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高音質で再確認、2019年のリスナーに刺さる音楽:

今だからこそ、オフコースをハイレゾCDで聴くのが魅力的だ

2019年09月25日 17時00分更新

文● モーダル小嶋/ASCII

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星野源と細野晴臣も大好きな(?)
マーティン・デニーもハイレゾCDで聴くとおもしろかった

マーティン・デニーのハイレゾCDは、むしろ「モンド」や「イージー・リスニング」を再発見した1990年代以降のリスナーに注目されるかも?

 せっかくなので、「イージー・リスニング編」からもハイレゾCDを聴いてみましょう。懐かしのイージー・リスニング系のアーティストが並び、マントヴァーニ・オーケストラ、パコ・デ・ルシアなど、年配の方には「ああ、いいねえ……」というラインナップでしょうか。

 ここでは、マーティン・デニーのベスト盤をチョイス。今なお現役であり、国内外を問わず多くのアーティストから尊敬を集める細野晴臣が、マーティン・デニーの「Firecracker」をカバーして世界で400万枚を売る……として立ち上げたのが、YMO(Yellow Magic Orchestra)であることはあまりにも有名です。

 その細野晴臣への敬愛を隠さないのが、今をときめく星野源です。星野源のルーツがマーティン・デニーにある! と言ったら強引に思えるかもしれませんが、星野源は実際にラジオで「Firecracker」の聴き比べなどを企画したこともあるので、あながち、こじつけでもありません。

 1960年代のアメリカでは、このような音楽を、最新のステレオセットで聴く、というのが快適でモダンなライフ・スタイルの一つでした。“ステレオ”で聴くというのがポイントで、当時のイージー・リスニングにはやたらと音が左右に振られる録音のものがあったりします。「ステレオで聴いているぞ〜!」という、リスナーの所有欲を満たす仕掛けといえましょう。

Image from Amazon.co.jp
マーティン・デニー〜ベスト・セレクション(UHQ-CD/MQA)

 マーティン・デニーの作風は、いわゆるエキゾチック・サウンド(エキゾチカ)。ジャズ、ラテン、ハワイアン、などがごっちゃ混ぜになった、「エキゾチックなんだけど、どこの音楽でもない」という、世界各国のさまざまな音楽の要素を取り入れた独特の作風です。

 自分自身、マーティン・デニーをあらためて、ハイレゾでじっくり聴く、という経験はなかったです。高音質で体験すると、この音楽、よくできているんだな、と思いました。そんな感想は子供みたいだと思うかもしれませんが、ストリングスが豪奢に響いたかと思うと、左からピアノが、右から打楽器が聴こえてきて……といった具合で、次から次へと楽器が出てくる。このぜいたくさに、ただただ陶然としてしまう。まさに“ステレオ”で聴く娯楽なのですね。

 「当時のアメリカってすごいんだなあ、細野さんがあこがれたのもわかるわ〜」などと感心してしまいました。ここにあるのはアフリカ音楽でもブラジル音楽でもなく、「エキゾチックってこんな感じだよね」と空想上で作られた世界観なのですが、それを可能にしたのは当時のミュージシャンの高い技術力と、アメリカの文化資本のレベル(有り体にいえば、予算感)なのだと思います。ハイレゾCDの分離のよさで、1960年代のぜいたくがよみがえる、などと書くと大げさすぎるでしょうか。

ハイレゾCDで、気軽に高音質を楽しむ選択肢が増えたように思います!

 というわけで、ハイレゾCDは、懐メロを楽しむだけのものではありません。若い人には今だからこそ新鮮に響く音をすぐれた音質で楽しめますし、逆に、昔を懐かしもうと購入した人も「こんな音色が!」と驚かされるかもしれない。過去の名盤を高音質で体験する機会を与えてくれるハイレゾCDは、多くのリスナーにとってうれしい選択肢になるのではないでしょうか?


モーダル小嶋

1986年生まれ。担当分野は「なるべく広く」のオールドルーキー。編集部では若手ともベテランともいえない微妙な位置。

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