新開発のCMOSセンサーと映像エンジンDIGIC 8の組み合わせにより、キヤノンのAPS-CサイズCMOSセンサー搭載デジタルカメラにおいて、最高レベルの画質を実現した「EOS 90D」。キヤノン曰く「APS-C一眼レフの完成形」というそのカメラの実力はいかなるものか? SUPER GTの第7戦スポーツランドSUGOに持ち込んでみました!
なぜ光学ファインダーの
APS-C機が必要なのか?
APS-C一眼レフの完成形と謳うEOS 90D。そのメッセージから、2000年に登場した同社初の民生用デジタルカメラEOS D30から続く、19年の歴史の集大成にして「次のAPS-Cカメラはミラーレス」という意志を感じます。
だったらEOS 7D Mark IIIという形で、EOS 7D Mark IIのAFユニットとシャッターユニットを搭載した高画質機を希望したいところなのですが、そうなると本体価格20万円を超え「それならフルサイズ機を買う」となってしまうのでしょう。また、APS-Cカメラは2桁型番で始まったから、終わりも2桁型番で、なのかもしれません。
さて、ミラーレスを見据えた今、光学ファインダー(一眼レフ)でなければ……というのが動体撮影です。「いまだにそんなこと言っているの?」と言われるかもしれませんが、私は「わずかなズレ」であったり「撮った感覚に乏しい」という情緒面で一眼レフ機を望みたいところです。その中でフルサイズではなくAPS-Cを選ぶ理由は、ボディーの軽さのほか、フルサイズと同じレンズを使った際、焦点距離にして1.5~1.6倍という望遠効果が得られること、そして安価という3点になります。
この中で望遠効果は、遠くの物を連射して撮る野鳥や鉄道、そしてモータースポーツファンにはありがたいもの。実際、取材でサーキットを訪れると、フラグシップである「EOS 1D」系に混ざって、秒間10コマ撮影可能なAPS-C機「EOS 7D Mark II」の姿を多く目にします。
モータースポーツ取材をする筆者もEOS 7D Mark IIを2台所有しており、どちらも30万シャッターを軽く超える撮影をしてきました。EOS 7D Mark IIは動体撮影には好適なカメラであることから気に入っており「そろそろオーバーホールを出すか、買い替えるか」を悩んでいました。
というのも、オーバーホール料金とEOS7D Mark IIの実勢価格がほぼ同じであるほか、そもそもEOS 7D Mark IIの発売が2014年と約5年前。「そろそろ新機種が出ても……」と首を長くしていても出る気配はなく、どうしたらいいのだろうと悩んでおりました。同じような思いのオーナーは多いのではないでしょうか。
この悩みに拍車をかけたのが、ミドルレンジの2桁モデル「EOS 80D」。EOS 7D Mark IIと比べ、受像素子の解像度で上回っているEOS 80Dは、まさに下剋上で買い替えるなら80Dではないかとも。しかもEOS 80Dは2016年発売で、こちらも新型が出てきても不思議ではない状況でした。そのタイミングで登場したEOS 90D。EOS 80Dオーナーはもちろんのこと、7D Mark IIユーザーが気にならない訳がありません。
EOS90DはEOS80Dの高画質版
EOS 90Dの最大のウリは受像素子です。キヤノンAPS-C史上最高の高解像度となる約3250万画素 APS-Cサイズ CMOSセンサーを搭載し、感度は最高ISO25600。同社新世代の画像エンジンDIGIC 8と、圧倒的な高画質化を達成しただけで、正直「買い替え決定」の気分になります。
正直なところ、EOS 80Dも7D Mark IIも「十分高画素」なのですが、さらなる高画素によるメリットは「もっと自由にトリミングできる」ことではないでしょうか。
動くモノを撮る人にとって、AF性能は気になるところです。測距センサーはオールクロス45点AFセンサーでEOS 80Dと同等。EOS 7D Mark IIのオールクロス65点AFセンサーと比べると、ファインダーを覗いた際、エリアを中央に寄せた印象を受けます。F8光束対応測距はEOS 80Dと同様の最大27点で、中央1点のみのEOS 7D Mark IIとは大きく差をつけています。
AF選択モードは、EOS 80Dでも採用されていた1点AF(任意選択)、ゾーンAF(ゾーン任意選択)、ラージゾーンAF(ゾーン任意選択)、45点自動選択AFに加え、スポット1点AFも搭載。筆者はスポット1点AFでエンブレムもしくはヘルメット合わせでシャッターを切るので、このモードの追加はうれしい限りです。
搭載するAIサーボは、EOS80Dと同様のAIサーボAF II。EOS 7D Mark IIやEOS 5D Mark IVで搭載するAIサーボAF IIIとは異なります。いっぽう2桁シリーズとしては初めてファインダー撮影時において顔に近い部分のAFポイントに合わせる「EOS iTR AF(顔優先)」を搭載したほか、ライブビュー撮影時には「瞳AF」が利用可能となりました。運動会で走る子供やポートレートをカメラ任せで撮れるというわけです。
連射性能はファインダー撮影時、秒10コマとEOS 7D Mark IIと同等。さらにライブビュー撮影時は秒11コマでEOS 7D Mark IIを上回り、たとえば三脚を立てて迫ってくる被写体を撮る時などには効果を発揮しそうです。
連続撮影可能枚数はJPEGラージで約58枚。ここはEOS 7D Mark IIの約130枚、EOS 80Dの約70枚には劣るのですが、高画素データゆえしょう。そもそも約5秒間シャッターを押しっぱなしのシチュエーションはそうそうありません。実際、撮影中に「バッファー待ちでシャッターが切れない」ということはありませんでした。
記録媒体はSDカードのみ。EOS 7D Mark IIのようなCFカードとのデュアルスロットではないことから信頼性が……という気持ちもありますが、CFカードと比べてSDカードは価格も安いですから、小容量のSDカードを頻繁に替えれば対応できるでしょう。