本当の消費電力は…!?
テレビやコンピューターや周辺機器など、電化製品を選ぶときに消費電力をチェックする方も多いのではないでしょうか。
ところが、カタログや製品情報に記載されている消費電力は平均値だったり最大値だったりといろいろです。
たとえば、AppleはiMac(Retina 5K, 27インチ 2019年モデル)の電力消費を「待機中 71W」「CPU最大稼働時 262W」と公表しています。う~ん、幅があるというか、ざっくりしすぎというか…。原稿を打ったり、ムービーを編集したりなど、普段の作業ではどれくらい電力が使われているのかを疑問に思うのは筆者だけではないはずです。
「定格消費電力」とは?
さらに話を少し複雑にするのは「定格消費電力」という概念。たとえば、60W形の電球の場合、定格消費電力の90%、つまり54Wで動作するように設計されているそう。これはコンセントからの100Vが、変動許容範囲の107Vになった場合でも実際の消費電力が60Wを超えないようにしているため。安全基準とはいえ、ちょっとアバウトですよね…。
ワットメーターで実際にいろいろ測ってみた
それなら!と、ワットメーターを購入し、実際にいろいろな電化製品の消費電力を測ってみることにしました。
定格電力との違いがわかる撮影用ライト
まずは、いつもビデオ撮影でお世話になっている撮影用ライト。このライトは32Wのスパイラル蛍光電球が5個使われています。余談ですが、32Wという微妙な消費電力なのは、普通の家庭用電球と違い、太陽光に近いスペクトラムを含んでいる特殊電球だから。本来なら、定格値では160W(32W×5球)になるはずですが、実際にはやや低めの約120W。ただし、電球型蛍光灯は蛍光管が冷えている点灯時には暗く、蛍光管の温度が上がるにつれて明るくなる性質があります。電球の光が明るくなると消費電力も大きくなりますので、長時間使用時や室温の高い日などはもう少し消費電力が増える気がしています。いずれにしても、実際の電力が定格電力より低い実例でしょう。
PDコントロールされているAppleの電源アダプタ
新商品がでるたびに出力電力が話題になるiPhoneやiPadの電源アダプタ。その理由は、出力する電力が大きいほど充電時間が短くなるからです。今回実験に使用したのは、iPad Pro付属の18W USB-C電源アダプタ(A1720)。PD(パワーデリバリー)は通常5Vで給電されるところ、機器に余裕があれば、9Vもしくは14.5Vで給電する規格です。Appleの18W USB-C電源アダプタは、PD規格にもとづき最大9V/2Aで給電していることがわかります。おそらく、+2Wが余分に消費されるのは変圧効率によるロスでしょう。
iMac27+ Boot Camp+Windows10+Dead by Daylight=?
冒頭で紹介したiMacの消費電力ですが、実際の数値も測ってみました。まず、電源オフ時の待機電力は4W。Appleが公表しているiMacの「待機中 71W」は、液晶画面がオンでCPUが稼働していないのとき(たとえば、ログイン時など)。実際に計測してみると、ログイン時には65Wを表示していました。
iMacに負荷をかけてみようと、Boot CampからWindows10を起動したところ、ログイン時(PIN入力時)には60W。そこで、Windows用ゲーム「Dead by Daylight」を起動しプレイをしたところ140~200Wほどに上昇。意外なことに最大値の200Wは、プレイ中ではなく、ゲーム起動中のオープニングムービーを再生したとき。プレイ中は140~160Wに落ち着いていました。
おそらく、最大消費電力の262Wに到達には、4K動画編集などで負荷をかける必要があるかもしれませんが、今回は日常での使用時の消費電力の測定なので、それはまた別の機会に測定してみたいと思っています。
ちなみに、我が家の最大消費電力の家電はNespresso(コーヒーメーカー)と電気ケトルで、ともに1.1KWほど。ただし、稼働時は数十秒~1分ほどなのでそれほど電気代の心配はしていません(笑)。
蛇足ですが、このワットメーター、このコラムでも以前紹介したテスター(ギークの必需品?!あると便利なテスター)と違い、正確な測定機器ではありません。上でも説明したように、コンセントからの入力電圧によっても消費電力は変動するうえ、簡易測定器なので、あくまで目安としてお読みいただければ幸いです。
前田知洋(まえだ ともひろ)
東京電機大学卒。卒業論文は人工知能(エキスパートシステム)。少人数の観客に対して至近距離で演じる“クロースアップ・マジシャン”の一人者。プライムタイムの特別番組をはじめ、100以上のテレビ番組やTVCMに出演。LVMH(モエ ヘネシー・ルイヴィトン)グループ企業から、ブランド・アンバサダーに任命されたほか、歴代の総理大臣をはじめ、各国大使、財界人にマジックを披露。海外での出演も多く、英国チャールズ皇太子もメンバーである The Magic Circle Londonのゴールドスターメンバー。
著書に『知的な距離感』(かんき出版)、『人を動かす秘密のことば』(日本実業出版社)、『芸術を創る脳』(共著、東京大学出版会)、『新入社員に贈る一冊』(共著、日本経団連出版)ほかがある。
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