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Logitech本社訪問記 第1回

新MXシリーズにこめた「スイス伝統のクラフツマンシップ」 - Logitech本社訪問記

2019年09月18日 14時00分更新

文● 山本敦 編集●ASCII

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試作品をつくるために必要となる主要なパーツは常に一定数取り置かれている。

ハイレベルなものづくりに欠かせない厳しい評価試験設備

 Logitechのスイス本社には、ワイヤレスのマウスやキーボードに搭載するアンテナの通信性能を測るための完全電波暗室を2部屋構えている。ひとつの部屋には2D(平面)、もうひとつの部屋は3D(360度全天球)の方向から無線電波の状態を細かくスライスにして、測定値をグラフ化しながら性能評価を行える設備がある。ここではWi-Fiにセルラー、GPSからBluetoothなど種類が異なるあらゆる無線電波の強度とノイズに対する耐性を実験評価する。Expert Electrical Engineerのパトリック・スリジエ氏は、「新製品を開発する際には、いつも電気エンジニアのチームとプロダクトデザインのチームが膝を詰めて議論を重ねながら、見た目に美しく、さらに電波性能など機能性の高いデザインを一切妥協することなくハイレベルな製品を追求している」と語る。近年は3Dプリンタを導入したことで開発スピードも飛躍的に向上したそうだ。

無線対応デバイスの伝送特性を調べるための電波暗室。こちらは2Dグレードの評価に特化した部屋で、台の上に乗せたキーボードなどの試作機を360度回転させて電波の質を確認する。

電波強度を3次元の方向から試験できる電波暗室も新設。パトリック・スリジエ氏がそれぞれの測定方法を紹介してくれた。

 電気・機構設計を固めた最終製品に近いプロトタイプが、スペックに合わせて正しく動作するか、あるいはその耐久性の評価試験についてもここスイス本社に構えるラボで行われている。Senior PQA Engineerのシーチン・リー氏は「Logitechでは開発する製品に合わせてテスト機器もカスタム製作している。これにより各アイテムの評価項目に合わせて効率よく、精度の高い品質試験のデータが取れることが強み」と語っている。

Logitechのプロトタイプを使った耐久性試験の様子を紹介してくれたシーチン・リー氏。ここにある試験機器はすべてLogitechが各製品に合わせて自作したものばかりだという。

MX MASTER 3の各ボタンのクリック強度を調べるための機械。MX KEYSにもひたすらキーボードをたたきながら耐久性を調べる評価機がある。

それぞれのデータを解析しながら改良を重ねていく。

 Logitechが中国に構える製造拠点では、マウスやキーボードなどPC入力機器と市販されている様々なメーカーのPC製品による互換性を確認するためのラウンドロビン試験を実施しているほか、製造ラインでは最終製品の抜き打ち試験を丁寧に行なっている。台湾の拠点では湿度や温度の厳しい環境に製品を意図的に晒して耐久性をチェックする試験も実施されている。さらにアメリカでデバッグテストを行なったソフトウェアを、最終製品に近い状態のハードウェアと組み合わせた動作確認テストがスイスで行われる。

 ユーザーが心地よく使える製品を届けるために、Logitechのクラフツマンたちが誇りをかけてものづくりに邁進する姿を筆者は目の当たりにすることができた。プレミアムグレードの「MXシリーズ」に限らず、同社の開発するすべての製品にエンジニアたちの情熱が込められている。そして言うまでもなく、彼らのこだわりの結晶である新しいワイヤレスマウスの「MX MASTER 3」、ワイヤレスキーボードの「MX KEYS」もその例外ではなく、とても完成度の高い製品に仕上がっている。従来からのMXシリーズのファンを満足させるだけでなく、新しいファンの裾野を広げそうな銘機が誕生した。

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