーン』を常設の展示として力を入れていくことになりました。

 災害医療・災害対策といっても幅広く、病院の耐震・免震化から、ベッドがずれないようにする設備、水道・電気といったインフラが使えなくなった際の医療用ガス確保、非常用電源、地下水ろ過装置、それ以外にも患者受け入れ体制の整備や備蓄、非常用通信などさまざまな対策が必要です。『災害医療・災害対策ゾーン』ではこれらの設備やソリューションを取り上げています。このゾーン内の展示だけでなく、ほかのエリアの展示にも災害に対応した製品が数多くあります。今回のHOSPEXでは、全出展者から災害対策の情報を集めており、来場者が災害対策のブースを回れるように準備しています。

 AI/IoTは、さまざまな業界で導入が進んでいますが、来場者からのご意見で最も多いのが、『AIやIoTを医療現場に導入することで何が可能になるのかを具体的に知りたい』という意見です。なので、具体的な導入イメージがあるというよりも、どのような可能性があるのかを探しに来る方が多いですね。

 医療現場へのITシステムの導入はなかなか進んでおらず、電子カルテを導入している病院は全体の4~5割と言われています。参入障壁はありますが、現場で働いている方は、AI/IoTの導入によって業務効率化や省力化につながるのでは、という期待を持っていらっしゃいます。

 『医療×AI/IoTゾーン』では、病院内で安全にAI/IoTを使うための無線通信インフラの設備をはじめ、業務効率化の具体的な製品やソリューションなどを提案していきたいと考えています。目玉としては、スマート治療室『SCOT』に参画している企業の出展を予定しています。

 SCOTは、次世代過ぎて自分には関係がないと思っている方は多いと思います。しかし、導入することによってより高度な医療の提供、オペ時間の短縮など得られるメリットは非常に大きいです。SCOTと現場の距離感を埋められるよう、実際にSCOTを導入している大学の方に登壇いただき、実用化に向けたパネルディスカッションを実施します。

 SCOTの3モデルを比較して議論をするのは日本初です。SCOTに限らず、手術支援ロボットや5G技術の導入が進むとインフラ設備、手術室の設計自体も大きく変わってくるので、複数年にわたってHOSPEXで追っていけたら、と考えています」

デジタルホスピタルアートなど、元気になる病室デザインを再現

――企画展示「元気になる病室デザインコーナー」も面白そうですね。

 「HOSPEXならではの展示として、未来のこれからあるべき病室を再現した展示を行ないます。病室は、患者さんの居住区であり、病院スタッフにとっては毎日過ごす職場です。患者さんや働く人が笑顔で元気になる、というコンセプトのもと、従来の白い無機質な病室を“before”、未来の病室デザインを“after”として比較展示します。

 たとえば、デジタルホスピタルアートといって、患者さんの足の踏み込みの力に連動して花火が上がる仕掛けをつくると、従来のリハビリよりも楽しく達成感が味わえます。ほかにもベッドやカーテンをおしゃれで機能的なデザインにすることで、治療に前向きになれるような空間づくりを提案していきます。

 来年以降は、病室だけでなく、ナースステーションなども企画展示できたら、と考えています」

元気になる病室デザインコーナーのイメージ画像

――HOSPEXは日本医療福祉設備学会との併設展示ですが、連動企画はありますか。

 「日本医療福祉設備学会に、HOSPEXの出展者が製品をアピールできる場として『HOSPEX Under 30』という演題枠を設けました。学会は学術研究の発表や問題提起の場ですが、HOSPEXは、それに対する具体的なソリューションがあります。両者をつなげることで、面白い変化が起きるのではないかというのが狙いです。

 ほかにも、学会の方からのHOSPEXの案内や、HOSPEXの会場内で学会の方が発表する『サテライトセッション』を設けるなど、学会の参加者にも展示を見てもらい、学会に興味のある来場者は学会のセミナーに参加できる企画を用意しています」

HOSPEX 2020は、病院や地域医療向けのネットワークインフラ設備、医療ロボットやAI/IoT+5Gにも期待

――来年の出展を検討している企業へ向けて、HOSPEX Japan 2020の構想を教えてください。

 「まだ構想段階ですが、これから病院がどう変わっていくか、という企画展示はテーマを変えて実施する予定です。

 災害医療・災害対策ゾーンと医療×AI/IoTゾーンは引き続き力を入れていきます。とくにAI/IoTに関しては、遠隔監視のソリューションの展示を増やしていきたい。病室の温湿度や医療ガスの残圧測定、転倒を防ぐための動体検知などを導入すれば、対応の遅れを防ぎ、職員の負担も軽減できます。また、地域医療や包括ケアを実現するための地域と病院をつなぐシステムやインフラの整備も重要です。まずは病院内のネットワークインフラを整備しなといけないので、そういった展示も増やしたいです。次世代技術としては、手術支援ロボットやAI/IoT+5Gのインフラを生かした製品やサービスにも期待しています。

 病院のセキュリティとして、防犯対策も考えていく必要があります。病院は誰でも自由に入れるものという認識が強く、一般企業に比べて入退室管理や認証システムの導入が遅れています。医療業界の意識を変えていくには、ICカードや顔認証などのシステムを見せるだけでも意味があると思います。HOSPEXを医療業界の当たり前を変える発信の場にしていきたいですね」

(提供:日本能率協会)

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