学習時間の可視化こそ習慣形成の第一歩
━━社会人が一番勉強しないというのは、なんだか耳が痛いですね。
岡 象徴的だと思います。大学受験もそうですが、たとえばダイエットを目的としたスポーツジムであれば、3カ月頑張れば目標とした減量を達成するということもあり得ます。しかし、語学はそうではない。弊社の「ENGLISH COMPANY」で英語のトレーニングを受ければ、わずか3カ月で英語力は飛躍的に向上します。でも、だからといってネイティブ相手に商談をまとめられるほどペラペラになるかといえば、そうではない。そこを目指すのであれば「ENGLISH COMPANY」を卒業した後も継続的に学習する必要があるでしょう。日本で一番勉強しない社会人に継続的に勉強してもらうにはどうすればよいか? 我々の取り組みとはそういうことなのです。
━━何でも出来てしまう人にではなく、おそらく多数派を占めるであろう出来ない人を前提にしているわけですね。
岡 「ENGLISH COMPANY」のトレーニング期間は、3カ月です。英語力を劇的に向上させること以外にも、その3カ月には2つの目的があります。ひとつは「学習習慣の作り方」をしっかり身に付けてもらうこと。もうひとつは「効率的な学習の仕方」を学んでいただくこと。極端なことをいえば、3カ月で英語力を劇的に飛躍させることは簡単です。受講生の横に鬼軍曹でも付けて(笑)、スパルタ式に詰め込めば誰でも成績は上がるでしょう。でも、3カ月が過ぎた瞬間、勉強を辞めてしまうはず。それでは意味がありません。
━━学習習慣や効率的な学習とは、まさに学ぶ時間に限りのある社会人が求めることですね。
岡 学生は勉強が“仕事”だから、友達同士で一日何時間勉強したかを競いあうことが、刺激になったりします。「オレは10時間だ」「オレは13時間だ」と。しかし、社会人にそんな時間的余裕はありません。効率的な学習方法を目指す「ENGLISH COMPANY」の場合は、学習の目標時間が一日1時間か1時間半。それでも忙しい社会人にはキツいかもしれませんね。なので、1回の学習時間を15分として4回や6回に分けて、課題をこなしてもらうようにしています。社会人が何よりも優先すべきは途中で辞めないこと、挫折せずに学習していくことが何よりも大事なんです。
━━学習時間を小分けにするということは、スモールステップを設けるということになりますね。
岡 その人にとって、あまりにハードルが高いと、やはり挫折率が上がります。なので、上手い具合に習慣形成ができる負荷の程度を見極めながら、学習内容を設定しています。とにかく毎日コツコツとが基本です。ただし、この方法は何かの拍子で少し間が空いたりすると、総崩れになってしまう危険性をはらんでいます。そうならないために有効なのが廣瀬さんが提供している「Studyplus」であり「Studyplus for School」なんですね。
廣瀬 「Studyplus」に備わる、結果ではなくプロセスを可視化するという部分ですね。
岡 そうですね。誰もが成績ばかりを気にしますが、成績は結果です。結果は、完全にコントロールすることができません。対して、一定の時間学習するということは、行動です。行動は完全にコントロールすることができます。学習時間=行動を可視化することが習慣化の基本なんです。
廣瀬 KGI(重要目標達成指標)が成績だとしたら、KPI(重要業績評価指標)は時間ということになりますね。
岡 実際、口頭試問やペーパーテストを実施すれば、英語力がどれほど向上したかを測定するのは、それほど難しいことではありません。ところが、習慣がどれほど形成されているかを測ることは難しかった。「Studyplus」はそれができる。本当に画期的ですよ。
廣瀬 ありがとうございます。ところで「人間の弱さと向き合う」という先ほどの岡さんの話はとても興味深いですね。我々はIT企業なので、テクノロジーを使って問題を解決するわけですが、「Studyplus」にSNS機能を載せたことでも分かるように、コミュニティの力で継続を促したいとも考えています。先生と生徒、生徒と生徒、両者のコミュニケーションがより円滑になるよう、「いかにデザインすべきか?」このことを常に考えています。その意味では、岡さんとはアプローチこそ異なりますが、方向性は近いと思いました。